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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2005.6.21◎共同通信「マスコミきさらぎ会」
講演
亀井静香代議士講演録

司会

 本日は衆議院議員の亀井静香先生を講師にお迎えいたしました。亀井先生のプロフィールは皆様方もよく御存じでありますので、また公式ホームページでも日ごろの御活躍が詳しく出ておりますので、御紹介は割愛させていただきます。
 亀井先生のホームページの先生のお顔にクリックいたしますと、「郵政民営化問題は民主主義を完全に無視した展開になっており、われわれは、政治家の良心に従って、委員会や本会議で法案否決のため堂々と行動し、何ものにも怯まず闘う覚悟であります。」と力強く語っておられます。皆様も是非クリックしてみてください。
 では、早速御講演に入りたいと思います。先生の本日のテーマは、「通常国会の疑問点」でございます。
 亀井先生、よろしくお願いします。

亀井静香代議士

 御紹介を賜りました亀井静香でございます。久方ぶりにお呼びをいただきました。緊張してまいっております。
 前にお伺いしましたときは組織広報本部長でお伺いした覚えがございます。これは選挙の直前でありました。今日はブロック紙、地方紙の方々がほとんどだということでございますが、我々政治家にとっても国民にとっても、朝毎読の中央紙はもちろん大事でないとは申しませんけれども、やはりブロック紙、地方紙の影響力は圧倒的でございます。私も、朝毎読等に私の悪口を書かれましても痛くもかゆくもございませんけれども、中国新聞や山陽新聞に書かれてしまいますと震え上がって、次はもうおしまいかなと思ってしまうわけであります。
 私自身そういう認識でずっとおりましたので、実はあのときも初めから最後までマスコミ批判ばかりやりまくった記憶がございます。マスコミがしっかりしていないと日本は駄目だという、私の立場から忌憚のないお話をさせていただいたわけでありますが、最後に、今まで苦口ばかり申し上げたがお土産を差し上げますと言いまして、それまでの自民党の選挙広報は全部中央紙だけでございまして、ブロック紙、地方紙には全然自民党の広告は出していなかったわけでありますが、組織広報本部長は全権を握っておりますので、私の権限で思い切って今度の選挙ではお願いをしたいということを申し上げました。共同通信から当時、お土産をもらってよかったと感謝をされた覚えがございますが、以来ずっとそうなっておるはずであります。これは恩着せがましく申し上げるのではなく、当たり前の話でありまして、自民党が選挙を真剣に戦い、国民の方々に政策を浸透させていくためには一番いいメディアを使えばいい話であって、そういう点でそれまで間違っておったわけでございます。
 今日はこうしてお時間をいただきましたが、私に対してどういう興味があってお呼びになったのかちょっと分からない点もありますが、現在、私は傘張り浪人をしておるわけでございまして、そういう私を呼ばれましても、堀端で堀の深さを測っておるわけではございません。ただ、結果としてそうなる可能性がないわけではございません。こうした現在の政治情勢であろうかと思うわけでもございます。
 簡単に言いますと、国民のだれも、各社の調査でもほとんど下位にしかない郵政改革を総理が30年来の夢だからといって今国会でしゃにむにおやりになる。2年前に御本人が郵政公社にするということでされたわけでありまして、総裁も自ら選ばれて任命をされ、これが今一生懸命やっているわけです。それはいろんなことがあるかもしれませんけれども、かつての国鉄のように国民から改革をしてくれという悲鳴が上がっておるわけでもない。そういうときに、御承知のように2年後には見直し規定があるわけです。したがいまして、4年間の郵政公社の実績をきちっと検証して、直すべきものはきちっと直す。そのときにやはり民営化しなければならぬということであればすればいい話であって、それを御自分の任期があと1年しかないからということでしゃにむに、また総裁選挙において公約にしたんだから反対するのはおかしいじゃないかと。
 驚くなかれ、マスコミの論説の中にまでそういうことがある。毎日新聞はないでしょうね。朝日新聞は書いています。読売は書いていません。産経もそういう意味のことを書いていますか。しかし、民営化の中身については、健康体の体を外科手術をして4つにばらばらにしてしまおうという、事実上郵便局は存在しなくなるようなことを公約に中身で掲げて戦われたわけでも何でもありません。民営化そのものに対して反対する者はだれもおりません。
 私だって、かつて国鉄の民営化のときには三塚委員会でつばを引っ掛けられながらも、党内にも、国鉄のままでいい、あるいは民営化と2つありましたけれども、私は民営化という方向で突き進んだ男であります。どうした方が国民のためにいいのかという視点からこれは考えていけばいい話であって、それを民営化でいくというお題目だけ掲げたからといって、中身を党とも全然協議をされないで、党の意見を無視で、合同部会でも少数、政審でも圧倒的に少数、そういうものが総務会に掛かって、提案だけは認めるというようなところに無理やり持っていかれて、現在法案が国会に掛かっておるわけであります。
 国民が別に望んでいないことに手を付けられたわけでありますが、結果によっては日本の政治が大きく動きます。国民が望んでいないことに手を付けられたんです。付けられた以上は、これが右か左かによって日本の政治は大きく変わっていくと思います。通る算段はございませんけれども、万一成立をするようなことがあれば自民党は次の選挙は衆参ともできません。東京など都市部はどうにかなるだろうという意見もありますけれども、都市部においてもどこにおいても法案の中身がもう無茶だと。どちらかというと小泉さんに願いを達成させてやりたいと思っておられる方ですら、いろんな調査ではほとんど、もうちょっと時間を掛けてやれということです。何がなんでもこの国会でというのは本当にわずかな方々の支持しかないわけであります。そういう中で今の法案をしゃにむにもし成立することがあるとすればどういう場合か。
 簡単です。解散、公認、これを恐れる。ポストを欲しがる。今執行部が使っているのは三種の神器かもしれませんね。三種の神器だと思って使っておるわけでありますが、その効用によって大幅な裏切りが起きた場合だけこれは成立します。今まで地元あるいは永田町でこの法案について発言をしておったのと全く逆の投票行動を取るということであれば、そんな裏切った議員なんて次の選挙でだれも支持をしないのは当たり前であります。また特定郵便局は、それだけでは通す力はありませんけれども、裏切った者を葬り去る力だけはあります。小選挙区制度だからです。そういう状況でありますから、成立した場合にはどういうことが起きるか明らかであります。もう自民党の未来はないということであります。いつ選挙が行われてもそういうことになります。
 一方、自民党の国会議員が己の良心に従ってきっちりとした今後対応をしていった場合は、絶対に衆議院は通ることがありません。今、表での数でありますが、108名以上おりますけれども、45名が反対をすれば否決であります。また、否決の票を入れないにしても、欠席をしたいという議員が2、30名現れますと一挙にボーダーラインは下がってまいります。今まで言っていた立場上、まさか賛成できない、やはり欠席しちゃえということになりますと45のボーダーラインはぐっと下がってくるわけでありますので、楽々否決の状況が私は生まれてくるであろうと思います。だから先ほども言いましたように、三種の神器でもない神器を使ってプレッシャーを執行部は今一生懸命掛けまくっておるわけでありますけれども、こんなものは通用いたしません。
 だって皆さん、法案が本会議で否決されたら解散をするとおっしゃる。できますか。今、公明党は賛成しなかったら次の選挙で応援しないなんて言っていますが、公明党としてはこの法案を成立させたいためにプレッシャーとしてやっているだけの話で、いざ否決という事態になってしまった場合、ではそれに基づいて小泉さんが解散をすると言ったら、ああ結構ですと言えますか。公明党の全国の小選挙区は全滅します。間違いなく全滅するでしょう。そんなことを公明党が認めるはずは天地がひっくり返ってもあり得ない話であります。
 そういう中で、自民党内のあの森さんのところも、森さんが賛成するかといったら絶対しません。私と森さんというのはおかしな関係で、けんかしいしい兄弟以上に仲がいいと言われるそういう関係でありますが、絶対にこれは賛成しません。今の段階では言いませんよ。そんなことを言ったらおどしが効かなくなると思いますから、御本人は今の段階では反対だ、絶対阻止するなんておっしゃいません。成立させる方向にあの方は協力しているわけですから言いませんけれども、ひとたび否決したとき、森さんを初めあの森派のだれが賛成するんですか。だれも賛成する者はありません。いや、山崎さんのところがある。これも絶対にいたしません。私は党内におりますからよく分かります。
 しかも、この時点ではひとりぼっちの敗軍の将です。今はマスコミあるいは支持率に支えられて将軍のような立場でいらっしゃいますけれども、否決された途端にあの方は敗軍の将になられる。しかも、党内だれ一人支える者がいない状況になってしまいます。そういう状況で、友党である公明党も反対する中で解散ができるかなんて、これは言うだけの話であって、おどしのためにだけ言っておられるだけの話であって、あり得るはずがない。こんなことは国会議員も代議士もばかじゃございませんから、もうちゃんと判断ができていくわけであります。
 また、こんなことはありませんけれども万々一衆議院を通過することがあるにしても、ありませんけれども、参議院ではもう登ることが不可能な断崖絶壁が小泉さんには待ち受けています。18名でいいんです。うちの村だけで18名おります。全部がというわけにはいきません。うちの中のことですから固有名詞を挙げるわけにはいきませんが、2、3人はこぼれることがあるにしても、うちの村から12、3人こぼれることは絶対にありません。これは絶対にありません。参議院では解散するぞというおどしが効かないんです。そうでしょう。どうやって効くんですか。効きませんね。衆議院がもし万々一間違った結論を出せば、それを是正するのが良識の府参議院の務めだというように彼らは覚悟をしておるわけであります。もちろん我々は参議院の手まで煩わせるというつもりはございませんけれども。
 そういうことで、では否決をされた、解散もできない、どうする。これは小泉総理御自身がお考えになればいいことであって、総裁選で敗れた亀井静香がああだこうだ言う立場ではございません。そういう意味で、自らが地に乱を起こされたわけであります。だれもやってくれと言っていないわけですから、言っていないことを自らが取り上げて乱を起こされたその結末については、自らがもちろん責任を負われるだろうと私は思いますけれども、今の状況をかいつまんで申し上げればそういう状況であろうと思います。
 時間もございませんので、いろいろと申し上げたいことを申し上げると、皆さん方は特に地方の方々が多いわけです。私も地方ですけれども、東京だけは次から次に高級マンション、ビルも建つ、オフィスビルも建つ、すごい東京です。銀座でこじきをしていると糖尿病にかかってしまうという結構な東京かもしれません。人と金と物が東京に集中している。日本の歴史でもこんなことはありません。江戸時代だって、将軍のいらっしゃるこのお江戸にそんなことはなかった。日本という国は北海道から沖縄までバランスが取れた形の中で生きてきた国家でありますけれども、今、地方は御承知のようにからからの状況になってきています。
 この4年間、改革といって何があったんですか。皆さん方は違うかもしれないけれども、中央紙のほとんどというのは改革改革と持ち上げて、こんなことを言ったら大変なことになるぞと言うと、私なんかのようなこんなにおとなしい男に「抵抗勢力」なんというおぞましい名前を付けてたたきまくる。4年間、皆さん何があったんですか。国民所得は、デフレですから実質成長率で計算すれば少し上がったかもしれない。この4年間で名目成長率でどれだけ増えたんですか。失業者はどれだけ改善したんですか。中身についてはいろいろありますけれども、今特に深刻なのは、かつてないような若年層の失業が極端に増えてきてしまって、そういう人たちが失業しているという意識すら持たなくなってしまっている状況が非常に激しい状況で今進んでいます。
 大企業がリストラをやっている。かつての経営者のできないことを今の経営者は平気でやっています。かつては松下幸之助にしてもだれにしても、自分のところで働いている従業員をどう幸せにしていくか。ましてや、首にするなんというのは経営者の恥だった。昔の経営者は、下請、孫請、関連のところがうちの仕事をしていてみんな喜んでくれている、そういうことに経営者としての生きがいを感じておったんじゃないですか。ほとんどの経営者はそうです。
 だから商品も売れなくなることもある。その場合は、今の経営者はさっとリストラをやるけれども、解雇をしないんです。新しい部門に、また商品開発に物すごいエネルギーをつぎ込んで開発に金を掛けて、社内教育をして、その部門に配置転換をして、リストラをしないで済む努力を必死になってやったんでしょう。下請、孫請に安い値段で、嫌なら仕事は出さないと言う。今はほとんどがそうです。あのトヨタだってそうです。みんながそうなってしまっている。昔の経営者はそんなことをやりましたか。うちの仕事をしておるんだからそれなりにもうかるような値段で出そう、これが経営者の誇りだったんです。
 今はそうじゃありません。本来なら下請、孫請の懐に入る金を自分たちが召し上げて、そして史上最高の利益を出している企業が上場企業の3割はあるというような状況になっているでしょう。トヨタだって1兆2000億もうけた。では、下請、孫請がハッピーですか。私はこの間、奥田さんにも言った、ハッピーなのかと。一次下請まではいいけれども、2次、3次下請だって、仕事はあるけれどももうからないという状況が進んでいるじゃないか。大企業が何千億とそんなにもうかるのなら、少しぐらいはお裾分けをしてやるということをなぜしないかという話でしょう。そんなものを積み上げてどうするのか。それよりも下請、孫請の体質を強化して、そこで技術革新をどんどんやっていって、そして世界に冠たる商品を出していく、そうした力を付けていくのが企業の在り方だと私は思います。 けれども今はそれをやらない。安くつくらせればいい。国内でこれ以上無理強いが無理だというなら、今度は外国に工場を出しています。そういうことで今日本は激しく空洞化が起きていますでしょう。こうして若年層を中心に一生ここで働いてもいいなと思うようなきちっとした職になかなか就けない状況が一般的になってきておるのが私は今の日本の状況だと思う。一部の大企業が史上最高の決算をしておるから万歳万歳というわけには私はいかない。
 問題は、今から10年、20年あるいは50年、1世紀先へ向けて、我々には油も出なければ鉄鉱石も出ない。資源も何もない。しかも台風が襲ってくる。地震が起きる。こんな島国で我々はどう生きていくか。我々が過去どう生きてきたかということを我々が教師になってやるしかない。
 日本はどうやって生きてきたんですか。幸い日本人のDNAが世界の他の民族に比べて劣ることがない、むしろ優れていたということによって、マンパワーを爆発させるということをやってきて、それで日本は生きてきたんじゃないですか。これは教育においてもしかりです。あるいは民間における企業内教育、いろんな社会教育を含めてそうです。それが今は、その我々の生命線である人間を人間扱いしてその能力を爆発させていくということをやらないで、安く物をつくっていく道具扱いを今はしてしまっています。こんな日本に私は未来はないだろうと思います。
 そういう中で起きているのが、御承知の市場原理、市場主義、グローバリゼーションというようなアメリカ型社会にとうとうと進んでいってしまうんです。弱肉強食というのは当たり前だという価値観が普遍化してきておるというこの状況、それで社会が活力化するならいいじゃないかと言う人がいる。怠け者だから落ちこぼれると言う人があるかもしれないけれども、しかし怠け者じゃなくてまじめにやっていてなお落ちこぼれるような社会でいいのかどうかという問題であります。セーフティーネットを張ってあるのだから、落ちこぼれる連中は政府が面倒を見てくれればいい、セーフティーネットで失業保険、生活保護で面倒を見ればいいんだという考え方です。非常に割り切った考え方で残念ながら今は政治も社会も進んできておると私は思います。
 そういう中で、三位一体なんてだれが考え付いたのか、よく考え付きますね。三位一体とかなんとか、ちょっと見たら抵抗できないようなスローガンを考え出しておりますけれども、去年の暮れに市町村長が私の部屋に来た。何をしに来たんだと聞くと、武道館で三位一体推進の大会があるので来ましたと。賛成しているのかと聞くと、反対ですと言う。私の部屋に来た者は全部反対。反対なのに何を来ているんだと聞くと、出席しないと交付税がもらえなくなるから仕方なしに来ているんですとみんな言うんです。おまえたちふざけるな、こんなことで自分の市町村が生きるか死ぬかというときに行動を取っていいのか、出ていけと、私はこういう性格ですから地元の市町村長に言った。
 そうしたら1週間もしないうちに今度はまた私の部屋に来て、何をしにまた来たんだと聞くと、中四国の道路整備推進大会に来いというものですから来ましたと。この間は補助金は要らぬという大会に来て、今度は補助金をくださいという大会におまえたちは来るのか、いいかげんにしろと言って雷を落としたんです。そうでしょう。
 三位一体、もう義務教育は4500億円を切ってしまいまして、またあと4000億切るというんです。権限を地域に与えるのは当たり前のこと、いいことです。何も霞が関にお伺いを立ててやる必要はない。しかし、それならちゃんとそれだけの財源をそれぞれの地域に手当てをする工夫をしなければなりません。それをやって初めて地方分権になるのであって、今のように、権限を与える、あとは勝手にやれという話でしょう。東京は喜びますよ、石原知事なんかは権限が増えればいいという話ですから。
 全国7府県、こんなことをやられたら大変だという悲鳴を上げていますけれども、7府県では私はないと思います。そういうまやかしのことが、改革という名前さえ付ければ、それによって被害を受ける人たちまでが抵抗しない。皆さん方、論説で少し書いてくださいよ。河北新聞は書いたことありますか。余りにもそれでは購読している人たちはかわいそうじゃないですか。義務教育だってそうでしょう。金のあるところはいいが、ないところはどうするんですか。自分のところで増税措置をするにしても、人もいない、会社も企業もない。うちの田舎なんか、イノシシ1頭幾らと掛けて払ってくれればいいけれども、そうでなければそれに代わる財源を自ら調達することはできない。教育レベルを落とすしかなくなってしまうんです。
 そうした深刻な問題がどんどん起きていくことに対して、是非私は、ブロック紙、地方紙の皆さん方には、地方とは何か、地方が生きていくにはどうしなければいけないのか、今なされている政策がその観点からどうなのかということをもっともっと厳しくやっていただかなければ。そんなことは中央紙なんか言いっこありませんよ、地方なんか関係ないと。読売だって朝日だって毎日だって、どうせ中国新聞や山陽新聞にかなおうと思っていないし、地方は関係ないと、それに近い感じでしょう。
 こんなことを言い出すと、またマスコミ批判にばかりなって時間が終わりますから、これは終わりにいたしますけれども、今は本当に改革という名においてまやかしなことがどんどん行われている。はっきり言いましょう。この4年間で何か良くなったことはありますか。経済が良くなったといっても、あのときは株価が1万4500円だったでしょう。今は1万1000円です。未来に向けて力強いエネルギーが経済に生まれていないから、株価だってこうなってしまうんです。当たり前の話だと思います。
 結局、原因は何かというと、私も自問自答します。皆さんはどう考えられますか。結局、我々の魂、心が萎えてしまったんじゃないですか。少々の小金がたまったばかりに、戦後60年どうにか平和が続いてきたために、簡単に言うと人間がふやけてしまった。最近はファッションまでふやけようということで、クール何とかということをやってしまっています。ホームレスか何かさっぱり分からないような格好をして国会の中をうろちょろしているのがいいことだと。そんなことを省エネでということなら、冬になったら暖房を付けないからみんなオーバーを着てこいと、そういうことをやるのかという話です。ホリエモン効果かどうか知りませんけれども、今、日本というのは本当に溶けて溶けて流れていっている状況だと思います。
 マスコミの方の関係で言うと、マスコミ界も恥を知らなければいけません。私は香田さんが人質として捕まったとき官邸に入って小泉さんに言った。私はイラク派遣を反対した男だぞ。あなたは派遣した。あなたが派遣をした自衛隊は、今世界一弱いと言われるオランダ軍に守られて土木工事ばかりしておるけれども、その自衛隊の目の前でおっちょこちょいかしらないけれども我が同胞が捕まってあすにも殺されようとしているじゃないか。あなたが派遣した自衛隊は土木工事ばかりしていていいのか、どうなんだ、何で救出命令を出さないんだと。
 皆さん方はそう思われませんか。どのマスコミがそんなことを言いましたか。どこも言ってないじゃないですか。私は派遣は反対しました。しかし、現に自衛隊が行って、米軍はそういう活動をやっているじゃありませんか。イラク政府がそれは勘弁してくれと言えば別だけれども、イラク政府に了解さえ取れば救出命令を出して何がいけないのですか。我が国の国内用にやらせるんですか。自衛隊の任務は土木工事するのが任務ですか。基本的任務として、日本国民の生命、身体、財産を守るために自衛隊があるのと違いますか。目の前でそういう状況が起きているときにそういうことでいいのかと言ったら、むにゃむにゃ何も答えない。いかぬともいいとも理屈もおっしゃらない。
 政府の勧告で今のサマワに特派員が一人もおらぬじゃないですか。そうでしょう。安全だからと言って自衛隊を出した。その安全だと言われるサマワに何とマスコミが一社も特派員を出していない。こんなことを言うと、亀井はまたマスコミから総袋だたきに遭って悪い記事ばかり書かれますけれども、あえて言わせてもらう。マスコミの恥じゃありませんか。第1次世界大戦であれ、第2次世界大戦であれ、朝鮮戦争であれ、自国の軍隊が派遣されている場合は必ず特派員が出ていっているんです。そして自国の軍隊の活動状況を自分の国に報告をしているんです。国民に報告をしているんです。それがマスコミの責任じゃありませんか。サマワに一人もおらぬでしょう。それで論説には、派遣は延長すべきだ、いや打ち切るべきだと、特派員も出さないでおいてそんなことを堂々と論説で書いています。皆さん方の新聞は書いていないかもしれませんが、中央紙は少なくともそれを書いていました。今の日本人はそういう意味で最低限の誇りを失ってきているのだと私は思います。
 また、今は靖国問題がいろいろと論議をされております。現時点で言えば、要は外交的配慮をするかどうかという問題だと私は思っています。本来、お参りすることについて他の国がとやかく言うべきことではない。総理が祖国のために尊い命をささげられた方々の御霊をお祭りするためにお参りされるのは当たり前の話であります。
 例えて言えば、例えが悪いと言われるかもしれませんが、自分は浪花節が好きだと、ところが隣近所の人はオペラしか音楽じゃないと思ってしまっている。これは間違いなんだけれども。浪花節を聴いたら身の毛がよだつような人ばかり隣近所に住んでいるときに、何で悪いんだ、おれの権利だ、好き勝手だと言って窓を開けて堂々と一家の主が浪花節をうなるのがいいのかどうか。別にそれ自体悪いことではないけれども、結果として女房や子供が近所付き合いできなくなる、隣近所の不理解でそういう状況がもしあるとすれば、これは一家の主として戸を閉めてそっと歌うとか、隣近所へのいろんな配慮をするのが私は一家の主としては当たり前のことだろうと思うわけであります。
 しかし、このことに関して非常に残念なことが起きております。靖国神社からA級戦犯を分祀したらいいということを自民党や国家の有力者までがどんどん言っています。マスコミの中でもそんなことを言っています。名前を挙げればたくさんいるから言いませんけれども、これが本当に皆さん正しいと思われますか。本当に正しいと思われますか。やっていいことだと思われますか。
 中国はA級戦犯を合祀しているから反対しているんだと言っているのだから、A級戦犯を外すことによって総理が参拝できる環境をつくればいいじゃないかと言っている。正しいですか皆さん。後で質問のときに教えてください。もしそういうことをやるとすれば、総理が靖国参拝されるか参拝されない以上の大きな問題だと私は思います。まさに中国の歴史認識に屈服をするということです。
 勝者が敗者を裁いたことは歴史的事実でしょう。そのときの法律が、かつて昔からお互いに守ろうよといって決めておった法律に反しておったかどうかということで裁判するならまだしも、平和に対する犯罪とか新しく法律をつくって、負けた者を一方的に断罪したことは歴史的事実でしょう。この事実を否定できる人は私はいないと思います。
 この間の戦争、私はやってはならないと思います。だけれどもやってしまった。しかし、この間の戦争が日本だけにすべて責任があるのか。けんかだって同じです。先に殴った方が悪いかもしれない。真珠湾攻撃だって、あれはあれで間違いで遅れたというけれども、そんなことは別として客観的には宣戦布告なしに攻撃してしまっている。逆に言いますと、先に手を出したからそちらが全面的に悪い、そんなことで判断するのだったら裁判など開く必要ないじゃないですか。この間の裁判がそういう意味で軍事裁判として行われたということは間違いないです。
 そこで貫いた、勝者が正しく敗者が間違いだというその前提に立ったそれを、勝者である者がそれを主張するのは当たり前かもしれません。それをどうこうするわけにはいかないが、我々がそれをなぜ認めなければならないのか。認めてないじゃないですか。サンフランシスコ条約で認めたというのは、あの判決に基づく処分についての損害賠償等を要求しないという意味でしょう。効力を認めたということである。そうでしょう。
 だからゆえに、A級戦犯として終身刑の判決を受けた重光さんは外務大臣になったじゃないですか。我々が外務大臣にしたんじゃありませんか。また、賀屋興宣さんは法の番人である法務大臣になられたじゃないですか。これも我々がしたんじゃありませんか。戦犯として引きずり出された岸さんは総理になったじゃありませんか。処刑された方々にもこの大戦で尊い命をささげられた方々と同じように遺族年金を差し上げることにしたじゃありませんか。違いますか。したじゃありませんか。
 我々自身が軍事裁判について、やられたことについて損害賠償を求めないとか、その効力について条約のときに認めたことと、中身について戦勝国が正義で我々が悪だということを認めたわけではない。重光さんは終身刑です。東条さんは死刑です。こんなことを言ったらおかしいですけれども、こんなものは判決の程度の差だけじゃありませんか。終身刑は復権にして外務大臣になっている。死刑判決の者はその御霊を靖国神社に祭ることすらいかぬなんということを我々が今この時点で言っていいんですか。そんな千鳥足なことを言っておるから、中国から侮蔑され、韓国からもなめられてしまっておる今の状況が生まれておると私は思います。
 そういう意味で、今の日本が溶けてきているというその象徴的なこととして今申し上げましたように、靖国参拝に絡んで言ってはならぬことが堂々と政治家ベースでもマスコミベースでも国民の中でも言われてしまって、どうにか目の前のことを波風が立たないように糊塗するにはどうしたらいいかという極めて安易な便宜主義であります。
 そういう意味で、我々日本人のまさに心が萎えてきているこの状況の中で郵政国会を迎えていくわけでありますけれども、私は小泉さんが代わったからといって日本がぱっとオセロのように再びすばらしい美しい民族の魂を取り戻すとは思いません。なぜかと言えば、小泉さんが総理として生まれたのは、この20年来、我々が自らの魂を捨て去っていくという大きな流れの経過の一つとして小泉総理が生まれたんだろうと私は思います。それを小泉さんがこの4年間加速をしていったということであろうと思います。そういうことでございますので、今後我々が一総理をどうこうというよりも、加速する状態はこれを直さなければいけないわけでありますが、どうやって生き生きとした魂を取り戻していく作業をやっていくか、極めて困難なことに今直面をしておると思っております。
 一応時間が参りましたので、あとは皆様方から、勝手なことをほざいているけれども、ひとつ亀井、こういう問題はどうなんだと御指導賜れば非常にありがたいと思っております。
 ありがとうございました。(拍手)

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