活動実績

新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2003.9.5◎毎日新聞夕刊 2003年9月5日
毎日21世紀フォーラムから 第25回例会
公共投資で景気浮揚を

異業種交流組織、毎日21正規フォーラムの第25会例会が8月29日、大阪市のホテルニューオータニ大阪で開かれ、自民党総裁選に立候補予定の同党前政調会長、亀井静香氏が講演した。政局の焦点である総裁選候補者とあって関心は高く、過去最高の約300人が出席。取材のテレビカメラが並ぶ中、亀井氏は総裁選にかける意気込みと、景気重視の経済政策への転換など自らの政策を熱っぽく訴えた。 (山口透、写真・国平雅宏)


対米従属でなく対等に

[ 2、3位連合 ]

 総裁選は天の与えたチャンス。国民投票で総理が決まるならやっかいだが、党員選挙という狭い土壌の中での勝負を経ないと総理にはなれない。9月20日にはきっちりします。
 小泉再選への永田町での基礎票は森、山崎、旧加藤派が全部行っても100票余。青木さん(幹雄氏、自民党参院幹事長)が支持するといっても参院平成研(橋本派)の票はほとんど行かないでしょう。小泉政権が3年続いたらどうなるか、このまま来年の参院選を迎えたらどうなるかは、国会議員が一番分かっている。(小泉純一郎首相の国会議員票は)せいぜい110票ぐらいでしょう。
 地方党員票300票のうち 220?230票取らないと(小泉)当選はない。前回は田中真紀子氏とのフィーバーで圧倒的に得票したが、今回はそんなフィーバーが地方で起こる気配はない。客観情勢では、小泉再選はあり得ない。
 野中さん(広務氏、橋本派幹部)や古賀さん(誠氏、前党幹事長)なども当初は統一候補の方がいいと考えていたが、反小泉勢力にも派内事情があり、今の時点では各グループが候補を出し、最終的に一本化する。(対立候補は)すべて反小泉勢力。第1回投票で過半数を取れないとき、(反小泉勢力は)集中するということです。既にそういう約束は、それぞれしています。

[ 文化、経済の力 ]

 20世紀は科学技術が爆発して生活が便利になり豊かになったが、一方では革命と戦乱の世紀でもあった。人類にとって必ずしも幸せな世紀だったとは言えない。21世紀に入り、早くも凶悪なテロ、9・11(米同時多発テロ)に見舞われ、アフガニスタン、イラクと戦乱が展開されている。
 軍事力はもちろん大事でしょう。しかし、この世のことをすべて軍事力とか力だけで、ちゃんと出来るのか。私は出来ないと思う。アメリカの圧倒的な科学技術を駆使した建築物が、一部の者の魂のありようで一瞬の間に破壊された。今も世界のあちこちで多くの犠牲が、大した軍事力もない、力もない人によって引き起こされている現実を無視するわけにはいかない。私は、結局軍事力も力だが、やはり経済力、文化もまたあ同等の力を持つと思う。

[ 対等な日米関係 ]

 私は1月に訪米し、アーミテージ国務副長官ら高官と話をして来ました。アメリカが世界の警察官として、自由、民主主義、豊かさを世界の人と共有したいという気持ちで行動するのは素晴らしいことだと思う。しかし、私が警察官をしていたから言うのではないが、確かに市民は身勝手でも、そうした市民の信頼を得なければ警察官の仕事は成り立たない。私はイラクでの軍事力行使に強い自制を求めたが、ああいう結果になった。
 日本は国家として、自分たちの利益だけでなく、世界のためどういう行動を取るべきかという視点が、残念ながら欠落している。イラク問題も、その場の雰囲気で決断すると総理はおっしゃった。北朝鮮問題でも、アメリカに逆らうことなくついて行くことが国益だ、という錯覚が政治家だけでなく、国民、マスコミの中にもあると思う。
 私は日米同盟を強化すべきだと思っているが、アメリカのためにも世界のためにも日本のためにも、アメリカに「それっはおかしい」「こうした方がいい」と言うことがなければ、それは真の同盟関係ではなく従属関係。日本有事のときに日本にプラスに働くなんて期待出来ません。

[ 経済カード ]

 アメリカと日本は安全保障でも北朝鮮問題でも、共通点もあるが違う点もある。アメリカに拉致問題はない。(北朝鮮の)ミサイルは飛んで来ない。北朝鮮が望んでいるのは経済援助。経済がどうにもならなくなり援助がどうしても欲しいから、拉致問題でもあちらからアプローチしてきたし、アメリカとの対話も北朝鮮から求めた。
 そういう時にアメリカの軍事力は、在韓米軍 3万5000人を犠牲にし、ソウルが灰になる覚悟をしない限り、北朝鮮に対する決定的なカードにならない。日本の経済力がアメリカの軍事力以上のカードになることをしっかり押さえなければならない。わが国の安全のため、拉致問題の解決のため、経済カードを使うことは当然。さらに北朝鮮にとって怖い経済封鎖というカードも持っている。

[ 日本経済の苦境 ]

 円安、輸出頼みでもうかっている一部勝ち組がいます。リストラで従業員、下請けを切り捨てて黒字に転換した勝ち組もあるでしょう。日本はものすごいスピードで産業の空洞化を進めている。
 本社は東京に集中、県庁所在地の支店はほとんど閉鎖。国内の工場はどんどん閉められ、地方では高卒の半分以上が就職できない。何も好き好んでフリーターになるのではない。若者たちが人生の出発点でそういう状況になっている。
 また、毎日100人が自殺するという現実。私は25年前に泡まつ候補から出発したが、応援してくれた中小零細企業の人たち、兄弟のような人たちが、この2年ちょっとで6人も自殺した。すべて立派な方。普通ならやっていける人が、どうにもならなくなって死んで行った。私はかつて小泉さんに具体的な状況を話したが、宇宙人と話をしているような気分になった。

 

戦争防止が最重要


[ 世界一の債権国 ]

 日本は1400兆円と言われる金融資産、4800億ドルを超える外資準備高も持つ世界一の債権国です。アメリカに300兆円以上貸している。ODA(政府開発援助)として毎年 1兆円以上ばらまいている。そんな日本がなぜ国内でこんな状況なのか。どう考えてもおかしい。
 現在の不況は小泉さんだけのせいではありません。ただブッシュ大統領との約束で、不良債権処理を急ぐという、やってはいけない失政をやり、不況を悪化させてしまった。不景気にしながら借金をはがしていく、こんなむちゃなことがよく通ると思う。
 結果としてアメリカから来たハゲタカファンドが日本列島を乱舞している。日本列島がバーゲンされ、彼らの言い値、二束三文で取られちゃう。金融もそうです。イギリス・サッチャー政権の金融改革を手本にしているが、イギリスには民族資本の銀行は一つもなくなった。

[ 政策転換を ]

 世界経済に責任を持つ日本が、財務省の財界再建のため支出を減らすという単年度予算主義の弊害で間違った方向へ進んでいる。これは9月以降、がらっとひっくり返します。やることはたくさんある。日本のまちは世界から見たらゴミ箱同然。電線を地下に埋め、そこに高速の光ファイバーを入れれば、韓国に後れを取っているIT(情報技術)分野がドーンと進んでいく。大阪だって東京だって、緑の多い庭園都市、公園都市にしたらいいじゃないですか。開かずの踏切を立体交差に、下水道整備をやればいい。
 また、日本は災害国家。台風はしょっちゅう押し寄せるし、震災はいつ起こるかわからない。今の都市構造なら大変な犠牲が出る。そんなことおに公共事業で取り組むことが何でいかんのですか。国民の生命・身体の安全を守り、生活を快適にする、産業活動のコストを下げる。外国に比べて格差ある生活環境を整備することが、当局の景気浮揚につながる。

[ 教育改革 ]

 当局の景気対策は思い切ってやるが、それだけではドブに金を捨てるのと同じ。この二十数年で失ってきた、あのエネルギーの元である魂をどう取り戻すか。教育改革をやらなければならない。カネ、カネと自分さえ良ければいいという駄目な親から、子供を引き離すしかないと思う。子供たちが友情を温めながら一生の友を得る場を作っていく。全寮制の学校を公立でもどんどんやります。
 国家が誇りと自信を持たずして、ちゃんとした日本人が育つはずがない。確かに反省すべき歴史もある。耐え難い歴史もあるでしょう。一方で栄光の歴史もある。そのことを何気ない日常会話の中で、子や孫に伝えなければならない。

[ 戦争を防ぐ ]

 今本当に心配しているのは、戦後半世紀以上たち、あの戦争の惨禍、戦争からは何も生まれないこと、戦争をやってはいけないこと、戦争を防ぐことが政治家は一番大事だということを、忘れかけていることです。逆に戦争に協力することが大義だという間違った風潮が政治家の世界にも、マスコミにも、一般国民にもじわじわと広がってしまっている。私はこうした空気も危険だと思う。我々が自身を見失っている。風にそよぐ葦(あし)のように、善悪を判断せずにその時の風潮に従ってしまう。それを変えなければならない。

※無断転載を禁ず


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