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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2004.2.1◎毎日新聞
発言席
米国の誤りには直言せよ

 21世紀に入って4度目の正月を迎えた。この世紀をどうすべきなのか。政治家にとっても極めて重い命題だ。
 20世紀は科学技術が発展し、大量生産、大量消費を可能にした。半面、「戦争と革命の世紀」と呼ばれた。 幸福な世紀だったとは言い切れない。21世紀も、その入り口で米国での9・11テロやアフガン戦争、イラク戦争が 起きた。希望的観測を持ち得ない幕開けだった。
 責任の大半は米国の世界政策の間違いにあると私は考えている。交通、情報手段がいかに発達しようとも、 アジアでも、アフリカでもそれぞれの自然環境の中で、長い間培われた歴史と伝統が息づいている。住む人々が抱く 人生観、幸福観が異なるのも当然だ。
 米国的価値観でその地域を解放することが、十字軍的正義だと思い込まれては、この地球は惨たんたるものに なってしまう。米国政府内でのネオコンと呼ばれている集団は、価値観の違いを理由にイラク戦争を仕掛けた。 大量破壊兵器の廃棄、圧政の排除は歓迎するが、そのために直ちに戦争に訴えてよいものだろうか。
 その時、日本はただただ米国に協力することが世界人類の幸せに貢献になるとは思われない。わが国は技術大国、 経済大国だ。米国も無視できない存在であることをもっと自覚すべきだ。大いなる注文を米国に付けて当然だ。
 小泉政権の不景気政策、マイナス成長経路をブッシュ政権は支持している。短期的には米国に極めてプラスだからだ。 日本人は貯蓄性向が極めて高い。その貯蓄が、米国に流れている。一説には400兆円ともいわれている。
 日本人が汗水たらしてためたお金を米国人が使っているのだ。働き蜂もいつかはやせ衰え、働けなくなってしまう。 長期的には米国にもマイナスだ。
 もう一つの問題点はブッシュ大統領からの要請で不良債権を国が直接処理していることだ。 小泉純一郎首相は、竹中平蔵金融・経済財政担当相を司令塔に立て、中小企業からも債権回収を急いだ。だから、 多くの倒産が出た。最近は少し落ち着いたというが、自主廃業は増えている。
 しかも、押さえられた担保物権は、ただ同然で市場に流れている。産業再生機構はハゲタカの独壇場になっている。 10億円で買った新生銀行が590億円ももうけているのが典型だ。日本列島が大バーゲンにかけられ、米国の食い物に なっている。
 たしかに一部の大企業は黒字を計上している。しかし、内実は血の出るようなリストラを行った下請けの中小零細が 甘受すべき利益を吸い上げているだけだ。それで、株価を上げているに過ぎない。
 こうした状況を打破するには私が前々から主張している成長路線への転換しかない。外資もハイエナではなく、魅力 ある前向きな投資を可能にする環境整備が急務だ。
 20世紀に猖獗を極めたマルクス・レーニン主義、トロツキー主義といった組織的な革命運動は今後は起きないだろう。 だが、テロとか、犯罪とか対応しにくい反逆は大いに起こり得る。実際にすでに起きている。
 日本も猿真似をしていることから、米国型の犯罪社会になりつつある。社会のひずみがより弱者に押し付けられ、 底辺に沈殿した層は犯罪という形で反逆するからだ。
 米国は世界のリーダー、警察官として重々自覚すべきだ。そのためには、日本も首相をはじめ各界の指導者も、マスコミも 助言と時には忠告を忘れてはならない。


亀井 静香
衆院議員(自民党)

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