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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2003.3.11◎毎日新聞
特集ワイド1 最前線 インサイド
自民党総裁選この人直撃


?野中広務さんも古賀誠さんも、橋本派も宏池会も、米国のまねをして競争だけがいいという経済政策はだめと考えている。?

9月の自民党総裁戦に向け、活発な動きが出てきた。政権2年を過ぎても高い支持率を維持する小泉純一郎首相だが、経済の悪化を背景に政策転換を求める声も強い。新シリーズ「自民党総裁選 この人直撃」では総裁選を巡るキーパーソンたちにその思いを率直に語ってもらう。果たして総裁選は日本の政治の転換点になるのか。まずは「反小泉」を鮮明にし、すでに名乗りをあげている亀井静香前政調会長に聞いた。【松田喬和】


---亀井さんは、「総裁選に誰も出なかったら自分が出る」とただ一人旗幟を鮮明にしていますね。


亀井 私は小泉さんの続投は認めない、江藤・亀井派も同じだ、01年4月の総裁選で私が本選挙を辞退し小泉さん支持に回った時、9項目の政策協定を結んだ。その冒頭は「緊急経済対策のすみやかな実行」だったのに、小泉さんはそれを一切、お守りにならない、いい方向に進んでいるのであれば、我々が間違っていましたとなるが、日本は今このままいけば経済も社会も溶解してしまう、この期に及んで「政策転換して下さい」といっても無理だろう。だから小泉さんにはお辞めいただく。
 ポスト小泉については江藤・亀井派が責任を持つ。我々の政策を実現してくれる立派な人物が出てくれば、我々はかごかきでも構わない。しかし、ちゃんとした人がいらっしゃらないのであれば、私自身が出る。


---特に、経済政策を厳しく批判していますね。


亀井 米国経済がデフレ傾向だから、日本経済がだめなのも仕方ないという考えは決定的に間違っている。日本が小国なら別だが、世界第2位の経済大国だ。世界の預金の60%に当たる1400兆円の個人資産があり、米国には300兆円の金を貸し、4000億ドルもの外貨準備高がある。米国が世界経済のけん引車の役割を果たせないなら、日本が前に出てけん引役を果たすべきだ。そのためには、マイナス成長路線からプラス成長路線に転換する。内需拡大することだ。


---具体的には?


亀井 残念ながら、小泉政権の2年間で、民間経済はズタズタになってしまった。企業は研究開発まで海外に委託している。会社会計を数字的に黒字にしなければならないために、研究開発といった赤字部門を切り捨てたり、リストラをする後ろ向きの経営しかしていない。少々のリスクは覚悟で設備投資をし、チャレンジする企業はなくなってしまった。
 民間に元気がない時には、民間の眠った金を引き出すために政府が思い切った財政出動をするのは当たり前だ。小泉さんはこの前、「国債をどんどん発行したら、長期金利が上がって、経済は大変なことになる」と言っていたが、長期金利は今、史上最低じゃないか、万が一、国債が売れなくなったら日銀が買いオペをやればいい。それでもだめなら、財政法を改正して日銀が国債を直接引き受けられるようにすればいい。今は、国債発行額を30兆円とか枠を決めて借金は減らしているが、その結果国民所得も増えない。国債を発行すれば、借金は増えるが、それによって景気がよくなれば、国民所得が上がり税収も増える。米国のように借金はいずれ減少していく。


---公共事業に対する目は厳しくなっていますが………。


亀井 無駄な公共事業はだめだ。私は建設相の時、大量のダム建設を中止させた。01年度予算では無駄な公共事業を223件つぶした、金額にして2兆8000億円で、その中には鳥取県の中海の干拓事業もあった、明治時代以来、こんなことをやった政治家は初めてですよ。
 一方、生活環境整備など公共事業をしなければいけない部分はたくさんある。東京都と大阪府だけで「開かずの踏切」は1000カ所以上あるが、これをトンネル化する、電線を地中化して、共同溝に光ファイバーを通せば、IT革命にも大きな造らなければならない。大臣や政調会長はやろうと思えば何でもできるんだ。


---外交・安保政策についてはどう考えますか。


亀井 小泉さんの外交政策は、ケンカの強いガキ大将に黙ってついていけば、不良少年からやられる心配はないというようなものだ。しかし、太平洋戦争中、日本はソ連との不可侵条約を結んでいたが、終戦直前にソ連は中国東北部に攻め込んできた。だから条約とか同盟関係だけに頼るのではなく、自ら防ぐ努力もしなければならない。北朝鮮の弾道ミサイル・ノドンが飛んできても、自衛隊が保有する地対空誘導パトリオット(PAC2)では撃ち落とせない。迎撃可能なミサイル「PAC3」を補正予算を組んで買えばいいじゃないか。米国が核で報復するから北朝鮮は攻撃しないだろうと考えられているが、攻撃されて焦土となったときでは後の祭りだ。


---北朝鮮との間には拉致問題もあります。


亀井 北朝鮮問題は日本、米国、韓国、中国、ロシアの5カ国が抜け駆けを許さず経済的締め付けをすることによって、核やミサイル問題、拉致問題を解決する。解決したら、思い切って経済援助をする。それしかない。北朝鮮問題では、韓国に在韓米軍3万7000人がいるので、軍事力はカードになり得ない。経済制裁は日本と韓国抜きでは実効性はないので、北朝鮮問題を解決できるカードを握っているのは、日本だ。私が首相だったらブッシュ大統領に、「3カ国会議には日本も入れる条件で北朝鮮に話をしろ」と要求するだろう。


---自ら守る努力の一つとして、日本の核武装についてはどのように考えますか。


亀井 他国を攻撃する手段であるし、核装備は核を拡散させ危険な競争を激化させるだけだから、反対である。


---それにしても、小泉さんの支持率は歴代首相に比べても高いです。どう分析しますか。


亀井 生活に責任を持っている層で小泉支持はほとんどいない。うちの女房もそうだが、「100円安い」というチラシが入れば、500?600円使って買い物に行くような主婦、そして年金生活者が小泉さんを支持している。なぜならデフレなので、少々給料や年金が減っても使いでがあると感じるからだ。物価が安いので不満が爆発しない。しかし働いていない人たちに支持された政権が続くはずがない。


---では、亀井さんは21世紀の日本のあるべき姿をどのように考えていますか。


亀井 私は、明治維新、敗戦直後に続く第3の革命をしなければならないと考えている。ここまで心がなえてしまった国民に立ち直ってもらわないといけない。一番重要なのは教育だ。6・3・3制を6・6制に変え、全寮制を思い切って取り入れ、今の魂の抜けた親から子供を引き離し、徹底的に人間を鍛えていくことを実践すべきだ。
 経済政策では、米国のまねをやめる。かつて我々の商売や会社経営の仕方、経済システムは米国に勝って、80年代後半には世界一になった。国際法違反をしたわけではない。それなのに勝った方が負けた方のシステムに変えようとしているのはおかしい。競争社会では、日本人の心のありようまで変えている。年功序列や終身雇用といった日本独自のシステムを捨ててきたが、いいものはよみがえらせる。日本には助け合いの中で競争してきた文化があるんだ。


---党内のコンセンサスは得られますか。そのような改革を旧態依存の自民党体質の中で実現できますか。


亀井 野中広務さんも古賀誠さんも、橋本派も宏池会も、米国のまねをして競争だけがいいという経済政策はだめと考えているし、日本人の美しい心を取り戻して教育から社会改革をしようということも共通項ですよ。小泉さんだけが宇宙人みたいに勝手なことをやっている。
 我々が政権を取ったら、今の牛のよだれのようにだらだらやっている審議会政治はやめる。首相が方向性を示したら、1週間なら1週間と期限を区切って結論を出す。実行に当たってサボタージュする役人はクビだ。今は「ツー スモール。ツー レート」。スピードとスケール、2Sが必要だ。
 9月に向けてやりますよ、見てて下さい。

※無断転載を禁ず


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