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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2003.6.10◎タイムズ
亀井静香が大胆直言!
「小泉政権はもはや“レイムダック”だ」

小泉政権が発足して2年1ヵ月が経過した。その間、デフレの進行、失業率の増大、20年来最悪の株価低迷と“経済有事”の様相を呈している。にもかかわらず、小泉首相は従来の政策を転換しようとせず、相も変わらず「改革なくして成長なし」というスローガンを唱えている。支持率もなお50%前後を維持している。こんな小泉政権に生活実感者は離反するなどで、反小泉政権の急先鋒、亀井静香氏は「小泉再選はありえない」と政権の脆さを指摘する。


小泉首相に日本は任せられない

世論とは逆に、生活に責任ある層からは見放されていることを知れ

「デフレ効果」の小泉支持率


 小泉政権が高い支持率を保っているのも、一口で言えば「デフレ効果」だ。デフレ経済下では、奥様方にとっては「宝の山」で生活しているような気持ちだろう。100円安いというチラシを見ると、500円くらいの交通費を使ってでも買い物に行く。そんな心理がある。また、年金生活者の方、これまで10万円かかったのが、5、6万円のクーポン券で妻と一緒に旅行にいける。「小泉さん、すてき」となっちゃうわけだ。
 自分の亭主の賃金が下がり、場合によってはリストラされるかもしれない。年金が支払われなくなるといった可能性もあるのに、そんなことはもう考えない。だから支持率が上がる。しかし、今は国自体がメルトダウンして縮小している。GDPも500兆円を切っている。そういう自分たち自身の存在基盤が崩れていることに気がつかず、目先のことだけに関心を持つ。
 しかも世論調査は電話で行われるため、汗水垂らして働いている人たちの声が反映されていない。家にいて「小泉さん、すてき」と言っているのが回答層で、公表されている支持率にはバイアスがある。
 国会議員が皆、言っていることだが、各々の選挙区では「小泉支持」はいやしない。全国を回っても生活に責任のある人たちは「早くどうにかしてくれ」と窮状を訴える。こうした人たちから支持されない小泉首相は現実にはもうおしまい。ごく簡単な話だ。ところが永田町の国会議員は、「小泉さん、すてき」というフンワリした層の支持を得なければ、今は選挙で当選できない、と勘違いしている。
 しかし、そんなフンワリ層の支持も選挙になれば自民党には来ない。民主党とか、非自民に行ってしまう。選挙に勝つためには、経済をきっちり立て直し、将来の光が見える状況にして、生活に責任のある人たちから支持されるようにしなければならない。
 確かに、支持率と支持層の間には大きな乖離がある。我々はそうしたギャップにもキチッと目を向けることが不可欠だ。政治家には、間違っている国民も幸福にするという義務がある。いつも言っていることだが、世論調査の結果がこうだからと、政治家は何もしないで問題を先送りする。これは歴史に対する責任の放棄だ。「あの時、亀井という政治家が警鐘を鳴らしていたが、うたかたの支持率におびえて結局は国を滅ぼした」ということになってはいけない。

米国に外交を委任するな


 だから、この前、そういう意味では野中広務と、そんな批判だけは受けないようにしようと話し合い、決意した。
なるほど、小泉首相の評価や支持率が高い側面のひとつには、外交・防衛問題でポイントを稼いでいることがあろう。 だが、「それも危険だ」と私は思う。米国という強いガキ大将にくっついて、言いなりになっていれば、北朝鮮という不良少年からやられる心配はないという論理だからだ。それは、今の国民感情にも当てはまる。
 米国のやっていることが全部いいことだとは思っていない。しかし、米国にくっついていないと北朝鮮の脅威から逃れられない。だからと言って小泉首相のように、「何でもOK」「その通りだ」という追随外交が正しいかどうか、ここは考えないといけない。それで本当に日本は安全なのか、と。
 私は米国という国は好きだ。米国が、いわば「世界の警察官」として自由と公正、あるいは民主主義を求める人たちを見殺しにすることなく、バックアップしていくことはいいことだと思う。だが、こうした大義に立ち、戦争という手段でボンボン「悪の枢軸や悪い奴はやっつけろ」という形で、しかも独断で、国際社会の支持も受けないでやることを、日本が「結構だ、結構だ」と言っておったら大変なことになると思う。
 私がこの前、訪米した折、アーミテージ国務副長官にも言ったことだが、「俺もかつて警察をやっておったけど、確かに市民は得て勝手でわがままだ。だけども、市民の支持を得ない警察は駄目だよ」と、きっぱり言ってやった。
 米国の利益だけではなく、世界のために自分がやっているんだという気概が本当にあるのか。例えば環境問題。
京都議定書に米国は署名していない。ところが、世界で1番環境破壊をしているのは米国だ。それを、米国が自制をしながら先頭に立って世界を引っ張っていった時こそ「世界の警察官」となる。
 また、WTO(世界貿易機関)でも、世界の果ての様々な国々には色々な事情がある。それを十分に勘案して、世界のそういう人々が生活をしていけることを考えながら、場合によっては米国がWTOでリーダーシップを発揮していかなくてはならん、ということを主張してきた。同盟国である以上、言うべきことは思い切ってはっきり言う。これが本当の同盟関係だ。
 ただ言いなりになってばかりいては、有事の際には何の役にも立たない。そんな甘い関係では、攻撃された時、捨てられる可能性だってある。もっと対等な、イコールな立場にしていかなければならない。それで協力すべきことは思い切って協力していけばいい。しかし、前提として、やはり、日本の立場から言うべきことは明確に言う。
北朝鮮問題だって、とにかく北朝鮮との交渉が再開すればいいから、米朝間の交渉に中国を加えて始めろという向きもある。しかし、小泉首相はブッシュ大統領に、「なんで日本と韓国を入れないで応じるんだ」と言うべきだった。安全保障上、北朝鮮問題で最も危険な状態にあるのは日本と韓国。米国には北朝鮮のテポドン・ミサイルは到達しないが、ノドンは日本に確実に着弾する。それに日本は拉致問題も抱えている。そういう日本や韓国を抜きにして、米国が日韓両国を頭越しに北朝鮮と交渉するのは、やはりおかしい。
 小泉首相は米国の「悪の枢軸」構想に乗り、外交を進めてはいる。だが、厳然と脅威が存在する以上、どうやって危険性を除去するか、現実的なことを考えねばならない。米国に全権を委任しておけば北朝鮮の問題も解決すると考えたら、拉致問題は置き去りにされる。北朝鮮は米国にはリップサービスをする。「核兵器は開発しません」「テポドンは開発しません」と勝手に手を握られてしまったら、日本は打つ手がなくなってしまう。核兵器は開発できなくても、生物兵器をノドンに搭載されて打ち込まれてしまったら、日本にとっては大変な事態になる。
 米国は何の痛痒も感じないかもしれない。だが、日本にとっては非常な脅威だ。安全保障上の問題は日本がきっちりコミットしていく中で、決着をつける。そういう面では日韓米中露の5カ国がしっかりとスクラムを組まなければならない。

政策転換なくば身を引け


 米国は圧倒的な軍事力という強力なカードを持ってはいるが、外交上、なかなか使えまい。在韓米軍の3万5千人を本気で犠牲にする気なのか。軍事力というカードはなかなか切れない。従って、北朝鮮には在韓米軍は何ら怖い存在ではない。一方、日本はそれ以上のカードを持っている。それは経済力だ。
 日本には在日北朝鮮の人たちが何十万人もいる。日本との経済的関係なしに北朝鮮はやっていけない。経済制裁では米国は現実にほとんど効果を挙げられない。だが、日本ならできる。日本の場合、北朝鮮に対しては経済力、そして地政学的立場から大変強力なカードがある。何も米国に全権を委任することはない。そういう強力なカードを日本は活かし切れていない。
 小泉首相は、ブッシュ大統領と会見し米国からイラク復興の強力を求められ、そのために今、6月18日で切れる国会の会期を延長し、イラク復興支援安定化法案を制定する動きにある。その流れの中で会期幅をどうするかが懸案となっている。政策転換を求めるわれわれ反主流派の内閣改造要求を封じ込める狙いがある、と憶測する向きもある。
 しかし、私は内閣改造を求めていない。これまで政策転換を3回直談判したが、小泉首相に求めたって無理だということは分かっている。そこで解決の道は、この際、潔く身を引いてもらうしかない。政権を変えるしかないのだ。政策転換の可能性はもうないからだ。
 私は昨年10月、「小泉首相はレイムダックだ」と宣言したが、今はもう完全なレイムダック状態。それでも世論の支持によって政権が、かろうじて支えられている。本人が頑なに辞めないという最悪の場合には総裁選挙で決める。
 総裁選では勝てる。現実に地方の票が小泉首相にどれだけくるか。数えるほどしかないだろう。300票のうち1割くるかどうかだ。職域にいたっては医師会、郵便局からいくらくるか。地方党員、中小企業の経営者の党員は不満で一杯だ。「小泉首相はいい」と言っているフンワリ層は投票権を持っていない。再選はまずあり得ない。永田町は小泉支持一本ではまとまらない。ほとんどが反小泉だが、立場上言えないだけの話。
 焦点は、小泉の対抗馬の本命が誰になるかだ。小泉首相は国民の人気が高いうちに解散に持ち込み、敵中突破を図る考えらしい。だが、冷静に考えたら橋本龍太郎首相も高い支持率を誇ったが、緊縮財政路線による不況のため大敗した。生活に責任ある層が本当に支持してくれれば、小泉首相の下で選挙には勝てる。そして実態は、総裁選では地方票も合わせると過半数が“反小泉票”となるだろう。

総裁選に亀井氏は出るのか


 小泉首相は過半数の議席が取れず、退陣となる。そこで総裁選の対抗馬だが、誰も出なければ私自ら出馬する、という話で持ち切りだ。しかし、今から候補に名乗りを上げるにはまだ時間がある。政治家になって総理を目指さない議員は衆議院に立候補しないものだ。そういうことから誰が出馬するかは今、言うべきことではない。決戦投票か統一候補でいくのか、どちらかに決まれば、アッという間に決着するだろう。
 また、石原新党で石原都知事を総理にする構想を抱いているのでは、と巷で言われている。かつて私は石原氏を総裁選に担いだ経験はある。しかし、今の時点では議員バッジをつけていないのであり得ない。新党結成は、石原氏自身が決めることだ。これは、将来のシュミレーションの問題で、今の時点でとやかく言う話ではない。
 総裁選に至るまで、「会期延長の幅が大幅になるとむしろ首班指名には不都合」という意見もある。しかし、会期が開いていようがいまいが、関係はない。問題は国会を開くということは金のかかる話で、何のために開くのか。それは、私が言った金融・経済に関する政策提言のひとつである10兆円規模の補正予算案を決めるなら話は別。それもしないで、イラク新法だという。ただ、イラクは米英が戦勝によって今占領下にあるだけ。政権の枠組みもできていないのに米英の占領軍の下働きをする、というのは相当の覚悟が要る。占領とは戦争の継続。どういう手順で有効な支援をするのか、はっきりしないとやり様がない。
 私が仮に出馬するとなれば、この前の政策提言が公約となるだろうが、まだ去就を決めたわけではない。当然、政策協定もある。とにかく生活に責任のある人たちは全国いたる所で悲鳴をあげている。生活に責任のない人たちが「もっと日本経済を滅茶苦茶にしてください」と言っているようなもの。だから、私が言うように時流に流されてはいけないのだ。
 自民党は過去30年以上の長きにわたり、長期政権を維持してきたため、マイナスな体質が批判を受けてはいる。 だが、これは民主党も同じような批判を受けているわけで、権力のある方へ批判が集中しているだけに過ぎない。 これは当然の成り行きだ。ただ、小泉首相が自民党に斬新なイメージを与えたことは認めざるを得ない。今後、小泉首相が9月の総裁選で再選されようがされまいが、いずれも政界再編の動きが出てくるだろう。
 そして、私は秋の臨時国会で現在の選挙区制度は変えないといかんと思っている。かねて言ってきた中選挙区制である。これは少なくとも大都市圏でやる。公明党も言っているようだが、大都会で今のように一区一人当選では、妙な風にあたった候補者しか出て来ない。比例制を導入すればよい。選挙制度を変えることで、ひいては二大政党制にもつながるかもしれない。そのためにも選挙制度の改革は避けられない。現行の制度では民意は正しく反映されない。これだけはやる決意だ。
 ともかく、小泉首相に現在の日本を任しておくわけにはいかない。

※無断転載を禁ず


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