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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2004.11.7◎Yomiuri Weekly 2004年11月7日
進む小泉「包囲網」
「若手も蜂起、爆発するよ」

反小泉の急先鋒(きゅうせんぽう)、亀井静香氏のボルテージも上がってきた。「小泉首相は間違っている」と断言し、これに呼応する他派閥幹部とも連携を強めている。亀井氏は言う。「もう、全てが動きはじめた。これは地殻変動だよ」


 数々の政局の舞台となってきた東京・平河町の砂防会館。その2階奥、亀井派「志師会」の会長室で、亀井氏は何度も「弱い人のための政治」という言葉を繰り返した。そして、その弱者への視点こそが、小泉首相との最大の違いなのだという。
 1936年、広島県の農村で生まれた。姉2人、兄1人。地元の高校を中退し、上京していた兄(亀井郁夫参院議員)を頼って都立高校に転入。東大経済学部入学後は、キャバレーのボーイなどで生活費を稼いだ。サラリーマン生活を経て警察庁入庁。埼玉県警捜査二課時代は、「剛腕。大事件を狙うイケイケタイプの捜査官だった」(当時を知るベテラン記者)。その後、350万円の退職金を手元に79年、政界入りした。
 強面(こわおもて)で武闘派の印象が強いが、その反面、死刑制度に反対し、「人の人生に等級を付けるのはおかしい」と勲章制度改革にも尽力した。尊敬する政治家は、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラと大塩平八郎。
 「不当にもがき苦しんでいる人たちのために、自分を完璧(かんぺき)に投げ出した。その潔さを現在の政治家も学ばないといけない」
 本命不在の「ポスト小泉」レース。名前が挙がるのは二世、三世の「世襲」議員ばかり。世代交代の波も押し寄せるなか、今や数少ない「たたき上げ」の67歳は、反小泉の求心力を確保することができるか。


「沈む夕日を拝んでも仕方ない」


---現在の小泉内閣を支持するか。


 私は自民党所属の国会議員だから、存在そのものは支持します。だけど、これまで3度にわたって諫言(かんげん)したが、残念ながら軌道修正されてはない。現在も、日本を混迷の世界に導く政治をやろうとしている。政策の中身は支持できない。


---小泉首相のことを「レームダック(死に体の意)」「落ちた偶像」と批判しているようだが。


 首相たるものは、国家を未来に向けて強力に引っ張っていかないといけない。首相就任時には本人もそういう気概を持ち、国民も期待していた。
 しかし、その後、日本をどんな国にしようとしているか具体的なビジョンを示さない。言うのは「改革」という単語だけだ。彼はもはや日本を光り輝く未来へと引っ張っていく存在ではなくなった。だから、「落ちた偶像」と言っている。残影はまだありますが、それは、あくまでも残影にすぎない。

 しかし、亀井氏が反小泉路線を貫くことで、亀井派は抵抗勢力のレッテルを貼られ、人事面でも冷や飯を食わされ続けている。先の人事でも、ポストの要求はほとんど小泉首相に退けられた。同派を離脱した与謝野馨氏の政調会長起用は、「亀井さんへの当てつけ」とみられた。


---9月の内閣改造、党役員人事をどう受け止めたか。


 「全党の知恵を集結していく」という姿勢がないことを宣言したようなもの。こうした議会制民主主義、政党政治を否定した政治を許すわけにはいかない。


---最近、反小泉系の旧橋本派幹部らと会合を重ねているようだが。


 我々としても、歴史に責任を持つ政治をやっていきたい。そのためには同士が、固い決意の下で結束する。これは党派とは関係ない。我々ベテラン、党派の領袖(りょうしゅう)クラスだけでなく、若い人だって蜂起(ほうき)しだした。各派でね。これから爆発していくよ。


---小泉包囲網か


 すぐ「包囲網」などと言われるが、そうではない。未来に向けた政策を断行していく政治的な状況を作ろう、ということだ。その結果として、包囲されたことになるかもしれないけどね。いずれにしても、小泉首相の任期は後2年でおしまい。再選はない。そういう意味では、もはや「夕日」だ。夕日を拝んでいても、いずれ山の端に沈んでいくだけでしょう。
 今国会での所信表明でも、拍手していたのは執行部だけですよ。25年間、国会議員やってるがあんなに拍手がなかったのは初めてだったね。

郵政解散「ネロでもしない」

---焦点の郵政民営化の関門の一つが自民党総務会。総務の一人に就任したが、総務会で亀井さんがどう動くのか注目を集めている。


 間違ったもんは一切認めませんよ。(小泉首相の郵政改革は)具体的な処方箋(せん)がないまま、破壊するという結論だけが先にある。国家を破壊するものですよ。マスコミは「郵政族が抵抗」などと書くが、本当に不勉強だ。郵便局の権利なんて関係ない。国民経済、国民生活の面で、今郵政公社のどこが悪いのか。むしろどこを直していくのかを考えないといけない。


---森派幹部が郵政民営化関連法案が不成立の場合は、小泉首相は「郵政解散」に打って出るとの憶測を流している。


 ご本人が、国家のためにそれがいいと思うのなら、それをやればいい、しかし、そんなね、暴君ネロでもやらないようなことはやりませんよ。


---では、いまの時代に、求められる首相像とは。


 戦国時代なら、いろんな武将が己の権勢欲を満たすため、天下人を目指した。しかし、今の時代においては、自分の名誉、権力欲で(首相に)なるべきではないし、それではなれない。やはり、国民の幸せ、国際社会でどう日本が役割を果たすべきなのかとか、そういう問題意識を持ち、気概に燃えた人間がなるべきだ。


---自身は日本をどういう国にしたいのか。


 お互いの助け合い、思いやり。みんなで幸せになっていくという共生社会を目指す。もちろん、そうした中でも競争はあります。しかし、「競争のための競争」であるとか、「他を敵と思え」という米国的な生活原理では日本人は幸せになれない。米国の競争至上主義をまねしたやり方で、日本の未来は大丈夫だと思いますか。
 小泉政治はまさに、それをやろうとしている。我々はそういうものは認めない。私は弱者と強者を分けるのは好きではない。今は弱くても、明日は強くなれる。そういう政治をしたい。今現時点で弱かったら、「退場しろ。切手捨てる。強者の肥やしにする」という政治はしない。でも、私は鎖国主義でも国粋主義でもないですよ。


---いわゆる「たたき上げ」の亀井氏が、三世議員の小泉首相と比べて勝っているものは何か。


 ほかと比べて自らを語ることはしたくない。ただ、私は生まれ育ちだけではなく、日常生活における心構えが必要だと思う。自分が経済的、社会的にも幸せだからと、そこにしか目がいかないような生き方をしていたら、何も見えなくなってしまう。小泉さんはそうなのでしょうね。
 でも、銀の匙(さじ)をくわえて生まれてきたような人の中にも、つらい人生、もがき苦しんでいる人の気持ちが分かり、そういう人たちの幸せのために政治をやらないといけないと分かっている政治家はいますよ。


---国民は、亀井静香という政治家に、どういうイメージを持っていると思うか。


 人相が悪いと思っているのではないの(笑)。

派閥の総裁候補は1人

 派内では最近、旧渡辺系やベテラン組みの間で、兄弟分の平沼赳夫・前経産相が求心力を強めつつある。平沼氏もポスト小泉のひとりに挙げられ、両氏の関係は微妙になっている。


---平沼氏が、次期総裁選に意欲を示しているが。


 派閥というものは「会長(領袖)が総理総裁を目指す」ことで集まっている。だから、志帥会(亀井派)で2人の候補者がいることはあり得ない。では、それ以外で平沼さんがどうやって目指すのかといえば、それは本人が考えればいいことだ。
 この間、彼が講演で「中2階から屋上を抜けようと思っている」といったと聞いたから、「そんなことを勝手にしたら、屋上から飛び降りることになっちゃうよ」と言ったんだ。「それはねぇ、おまえのためにもならないよ」ともね。彼は黙って聞いていたよ。


---平沼氏とは、兄弟のような関係だとか。


 兄弟のような付き合いだが、そのことと、総裁選の筋道は別の話だ。

---民主党の岡田代表は51歳。自民党内にも、ポスト小泉は平沼、高村氏ら「中2階」組を飛ばして次の世代にとの声もある。


 中2階というのも、どこまでを指すのか分からないからね。


---小泉首相は、総裁任期(2006年9月)を全うできそうか。


 全うできるとか、できないというより、今の政治をそのままやってもらっていては困る。とにかく、小泉首相が今のまま身内で固めて、敵中突破をやろうとしても、確実に無理ですよ。

※無断転載を禁ず


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