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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2003.2.19◎ダカーポ
緊急インタビュー
こんな政治が続いていいのか。
ポスト小泉は?


漂流ニッポンは何処へ? 世論の支持を背景にした小泉首相から「抵抗勢力」と呼ばれ続けた亀井氏が語る。


---昨年の12月9日、首相官邸に乗り込まれたそうですね。


亀井 われわれのアドバイスが一顧だにされないものだから、こちらから申し入れをした。要求のひとつは、開会中の臨時国会で補正予算を成立させるべきだと。今の経済状況にたいして効果的ではないが、それでもやらないよりやった方がまし。
時間が足りなければ、国会を延長すればいいと。結果は、NO。もうひとつは、ここまで政策の間違いで中小・零細企業を苦しみに陥れたのだから、責任を取るべきと。


---要は、お辞めなさいと。


亀井 そうあからさまには言わない。ご自分で考えて下さいと言っただけ。それを、首相は記者団に退陣要求をされたと語ったようだね。しかし、まあ、宇宙人と話しているようなものだったな。


---といいますと?


亀井 だって、現在の惨憺たる状況をいくら説明したところで、新しく丸ビルが建ち、にぎわっているではないか。
 ディズニーランドに人は集まり、ブランド物は飛ぶように売れているじゃないかと。そんなのは一部の現象で あって、今の特に地方では未来が全く描けない状況を把握してないんだから。そうした状況にしてしまったことに、 シマッタという意識がない。うまくいっていると思っている。
 ただし、総理は実態を分かっていないというのはウソ。各省庁から生の情報が上がってきているわけだから、今の日本の状況は総理が一番知っているはず。問題は、その判断。われわれは、このままでは日本が溶けてしまうと。ところがご本人は、改革は進んでいると。弱い者がどんどん淘汰され、強い者だけが生き残っていく。これが、改革だと。


---公然と小泉内閣打倒に動かれるわけですね。


亀井 打倒とは言ってない。ゲーム感覚なんです、政治手法が。国民から選ばれた国会議員を相手にせず、それで自分の政策が実行できますか。国会で通らないでしょう。支持率はまだ50%前後を保っているようだが、次の総裁選では前回みたいに田中真紀子と組んで予備選を制するようなことはできませんよ。


---自民党内では、すでに支持基盤がないと。


亀井 平成研、宏池会、どこも支持しませんよ。森派だって、腹の中は反小泉。山崎派にしても、本音は反対。
 山崎派からは大臣がひとりも登用されず、不満タラタラだよ。民間人を大臣にして、国会議員を相手にしない。 そうした政治手法も問題なんだ。


---民間人を大臣に登用するのは、やはり反対?


亀井 登用してもいいが、今、国策の根幹にかかわる経済、外交、教育、みんな民間人。これは、おかしいよ。
 基本は、国民から選ばれた政治家を大臣に据えるべきでしょう。政治家を信用しない小泉さんのやり方は、 ある意味、議会制民主主義を否定している。


解散の時期は?


---前回の総裁選は立候補され、政策協定を結んで、小泉支持に回った。次の総裁選は?


亀井 今の小泉政策を180度転換する、しっかりした考えの持ち主が立ち、それで他の党員もいいというのであれば、 何も私が立つ必要はない。支持もする。


---誰も立たなければ……。


亀井 私が出るほかないだろう。言っておくが、シャンシャンと小泉さんが再選されることはありません。
 そのことは小泉さんも分かっているから、解散を切り札にしてくるかもしれない。しかしね、総裁選に勝てそうも ないからといって、議員の生首を切り、政治空白をつくる。これは、許されることではない。


---国民からの支持率の高さを武器に、解散して総選挙で小泉シンパの議員を増やそうと。


亀井 少なくとも自民党からは、そんな議員、ひとりも出てこないよ。地方で今、小泉政策支持を打ち出せば落選だよ。中小・零細企業のオジサンたちが自民党の支持基盤。この人たちが今、地獄の苦しみを味わっているんだから。


---もし、解散があるとすれば、いつ?


亀井 できない。総理の職権(※1)だからできなくはないが、やってもおしまい。首班指名で小泉さんが選ばれることはない。


借金恐るるに足らず


---総裁選に出られた場合、どのような政策を?


亀井 これは、前回の総裁選に出た時と、いっさい変わってない。今の日本は1400兆円の金融資産を持っている。
 その額は、世界の人たちの預金の6割に相当。加えて、4000億ドルを超える外貨準備高(※2)を保有している。こんな 金銭的に豊かな国は、世界中のどこを探してもありませんよ。そんな国が、なぜマイナス成長路線をとるのか。 思い切って活用し、経済を活性化した方がいいに決まっている。


---その活用先は?


亀井 当面は社会資本の整備に充てる。ムダなものは駄目だよ。私は、かつて223の公共事業、額にして2兆8000億の予算を削った男だから、ムダの公共投資はしない。そうではなく、整備すべきもの、例えばハブ空港(※3)になりうる飛行場。今の日本の飛行場は、欧米に比べ小さ過ぎる。港湾もそう。あまりに小さい。大量輸送は、船だよ。加えて、基幹となる高速道路の建設、下水道の整備。日本の下水道の完備は、まだ20%。これ、低開発国並みですよ。
 こうした整備をすることが、当面やるべき緊急経済対策なんです。


---つまりは土木、建設?


亀井 それだけではない。都市近郊や地方にセカンドハウスの建設を進める。もう、遠距離通勤のサラリーマンはくたくたでしょう。平日は都市で暮らし、週末もしくは大型連休はセカンドハウスでリフレッシュする。欧米では、すでにやっていること。もちろんセカンドハウスを持つことで優遇税制も実施する。新たにテレビや車も必要になってくるから、どんどん内需も拡大していくわけです。こうした大改革をするだけの金も力もある。
 にもかかわらず、小泉さんはあえて逆のことをしている。だから、国民がためた金がアメリカへどんどん流れる。アメリカ国債なんかを買ってね。


---一方で、700兆を超える借金がありますよね。


亀井 そんなの、日本の国力からすれば、わずかなもの。いいですか、経済を発展させると税収が上がり、国民所得も上がるんです。今、国民所得500兆に対し、借金が700兆(※4)。この借金を5年、10年で減らしてしまわないと日本はつぶれるようなことを、学者やエコノミストは言うが、10年たって返せなければ、借り換えればいい。そうやりつつ、経済を発展させていく。これが、財政再建。ところが、小泉政策信奉者は、借金のデカさに腰を抜かしているだけ。
 この額が小さくなるまで景気対策は施す必要ないと。その結果、どうなりましたか。


---結局、公約の国債発行額30兆円枠を突破。


亀井 そんなの、最初から守れるわけがない。結論、小泉さんの大きな間違いはふたつある。ひとつは、不景気にして財政再建は行うとしたこと。もうひとつは、不景気にしながら不良債権の処理をしようとしたこと。どちらも、できるわけがない。


将来の総裁候補は


---ただ、自民党の若手議員の間では構造改革を支持する人も。


亀井 どうしたわけか、若手がマスコミにもてはやされるからなあ。大体がアメリカかぶれとは言わないが、軽薄なエコノミストの受け売り。外資の連中とも親交があるものだから、あたかも自分が世界に通じる政治家のように思い込んでいる。


---経済政策だけでなく、自民党の体質そのものを批判する若手議員がいます。


亀井 もちろん、私にしたところで、今の自民党でいいとは思ってない。だが、小泉自民党では、もっと駄目だ。
 本来、あるべき自民党の姿に戻ればいい。言ってみれば、自民党は日本の社会そのものなんだ。だから、政権党として長い歴史を持つ。それは、若手もいずれ分かってくる。


---2世3世議員が多いのも、自民党の特色。


亀井 だから、悪いとは思わない。いいのもいる。やはり門前の小僧で、私なんかが10年もしないと身につかない政治のイロハを見よう見まねで覚えてます。これは、プラス面。競馬だって、サラブレッドはよく走るだろう。
 ただ彼らが気をつけなくてはならないのは、自分と同じ環境で育った人は、ほとんどいないということ。世の中 には、何ら落度はないのに生活に四苦八苦している人がいて、その人たちのことをあえて考える努力をしなくては。
 それも、意識して。


---党内の人材は豊富だと。


亀井 ああ、星の降るごとくいる。


---例えば?


亀井 サラブレッドを挙げるなら、安倍晋三(※5)かな。政治センス、決断力、国家観、いずれもいいものを持っている。
 今すぐは無理だけど、将来の総裁候補だな。


被害者調書を取れ


---ところで、小泉訪朝は、どう評価されているのですか。


亀井 事前に警察庁や外務省が、拉致問題を含め北朝鮮と十分連絡を取り、詰めたうえで訪朝されたものと思っていた。ところが、全く詰めてなかった。先行した外務官僚が、帰国した5人の拉致被害者は2?3週間で帰すと言ったのでしょう。だから、いまだに残りの家族が帰国できずにいる。いわば、パンドラの箱(※6)を精査せずに開けてしまったわけだ。が、問題は、その後にもある。


---といいますと?


亀井 あなた方マスコミを含め、5人の方の一挙手一投足に注視し過ぎ。もちろん、あの方々を幸せにしなければならないが、まだ100人を超える拉致被害者がいるかもしれない。先日も警察庁長官と安倍君に言ったんだが、被害者調書すら取ってない。そんなバカなことがあるかと。拉致は犯罪で、しかも目の前に被害者がいて何で調書を取らない。
 それを手掛かりに、あとの100人の消息を探り、拉致事件全体の捜査をするのが筋でしょう。そして、拉致問題だけでなく、核ミサイル、安全保障などトータルで交渉を進めるべきだろう。何兆円かかってもいいじゃないか。


---経済援助のことですか。


亀井 そう。日本に核が飛んでくる危険性がなくなるのなら、1兆2兆なら安いもんだよ。今の自衛隊では、ノドンが飛んできても一発も撃ち落せない。こちらの防備を整えることだけが、安全保障ではない。
 向こうの脅威がなくなれば、こちらが防御を固めることもなくなる。今でも、ODAの予算から北朝鮮に1兆円を供出している。危険な国家から決別するというのであれば、その代償として、さらに経済援助すればいい。


---今は防備どころか、イージス艦が派遣されますが……。


亀井 戦闘に行っているわけではないから。軍事行動と一体となるような使い方は許されない。憲法違反になる。
 ただ、ここ数年、自衛隊を安易に派遣することが国際貢献だという愚かな風潮が強すぎることは確か。これには、懸念している。日本は憲法がある以上、決して素晴らしい憲法とは思わないが、それを順守すべき(※7)。法治国家なんだから。


---今国会では重要法案のひとつ、有事立法が上程されます。


亀井 防衛庁にも進言しているんだが、自衛隊の有事行動が合法化されるだけの法案では駄目だと。有事において、国民の権利で何がギリギリ守られるのか。あるいは、国民が協力する際、どういう形で協力させるのか。それに、消防団、警察との連帯の問題。これらをセットにしないと。


---そのあたりが、法整備されていれば……。


亀井 今の通常国会で通るでしょう。


「石原新党」の可能性


---巷間ささやかれる、石原都知事の新党結成ですが。


亀井 また、その話か。私は一度もあおったことはない。本当だよ。


---でも、よく会われる?


亀井 会うのは会いますよ。昔からの友達だから。


---その際、国政への復帰話が。


亀井 そりゃ、互いに政治家だから、政治の話はするよ。まあ、石原さんの美意識からすれば、都知事で自身の幕引きをすることはないでしょう。


---ということは、国政の復帰。


亀井 を、夢見ているでしょうなあ。あの人の発言を見てれば分かる通り、常に国家を意識。つまり、関心は国政。もし、新党を結成されたとしても、私はサポートしません。自民党員だもの、私は。ただ、どう連携するかは、別の問題。


---中曽根元首相が、石原さんが総理に就いたら、右大臣は亀井さんだと。


亀井 別にそんなことないよ。逆の場合だってある。石原さんを右大臣か左大臣にして、私がトップということもある。あまり、人を軽く見ちゃいかんよ。

脚注
※1 総理の職権
 衆議院の解散は、内閣不信任案が可決されたときに行えるほか、天皇の国事行為(憲法第7条)の一つとしてうた われている。その際、必要なのが内閣の助言と承認。首相が“伝家の宝刀を抜く”といわれるのは、憲法第7条に 基づく解散を指す。最近、7条解散に異議がでている。
※2 外貨準備高
 通貨当局が保有・管理し、すぐ使える対外資産のこと。輸入代金や借金の決済、外国為替市場への介入に使われ る。昨年12月末における日本の外貨準備高は、4697億2800万ドル。
※3 ハブ空港
 国内線や国際線が発着し、乗客の乗り換えや貨物の積み替えが行われる拠点空港のこと。成田、羽田、関西の各空港。
※4 借金が700兆
 国債および借入金のこと。昨年9月末の残高は631兆5261億円(財務省発表)。小泉内閣は、国債発行高を30兆円の枠内に収めることを掲げていたが。
※5 安倍晋三
 自民党官房副長官。1954(昭和29)年生まれ。93年衆議院初当選。祖父は岸信介元首相、父は安倍晋太郎元外相。第2次森内閣以来、現職。
※6 パンドラの箱
 パンドラはギリシャ神話に出てくる地上最初の女性。彼女はあらゆる災いを詰めた箱を持って、人間界にやってくる。その箱を開けたために災禍が飛び出した。閉じたのはいいが、よりによって箱の中に残ったのは希望だった。
※7 それを順守すべき
 自衛隊のイージス艦は米国艦隊とデータリンク可能な高性能護衛艦。つまり、米軍と一体化した作戦行動が可能な わけで、この部分が憲法が禁じる(政府の憲法解釈)集団的自衛権行使に抵触する。その議論が十分になされない まま、昨年12月イージス艦がインド洋に派遣された。

※無断転載を禁ず


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