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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2003.4.7◎Nikkei Business(日経ビジネス)2003年4月7日号
一刀論断
産業再生は画餅だ 外資が来ない国はだめ

 今、政府が進めようとしている産業再生策は、残念ながら絵に描いた餅だな。日本経済の根幹は自由競争で、問題解決は民間同士に任せるのが基本。それを、国家権力が「この会社は生かす、この会社はつぶす」と選別することなど不可能だよ。
 しかも、経済が悪化していく状況では、生き残らせるという判断すら自信を持ってできない。昨年まで健全だったものが不良債権に変わる、そんな状況がどんどん進んでいる。
 やはり、景気を回復させることが第一だ。経済を成長させながら、民間同士の努力を官がどうサポートしていくか。そこでの官の役割は、とりあえずは財政出動だ。民需がだめな時は官需が埋めるしかない。


まだ“官需”は必要だ


 景気なんて悪くなったり良くなったりする。放っておいて循環的に回復する力が弱いとなれば、官需というカンフル剤を打たねばならない。
 一時的には借金が増えても、景気が良くなれば税収が上がる。それで財政を健全化すればよい。その方法しかないのに、出るのを減らすという全く単純な方法に頼ろうとしている。
 別に公共事業をばらまけと言うわけじゃない。無駄な公共事業は絶対だめ。当然、官需が無駄かどうかの線引きはきちっとしなきゃいけない。私が建設大臣の時は、ダム工事を30ぐらい中止した。自民党政調会長の時にもやった。小泉純一郎首相は「改革だ」と言うけど、実際は何もやっていない。
 それでも、日本のように社会資本が整っていないような国は、まだ投資は必要だ。日本の都市は外国の都市に比べたらゴミ箱みたいにゴチャゴチャしている。立体交差や電柱の地中化も必要だ。高速道路だって、中国は10年のうちに2万km造ったが、日本はまだまだ。1万1520kmの計画のうち7000kmしか造っていない。そのように、どうしても必要な社会資本整備は、この不景気な時にやれば一石二鳥だ。都市の大改造は建設会社だけではなく、あらゆるところに波及する。それで見事な美しい日本が出来上がる。
 今なら修正は可能だろう。ただ、困るのは金融システムがガタガタになっていることだ。結局、日本経済に血液が回っていない。日本銀行にデフレ脱却の金融政策を頼みたいとか言っているが、これ以上、日銀が何をやれるっていうのか。カネはだぶついているのに産業に回らず、国債に向かっているから、史上最低の金利なんだ。借り手がいないんだよ。
 民需に元気がないのは、小泉さんだけのせいじゃない。日本人が本来のバイタリティーを失ったわけだ。もちろん、社会資本という器だけでは食っていけない。中身はやはり第1次産業と第2次産業だ。バイオの世界を含めて技術革新を徹底的にやり、社会資本整備もやる。そうして内需をどんどん拡大するしかない。


ハゲタカ批判の前に反省を


 産業再生の話で「外資=ハゲタカ論」がよく言われるが、私は外資が来ないような日本はだめだと思う。外資排斥論などもってのほか。世界のカネがどんどん集まって、どんどん投資されるような国にならなきゃ。
 私が言いたいのは、不良債権処理といって100億円あるものを5?6億円で買って、それで儲けることにだけ外資が集中しているような日本はだめだということ。空港建設だって道路だって、港湾だっていい。そういう個々の事業の入札に参加してくればいい。
 不良債権処理で外資の独壇場になるのは、別にハゲタカが悪いわけじゃない。手出しができない日本人が悪いんだよ。それでどんどん安くたたいて外資が買っちゃう。日本人もやればいい。米国やハゲタカを批判する前に、日本人がいかにだらしなくなっているかということを反省すべきなんだ。

※無断転載を禁ず


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