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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2004.5.10◎週刊特報
大林高士のジャーナル対談
第15回亀井静香(衆議院議員・自民党元政調会長)

小泉には任せておけぬ!
豪腕政治家がリベンジ開始
庶民に冷たい改革は許さない


かつて江藤・亀井派と呼ばれていた自民党派閥「志師会」は、昨秋、江藤隆美氏が政界から引退を表明、今では亀井派である。名実ともに派閥の長となった亀井氏は、反小泉の急先鋒の政治家として注目を浴び続けてきた。小泉流構造改革、自衛隊のイラク派遣にも異を唱え、昨年9月の自民党総裁選にも立候補した。そして、この3月、亀井氏は総裁選以来、初めて首相官邸を訪問した。マスコミをシャットアウトしてきた亀井氏が、その胸中を明かす…。

「イラクには自衛隊を派遣すべきではない」


 もともと警察官僚だからだろうか、亀井静香には「いかつい」「怖い」「にらまれたら、終わりだ」といったネガティブなイメージがつきまとう。
 しかし「実力者」「豪腕」「一度言い出したならば、発言がブレない数少ない政治家」という評価もある。いったい、「実物大」の亀井静香は、何を考え、何を見据えているのか。なぜイラク派遣決議の衆議院本会議を欠席したのか。小泉ともう一度、戦うのか。そのあたりの本音を直撃した。

「イラク戦争には反対だね」


大林 まずはイラク問題について亀井先生のご意見をお聞きします。先生は、1月末のイラクへの自衛隊派遣の承認案件の衆院本会議採決に欠席し、実質的な反対の意思表明をされましたが、ここに来て日本人3人がイラクの武装グループの人質にされるという事件が起きました。
亀井 私は人質3人が解放された前日の4月15日に小泉総理に電話をかけて、次のようなことを言った。アメリカがイラク攻撃の口実にしていた大量破壊兵器がないということが分かったという状況において、イラクのことはイラク人に任せるべきではないか。イラク人が自主的に行うことを、アメリカを始め、世界の国々が容認しなければならない。この際、アメリカの同盟国である日本は、ブッシュ大統領に決議を申し出て、イラク政策、中東政策、世界の平和と安全と平和に関する政策を当然、話し合うべきだ。ドイツやフランスと違って、日本はアメリカに全面的に協力してきたのだから、総理はそう言う申し出をブッシュ大統領に言える立場にある、と。
大林 小泉首相は、何と?
亀井 「やあ、やあ、ありがとう、ありがとう」とは言っていました。
大林 あの人はいつもそれだ。
亀井 実行するかどうかは分からないけれども。イラクの問題については、民族自決という原則を忘れ、宗教も風俗、習慣も違う他国がその国の政治体制が悪いからといって、武力行使をして、政権を替えさせるなんていうのは、基本的に間違っている。だから、私は去年1月、アメリカに行って、アーミテージ国務長官を始め、政府要人に面会して、イラクに軍事力行使をすることはいけない、大量破壊兵器がある可能性があるのならば、査察、その他で粘り強く交渉するべきだと言ってきたんです。今日の人質事件を解決したって、問題は解決しない。イラク政策全体の抜本的な見直しを図るべきなんです。
大林 自衛隊は撤退するべきだと?
亀井 日の丸をつけた装甲車が外国の軍隊に守られているという、恥辱的な映像が報道で流されています。なんで、どうしてそこまでして日本の恥をさらさないとならないのか…。だから私が1月31日にイラク派遣の承認採決のための衆議院本会議を欠席すると、ホームページを通じて、100通を超えるメールが寄せられました。2、3通を除いて圧倒的に賛成多数だった。だから、私は政治家として、また人間として、戦争を防ぎ、平和を維持して人命を守っていくことが重要だと考えます。
大林 そもそも、大量破壊兵器があるのかないのか、わからないうちに始まったのは、ブッシュ親子の積年のイラクへの憎悪からで、これは大儀なき戦争です。
亀井 アメリカは、世界の警察官として戦争を始めた。だが、国連が査察をまだ進めている段階で、もう時間切れだ、待てないとして戦争を仕掛けるのはやるべきではなかった。私は、警察官をやっていたからよくわかるが、市民の信頼と安心、それらを得られないと支持されないものです。今のアメリカは、世界の人たちの支持と共感をもとに行動しないと、世界の嫌われ者になってしまいますよ。 だからこそ、さっき言ったようにきちんと協議すべきだね。
大林 先生が平和の発信元であり、原爆体験のある広島出身であることと反戦論者であることは関係ありますか。
亀井 おおいにあります。私は、第二次世界大戦が終わったときに小学校3年生でした。「弱音を吐くな」「一億玉砕」なんていうあの大東亜戦争時の狂信的な雰囲気すら、米イラク戦争には感じていましたねえ。言論機関もそうなっていて、イラクでの米兵の犠牲者を、一段見出しのべた記事でしか扱わない。この感覚は怖い。

「小泉の軍門には下っていない!」


大林 あるインタビューで「小泉は訪米してブッシュ大統領に、戦後の占領軍は日本人を旧い日本から解放したと発言したのはけしからん」というようなコメントをされていました。
亀井 そうですね。戦前・戦中の日本には、いいところも悪いところもあった。それを、アメリカの占領軍は日本人のための解放軍だったというのだから、どんな気持ちで政治をやり、外交をやり、靖国神社に行くのか、さっぱりわからないという意味で言ったんですね。あのときは総裁選のまっ只中で、小泉は景気を本当に悪くした、本来、日本経済は4%程度の成長力があるのに、わざわざみんなが苦しむような状況を作っていると。たとえば小泉が言うように、地方の商店だってシャッター通りばかりなのに、コンビニやスーパーで薬を売ったら、地元の商店街はどうなるんです?つぶれる店が出てくる。これは弱肉強食の世界なんです。一生懸命、生きる人を守るのが政治なんです。
大林 さて、亀井先生、総裁選の頃をピークに、以前は反小泉の期頭と目されていたのに、最近では、小泉の軍門に下ったという評判もありますが。
亀井 ちょっと待った。何で俺が小泉総理の軍門に下ったなんて言われるの。軍門に下った、下っていないなんて、くだらない話だ。私は、総理には、経済政策、イラク問題など、批判すべき点は批判しますよ。大林さんもなんでそんなこと言うの。この対談、やめるよ!(席を立とうとする)
大林 マスコミや世評がということです。ゆえに私は亀井反論をお聞きしたい。
亀井 今だって反小泉の……。小泉さんと私は、女性の取り合いをやったわけじゃないから、別に私は反小泉というわけであるわけないんじゃないの。個人的には仲がいいんだけど、おやりになっていることが間違っているなら、間違っていると指摘する。国家のためであるならば、対立する場合もあるし、手を結ぶ場合もある。ともに自民党、国家を愛する政治家なんだから。
大林 軍門うんぬんという話は、どうも亀井議員が反小泉色を鮮明にすることで、地元の反発があり、それゆえ脱会者もいて亀井派内で動揺がある。亀井派は今後厳しい状況にあるという声もあります。
亀井 冗談じゃない。志師会は昇り竜だよ! この間の総選挙だって、亀井派は9人落選したけれど、新人8名元職3名が新たに加わった。自民党全体では、あのとき10人議席を減らしたわけだから、大健闘でしょう。亀井派がゴタゴタしているという話もあるけど、どんな組織だって、1人や2人、変わり者がいますよ。自民党には8つ派閥がありますが、うちと山崎派以外のボスは全部サラリーマン社長ですよ。
大林 亀井先生は、オーナー社長だ。
亀井 そう。だから、1人や2人が私を気に食わないと言ったところで、びくりとするような亀井静香じゃありませ〜ん(笑)。

ちょっとまった、何で俺が小泉総理の軍門に下ったなんて言われるの。軍門に下った、下っていないなんて、くだらない話だ。(亀井)

マスコミや世評がということです。ゆえに私は亀井反論をお聞きしたい。(大林)

「いつでも総裁選には出る」


大林 では、総裁選挙があれば、いつでも出馬の体勢はあると。
亀井 当たり前。派閥の長というのは、原則として総理、総裁を目指すのが宿命なんです。実際に出るかどうかは、そのときの状況を判断しなければならないけども。政界には、立派な人もたくさんいるけれど、亀井静香が総理、総裁になれない欠陥人間であるとは思いません。ニッポンのため、世界のために一国を率いて働く用意はあります。
大林 一国の宰相となる力でけでなく、政界で何千億というお金を集めるルートがあるのは亀井静香だけだ。という評判もあります。
亀井 「ルート」じゃないの。せいぜい年に多くて20万、ほとんど5万円、人によれば4000円という小口の献金を、北は北海道、南は沖縄まで全国各地の中小企業、零細企業から出してくれて、私は政界一の集金力を誇れるようになった。何千万なんていう話があるわけがない。
大林 何千万じゃなくて、何千億といわれていますよ。
亀井 そんなものを亀井静香に献金できるはずがないでしょ。私はいろいろな人から、小口で献金してもらっているんです。大林さんも献金してくださいよ。
大林 私は、せいぜい4000円の献金ですよ。
亀井 (秘書に対し)あ、大林さんが献金してくれるって。5万円の会に入れてあげて(笑)。

「死刑制度には反対だ」


大林 亀井議員の主義主張で非常に興味があるのは、死刑制度廃止論です。今回、初めてこの質問をするのですが。
亀井 死刑廃止なんて、あったり前じゃないの。国家権力が国民の手足を縛って、絞め殺すなんてことは、亀井静香の性に合わない。
大林 私も死刑廃止論者なんですよ。
亀井 大林さんが死刑にならんために、私も頑張って主張しているんだから。
大林 ありがとうございます。感謝します(笑)。
亀井 人間には仏性と悪魔の心が同居している。それが生まれた環境、育ち方によって、悪魔の心が前に出る場合がある。だから、凶悪犯罪を犯した人間は、仏の心を取り戻すための努力をしなければならない。犯罪被害者の遺族にとってはつらいことだけれども、しかし、それに耐えてもらうように国家が努力をしなければ。やられたら、やりかえすでは、パレスチナと一緒だ。報復の連鎖を断ち切ってゆくという努力をしなければ、人類の未来はないよ。
大林 イラク派遣反対と死刑廃止論は、同じ発想から生まれているんですね。
亀井 そう。それに冤罪の問題もある。今の日本の制度では、絶対に冤罪が起きますよ。治安を維持するためには、何万分の1の確率で冤罪もやむなし、という人もいるけれど、そんな人間は人間じゃない。人様の犠牲の上に自分の安全を守ろうとするような人間ばかりでは、この世の地獄ですよ。死刑を廃止した国で、犯罪は減少するというデータはありません。日本やアメリカのように、死刑制度が残っている国ほど、犯罪が増えているんでしょう? 死刑は犯罪の抑止力にならないんです。犯罪抑止のために死刑制度を残そうというのは、極めて安易な考え方。人間らしくない。
大林 警察庁出身の亀井議員ゆえに説得力があります。次にまた怒られそうな質問です。最近、一部週刊誌で、亀井先生の息子さんが交通事故を起こしてしまい、亀井先生が被害者に謝罪をしなかった、という話が出ていましたが。
亀井 息子が被害者の方に迷惑をおかけして申し訳ないと、私もじゅうぶんに思っております。息子は未成年ではありませんが、私の変わりに妻が謝罪に出向き、お見舞いをいたしておりました。
大林 被害者の話によれば、亀井先生の奥さんは、大分いい人、誠意のある人のようですね。亀井静香の妻は良妻賢母なんですね。
亀井 連日、当然、お見舞いに行ったようだけど、大林さん、亀井だけが悪い、死刑にすべきだと行っているの?怒るよ、また。
大林 いや、いや、話題を変えます(笑)。それにしても、最近の先生は、ホントにおしゃれをしてかっこよくなりましたね。
亀井 もともと、かっこいいんだもん。
大林 私もずいぶん長い間先生をウォッチングし続けてますが、以前は髪は立っているし、靴だってぼろぼろでしたよ。
亀井 髪は立っても、大林さんより、かっこよかったんだなあ(笑)。
大林 最期に1つ、日本国民に向けて、小泉に代わって総理、総裁を目指す男・亀井静香からメッセージをぶちかましてください。
亀井 『ラスト・サムライ』で、トム・クルーズが告発していたね。「今、日本人は、美しい魂を失ってしまった」ってね。週刊誌に私のバッシング記事が出るというのも、それを象徴しているんです。イラクで人質になってしまった3人の日本人に対しては、「何であんな危ないところに行ってしまったんだ。けしからん、けしからん」の大合唱でしょ? 一見本当に見えるけど、本当にそうですか。身の危険を冒しても人様のために働こうという人間をなぜ批判するんですか。今の日本人は、イラクの人たちが苦しんでいても、自分たちは安全、ラクチンであれば、それでいいと思っている。逆にイラク人を助けようとする人間を批判している。
大林 多くの無実のイラク人がアメリカ兵によって殺され、いまイラクは悲惨な状況だ。イラク戦争は、大義なき侵略戦争だった。3人を責める前に、そんな状況を作った小泉政権こそ責められるべきなのに。小泉首相と互角に張り合えるのは、冷静に見て亀井静香だけ。どんどん発言してください。

大林高士(おおばやしたかし)

●甲南大学経済学部卒業後、長年ビジネスの世界に身を置き、バブル崩壊後、48歳にしてジャーナリストに転身。ロマノフ王朝の金塊、統一教会騒動、サラエボ戦場取材、オウム事件などで数々のスクープをモノにしている。週刊誌への寄稿は優に500本を超え、その数は他の追随を許さない。

※無断転載を禁ず


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