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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2002.2.1◎オピニオン 12版
私の視点
◆小泉改革 総理、あなたは間違っている


 我が国は今、1400兆円の金融資産と4千億ドルの外貨を保有し世界有数の国力を持ちながら、経済はデフレスパイラルに落ち込んでいる。それにもかかわらず、国民は「痛みを分かち合え」と言われ、どんな明日のためかも分からないのに拍手喝采を続けている。
 現在の政策には、世界同時不況の中で日本が米国とともに世界経済に責任を果たしていくという視点が全く欠落している。また、財政支出の量的削減という5年前に明確に失敗した手法に固執し、財政の健全化は分母と分子の相対的関係であることも無視している。分子である赤字が不景気によって増え続ける一方で、分母の国民所得が急激に減少している。この状況で財政支出を削減することは、まさに財政再建に逆行しているのである。
 当面は財政赤字が若干増えたとしても、遅すぎた感はあるが、昨年4月に決定した緊急経済対策を実行する必要がある。具体的には、羽田空港の再拡張工事や下水道、高規格道路といった社会資本の整備、つまり都市・地方を再生させるためのプロジェクトに今すぐ着手しなければならない。経済が活性化しなければニュービジネスは生まれてこない。そのためには、官が前に出て民需を引っ張り出し、経済を躍動させるしかない。また「構造改革」と称して、弱い木を間伐して強い木だけで元気な森を、と言っている。しかし、森全体を枯らしてしまう枯れ葉作戦では、外資以外の強い木は残り得ない。
 民間では従業員や下請けの切り捨てが、リストラともてはやされ安易に実行されている。日本の場合、企業はまず従業員、取引先、下請けなどに利益を配分して企業体としての健全性とエネルギーを維持しながら、株主への責任を果たしてきた。米国流は株主への責任第一で、従業員たちは二の次である。米国流への極端な転換が、日本経済に活力をもたらすとは私にはどうしても思えない。
 十数年前に我々は、これまで培ってきた文化・伝統、生活様式の下で米国を凌ぐ経済活動を展開した。その歴史的事実をどう説明するのか。世界の経済システムが180度変わったわけではない。グローバリゼーションが必要だと言うけれど、同一化は有り得ない。国際金融、企業活動のすべてが、国家の利益を前提にした協調で成り立っていることは、米国の経済外交を見れば明白であろう。
 官民ともに迷路に入り込んでいるのは、我々が伝統的価値観を喪失したためである。競争するだけではなく、助け合い、ともに幸せになろうとする伝統的価値観をなぜ捨てなければならないのか。世界的規模での市場原理至上主義の下で、地縁血縁社会とローカル文化が排除され、ひたすら効率と利潤だけを追求する潮流が21世紀を支配した場合、世界はどうなるのだろう。独善的な大国や富裕層は、とめどもなく続く自然環境破壊で生存基盤を喪失するとともに、テロや犯罪、病理など様々な逆襲にさらされることになろう。
 小泉総理よ、はっきり言おう。あなたがやろうとしていることは間違っている。「抵抗勢力」と言われようとも私は構わない。むしろ本望である。中小・零細企業の経営者を中心に、毎日100人近い人たちが自ら命を絶っている現実を直視しなさい。社会的弱者を切り捨て、日本をむちゃくちゃにしようとしている勢力に抵抗することこそが私の役目である。たとえあなたが解散をちらつかせようとも私は怯まない。不安にたじろぐ人々を救うことが政治家の使命なのだ。

※無断転載を禁ず


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