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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2001.12.25◎財界人 2002年2月号
今、日本経済は沈没の危機!
一刻も早く緊急経済対策の実施を

21世紀の幕開けとなった昨年、企業の相次ぐ倒産や完全失業率の増加など、わが国はこれまでにない不況の波に襲われた。2002年、未だ景気回復の兆しは見えないが、政治・経済の現状と課題を明らかにすることで活路を見いだすべく、政界の行動派リーダーとして知られる亀井静香代議士に話をうかがった。

収録日:2001年11月20日


?国民は、政治における自らの選択に責任を持つべき?


田崎 昨年は中小企業をはじめとした企業の倒産が相次ぎ、失業者も過去最大になるなど、これまでにない景気の悪化が問題になりました。また、アメリカで起こった同時多発テロの影響も受けるなど、さらに暗い話ばかりが山積されています。しかし小泉内閣発足以来、景気回復はもちろんのこと、その傾向すら見えてこない。すでに多くの国民は、日夜激痛に苦しんでします。これ以上の痛みに耐えよと言われても、それは「酷」というもの!
 そこで今日は新しい年の幕開けにふさわしく、景気回復のヒントとなるような先生のお話をうかがえればと思います。


亀井 まずはじめに、景気のつるべ落としが続く現在の状況についてですが、私は経済人を含め国民の大部分の方は小泉総理に責任追及できないと思うんです。総理は決して公約違反のことをやっているわけではない。「この2,3年はマイナス成長します。痛みを分かち合っていただきます」と言って、そのとおりの経過をたどっているわけですから。その内閣を90パーセント以上の方々が拍手を持って迎えたのだから、今になって「痛い痛い」と言ってみたところで、それは自分たちが選んだ結果でもあるわけです。


田崎 今の総理や内閣に対する人気や感心な高まりは、いわゆるミーハー的な要素が多く、本当の小泉政治への支持率では無いという気が私はしているんですが。


亀井 しかし日本の政治というのは国民世論と離れてなせることはないわけです。国民自らが選んだ路線の中で、幸せになっていくか、不幸になっていくか、それは国民一人ひとりの選択の結果なのです。


田崎 確かに、一部は政治をファッションのようにとられている風潮もなきにしもあらずという気がしますね。


亀井 それに、誰かが何とかしてくれるという甘えがある、それはいかがなものでしょうか。国民も政治に対して自らの選択の責任を感じるべきだと思います。
 でも、だからといって国民が苦しんでもいいと言ってるわけではありません。もし国民が誤った選択をしたときに、きちんと向かうべき方向性を指し示す--それが政治家の役割なわけですから。


田崎 今の小泉内閣は「構造改革」一本槍で、景気回復の具体的な手立てが見えません。長期的視点では、たしかにそれも必要なのかもしれませんが、このままではどこまでも景気が落ち込むか分からない。中小企業・零細企業の倒産が相次ぎ、そのための一家離散や経営者の自殺など、悲惨な状況も増えています。


亀井 わが国の年間自殺者数は、従来1万人くらいらしいんですが、昨年は3万人を超えたそうです。その背景には、不況の影響がかなりあると思いますね。


田崎 大企業の場合はまだ余力があるかもしれませんが、中小企業はもう限界にきているという声もよく耳にします。今後まだまだ倒産企業が出てくると思いますし、3月期の決算に向け苦しい思いをしている会社も多いのではないでしょうか。


亀井 今の政策が基本的に間違えているのは、構造改革と言うけれど中身が何かということを明示していない点。でも、おぼろげながらわかっていることはあるんです。それは、今の経済の中で弱い部分、たとえば中小企業や零細企業を切り捨てて、強い部分だけを残し日本経済を再生していこうということ。それが正しいかどうかということに、まず問題があります。


田崎 強者、大企業だけを残すということですが、景気全体が悪くなって日本経済が、縮小再生産の過程の中に入ってしまうと、強者も何もなくなってしまうのではないでしょうか。


亀井 そうなんです。日本経済をいかに活性化して力強い自力回転の軌道に乗せていくかということを抜きにして、弱者を切って強者がさらに強くなるということはあり得ない話です。
 ところが、今の政府は「経済構造改革をやります」と言って、何もやっていない。昨年の同時多発テロによってアメリカ経済が打撃を受け、その影響が日本にも重くのしかかっています。そんな状況でも、景気回復の手を打たず、自然に任せっぱなし。これでは日本経済がつるべ落としになるのも当然です。
 でも、私は政府がなぜ何もしないのか、最近よく理解できるようになってきたんですよ。


田崎 どうしてでしょうか。


亀井 なまじっか景気をよくすれば、今死にかけている企業が生き返ってしまいますよね。中小企業・零細企業が息を吹き返してしまう、これでは日本経済が強くなることにはならないんですね。ですから、この際振り落としてしまえ、と。


田崎 なるほど。


亀井 そうでなければ、今の政策は信じられません。景気が悪くなってもなんの手も打たないわけですから。つまり、ふるい落として強者だけ残すという確信犯に近いかたちでわざと景気を回復させないんだと私は思っています。


田崎 それはひどい話です。


亀井 雇用対策云々というのは、棺桶を作る話、葬儀を出す話。そのことについては私どもでも昨年の秋の臨時国会でもやりました。でも、失業者を出さない、中小企業・零細企業を含めて倒産させないという根本的な景気対策を何ひとつやっていないわけですから、そう理解されてもしかないと思いますね。


?国民は人為的、政策不況に苦しめられている!?


田崎 今、東京をはじめとして、建物やゴルフ場などの土地を外資が買いあさっています。100億円の資産を5億、10億で手に入れている。外資が日本経済をろう断しているという状況です。


亀井 日本の企業は「不動産に手を出すべからず」なんですね。どんなに安い出物があっても、手を出さない。だから、外資の独壇場になってしまうわけなんです。そういう状況を作るのが果たしていいことなのか。そうしなければ日本経済は再生しないのか。
 よくイギリスを例に出して、サッチャーのビックバンニよってイギリス経済が蘇ったと言いますが、あの場合、結果的に民族資本を失いました。ユダヤ資本、アメリカ資本、ドイツ資本--それらすべてがなくなってしまった。日本も同じようにしなければ生きていかれないのか。違うんですよ。


田崎 日本は不景気で金融資産も減りつつありますが、まだまだ底力がある。


亀井 そう、1200兆円くらいはあるでしょう。外貨準備高などにしても、減ってはいるけれどたくさん残っている。だから今、何も不景気路線、縮小再生の経済政策をとる必要はないんです。自前の溢れるような金があるんだから、IMFなどから借りる必要もない。アメリカ経済が駄目になったら、世界第二位の経済大国の日本が変わって機関車の役割をはたさにゃいかん。果たせる力は持っているんですから。
 戦後最大と言われたあの不況の中で、森内閣は一昨年1%成長を遂げました。昨年は1.9%にもっていくはずだったのが、途中でおかしなことになってしまった。そのままいけば、3、4%の成長路線に乗せられたわけですよ。そのために緊急経済対策も発表しました。


田崎 もし、あのまま成長路線に乗っていれば、日本経済は今と全く変わった状況になっていたわけですね。


亀井 でも、国民はその路線を否定し、小泉支持という選択をされた。私は総裁選をおりるにあたって、小泉さんと「緊急経済対策を速やかに実施する」ことを1番目とした、9項目からなる政策協定を行いました。それが、約束を守ってくれないまま今に至っている。


田崎 ということは、この不景気はどうしても避けることのできないものではない、ということなのでしょうか。


亀井 そう、完全な政策ミスです。人為的、政策的不況といってもいい。味わわなくてもいい苦しみを国民は味わっているんです。だから、そこからどう転換していくか。今、政策の大転換を図らないかぎり、日本経済は大変な方向に行ってしまう。そういう危機感があります。


?「結論先にありき」ではなく、まず問題点の検討を?


田崎 日本道路公団や住宅金融公庫など、特殊法人の民営化問題が今持ち上がっていますが、これについてはどうお考えでしょうか。


亀井 それらを改革していくというのは当たり前の話です。私も政調会長のとき、行政改革基本法を国会で通しましたし。
 しかし、問題なのは、今の政策が「結果論にありき」な点。ただ民間化すればいいってもんじゃない。道路公団にしたって、国民の税金をつぎ込んでいるわけです。その国民的財産ともいえるわが国の動脈を、どこかの経済人にくれてやる、株式会社にして一部の株主の金儲けの材料にしてやる--そんな馬鹿な話はありません。道路公団なら道路公団の問題がどこかにあり、どうすればよいのか。どう整備すれば、きっちりとした役割を果たせるのか。それを政府与党が野党とともに徹底的に検討した上で、「ここが悪いからここを改めよう」。これが改革です。


田崎 おっしゃるとおりです。


亀井 住宅金融公庫にしても同じです。今は低金利だけれど、いつまでも低金利とは限らない。どうすれば中・長期にわたって安定した低金利の金をサラリーマンに供給できるのか。今の住宅金融公庫は、雨の日に傘も貸さず、天気のいい日に貸すようなもの。こんな金融機関にサラリーマン層に住宅資金を供給させるような任務はできません。それを、ただ「民営化すればいい」という一言で結論づけて処理するのでは、行革の名に値しないです。


田崎 小泉さんが一生懸命やっていらっしゃることはよくわかるんですが、あの方は経済政策に弱い。それからブレーンに実体経済を知っている人がいない。学者先生はいらっしゃいますが、あの方々は実体経済をご存じないから、もう本当にトンチンカンな、場合によっては噴飯ものとも言えるようなことをおっしゃっています。それを総理がまともに受けて実際に政策案に生かそうとしている。そこに大きな問題があると思います。


亀井 そうですよ。


田崎 それから、先ほど弱者を切り捨てて強者のみ生かすということが出ましたが、日本の企業の90数パーセントは中小企業です。中小企業がつぶれるということは、日本経済が沈没してしまうということ。救済策として棺桶ばかり作ってもらっても困るわけで、一人でも棺桶に入る人が少なくなるようにするというのが政治だと思うんです。


亀井 その通りです。それから手法の面で問題なのは、政党政治、議会制民主主義、議院内閣制のもとにあって、党の意見を聞かず勝手に総理自ら結論を出して「この通りにやれ」と言うのでは、民主主義じゃありません。法律にしても、与党の協力がなければ議会は通らない。小泉総理はアメリカの大統領制と間違えておられるようですが、そういうわけには行きませんよ。それなのに、マスコミはそれを拍手喝采している。


田崎 すべてのマスコミがそうだとも思えませんが。


亀井 草柳大蔵さんから連絡をもらって、「今年の流行語に『抵抗勢力』を選んだ。この言葉の代表である亀井さんには、ぜひ授賞式に出席していただきたい」と言われましてね(笑)。冗談じゃない。「提言」をすれば「抵抗」だと、「議論」をすれば「抵抗」だと。こんなのは議会制、民主政治じゃありませんよ。そういう意味で、今の政治情勢をもう少しノーマルにしないと、何もできないと思いますね。


田崎 政治の最大の課題は、国民を守ること、国民の生命・財産の安全を確保することではないでしょうか。ですから、今年はもっともっと先生に激しく動いていただきたいですね。これは財界人のみならず、国民の皆さんが渇望しておられるところだと思います。


亀井 私は国民が常に健全で正しい判断をしていれば、政治家なんてものはあまり必要でないと思うんですよ。ただ、国民が迷った場合、間違った方向に進んでしまった場合、そのときこそ政治家がきちんと働かなければならない。
 ですから、私としては小泉さんに緊急経済対策をすぐにでも実施してもらえるよう、強く迫りたいと思います。ご本人が「信なくんば立たず(無心不立)」とおっしゃっているわけですから、私との約束も守っていただきたい。それを条件に私は総裁選を降りて、小泉さんの支持に回ったわけですから。そのように今年も頑張っていきたいと思います。


田崎 先生に対する国民の期待は非常に高まっています。どうぞますますお力を発揮して、新しい年、少しでも景気の回復を早めていただけるようお願いしたいと思います。本日はお忙しいところどうもありがとうございました。

(平成13年11月20日)

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