活動実績

新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2004.2.1◎テーミス2月号
共感を呼ぶ「地方を救え!」
亀井静香の逆襲-「米国&小泉」にもの申す

 中曽根康弘から石原慎太郎まで見方につけて中小・零細企業と日本の将来を憂える



「9回目の当選」で原点に戻る


 自民党の亀井静香元政調会長が不気味な沈黙を保っているが、自衛隊のイラク派遣については周辺に否定的な発言を繰り返している。1月末に予想される国会承認手続きでは、古賀誠元幹事長、加藤紘一元幹事長とともに「欠席か棄権するのではないか」(全国紙政治部記者)という見方が強まっている。今後、自民党の非主流派としての政変の台風の目となる可能性が出てきた。
 亀井は04年正月、珍しく地元広島で“新年互礼会”に駆けずり回った。1月2日から5日まで4日間で13か所の会場を回る強行スケジュールである。三次市、庄原市、府中市、因島市、三原市、尾道市のほか甲奴郡、神石郡、世羅郡、比婆郡など自らの選挙区(広島6区)全域をほぼ網羅したうえに、隣の広島7区である福山市でも後継者に衆院当選のお礼をいって回った。 地元紙政治部記者がいう。
 「亀井氏は、総裁選にも出て小泉首相に次ぐ次点だったが、昨年11月の衆院選挙では意外な苦戦を強いられた。2位の民主党候補に約1万7千票差まで追い上げられた。背景には連立相手である公明党・創価学会が全力を出し切らなかったといいうことがある。亀井氏はかつては反学会の急先鋒で、そのことを根に持つ学会婦人部が思うように動かなかったのではないかという見方だ。しかし、今回の選挙では亀井夫人が全面に立って支持基盤を固めた。9回目の当選で亀井は原点に戻った」
 亀井は二世議員ではなく、地盤・看板・カバンなしに“徒手空拳”でここまでやってきた。広島県比婆郡(現庄原市)の山間部から東大を目指すために、わざわざ都立大泉高校へ編入。一浪して東大に見事合格するも仕送りは一切もらわず、家庭教師や夜警、キャバレーのボーイをやって生計を立てた。
 卒業後、サラリーマン生活を1年するが、安保闘争の様子をテレビで見て警察庁に入庁するという直情型だ。将来を見込まれながら、あさま山荘事件で逮捕された森恒夫を取り調べたことがきっかけで79年、政界入りを果たす。その理由は「森の考えは間違いだが、そうさせたのは政治が悪い」だった。
 故・中川一郎率いる青嵐会に所属したことから、タカ派といわれることが多かった亀井だが、ここ数年は「弱者のために政治はある」と政界入りを志したスタート地点を顧みるかのようだ。
 その亀井が名実ともに政策集団「志帥会」(亀井派)の会長になった。03年12月18日、東京紀尾井町のホテルニューオータニで開かれたパーティには約3千人が訪れた。最初に挨拶に立ったのは、大勲位・中曽根康弘元首相だ。
 「いまの日本は不安定だ。経済は低迷し、人心も荒んでいる。これは政治の責任だ。国にとって大事な憲法の問題や教育改革、不況脱出の計画など、これを明確に示さなければ、国民に不安を与えることになる!」
 中曽根は前回の衆院選挙で「比例73歳定年制」を小泉から突如、突きつけられて引退に追い込まれた。しかし、85歳にしてまさに矍鑠(かくしゃく)としたものいいは、今後も小泉批判のボルテージを上げそうだ。亀井も中曽根の引退勧告については、「日本社会が大切にしてきた高齢者や先輩に敬意を払う美徳を破壊するものだ」といってきた。
 中曽根のあとも亀井に会長を譲った江藤隆美元運輸相が「政治は足し算掛け算だと思ってきたが、(小泉首相は)引き算や割り算だ」と怒りをぶちまけたかと思えば、亀井の盟友・石原慎太郎東京都知事もこういった。
 「東京都から日本を変えようとしても国の動きは遅すぎる。パッパッと仕事ができるのは、亀ちゃんほか数すくない。国政突き動かしてほしい」

アーミテージに注文したこと


 これを受けて亀井は言った。
 「日本は、もう幕末に匹敵する大きな曲がり角に来ている。だってそうでしょう。大企業はリストラで利益を上げ、中小零細企業は追いつめられて、地方はカラカラに干上がっている。強者の論理がこれ以上、まかり通っていいのか。日本が持っていた美しい魂を取り戻し、共生の社会、日本を築いていかなければならない」
 パーティに参加した亀井ファンは、「いま、地方経済の現状や中小企業のオーナーの気持ちをわかってくれる政治家は亀井さんくらいしかいない。小泉不況をいつまで続ければいいのか。このままでは日本は溶けてなくなってしまう」と訴える。昨年8月には、総裁選を控え、亀井を支える「女性の会」が開かれたが、この時も全国各地から女性経営者やOLなどが多数集まった。亀井が「地方を救え!」「中小・零細企業を救え!」と訴えてきたことで、いままで考えられなかった層に亀井ファンが増えているのだ。
 そんな亀井は今後の政局はどうしようというのか。「いまはテレビなどは全部断って静かにしている」といいながら、本誌だけにこう語る。
 「やはり、アメリカとのつき合いをもう一度考える必要がある。私はアメリカ好きですよ。でも、米ソ対決が終わって1人勝ちになって、世界の中で追随を許さない軍事大国がバランスの取れた形できっちり進み、世界の人たちは日本も含めてハッピーというんならいい。だが、どうもブッシュ政権になってからそうじゃなくなってきているんじゃないか。イラク問題についてもたしかに邪悪なフセインを世界のために除去することは大事なことかもしれないが、しかし、彼がイラク国内において権力を掌握したという事実は否定できない。やっぱりこれはアメリカの思い上がりという気持ちがある」
 亀井はちょうど、1年前の03年1月訪米し、アーミテージ米国務副長官と会談した。その席ではこんなやりとりがあったという。
 亀井「アメリカは世界の警察官だということで、フセインにしろ、金正日にしろ、世界にとって危険なものに対し、対応してくれることはありがたい。ただ、オレも警察官をやっていたからいうわけではないが、たしかに市民はわがままで、えてして勝手なことをやる。しかし、その市民の支持と信頼がなければ警察の仕事は務まらんのだ。
 アーミテージ「実は、私の父親も警察官だった。亀井先生のように勇気がないから、私は政治家になったが」 亀井「アメリカが善意でやっていることはわかる。だが自分たちの理念、政策が絶対に正しくてその他の考えが間違っているという前提ではダメだ」
 亀井はイラク問題に加え、北朝鮮問題についても「日本が韓国や中国とも協議しながら、どういう料理の仕方がいいかを考えて実行すべきだ」という。

ハゲタカの独壇場でいいのか


 そうなると、現在小泉政権がやっている“アメリカ追随”ともいえる外交姿勢は間違いなのか。かねてから亀井は「アメリカの猿マネでは国は滅びる」といってきた。亀井が続ける。
 「小泉のやっている不景気路線、経済をマイナス成長させることーーこれはアメリカにとって短期的に利益になるから(小泉政権を)支持してるんです。不景気にすれば、日本で産業資金への需要がなくなるから、1千400兆円の金融資産が結局アメリカに流れていく。つまり、アメリカにとって働きバチの役割をいまの日本人はやっている。働きバチは死んでしまえば、おしまいだ。
 もう一つは、不良債権の直接処理。これもブッシュ大統領が小泉に要求して呑んだでしょ。景気を悪くしながら、不良債権処理だから無茶苦茶な話です。銀行が融資をするんじゃなくて、貸し剥がしをする。結果は日本の中小・零細企業はどんどん倒産して自主閉鎖に追い込まれている。いま倒産件数が減っているのは、自主廃業が増えているから。そういう状況で誰が儲かっているかというと、アメリカから飛んでくるハゲタカでしょ。ハゲタカはタダ同然の担保物件をもっていく。整理回収機構(RCC)は、いまやハゲタカの独壇場だ。その過程で大変な利益を上げていま六本木や汐留にある超高級マンションに、1部屋月300万円のハゲタカの巣ができている。日本人なんか住んでいない。これを日本人が拍手喝采して、金融庁もそれでいいというんだから、まったくおかしな話だ」
 さらに亀井は、昨年7月に決めたイラク特措法では自衛隊は予想もしていない事態にまき込まれると考える。実際に犠牲者が出たらどうするのか。
「犠牲者が出れば判断しているのは政府なんだから、政府の責任。法律が想定していない状況に対して無理矢理、行けといっているんだから……。出した場合は出した人間とそれに賛成した議員の責任。困った話。今年は大変な年になるね。転機でしょう」(亀井)
やはり亀井がこのまま静かにしているわけはなさそうだ。

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