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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2005.10.1◎月刊BOSS10月号
nterview
亀井静香 自民党元政調会長に聞く
さらば自由民主党
さらば小泉純一郎

小泉首相はおかしい


---8月8日、参院本会議で郵政民営化法案が17票差で否決されました。もともと大差で否決されたら解散はないとの観測もありましたが、結果は、かねてから小泉首相が言っていたように解散・総選挙です。この決断についてどう見ていますか。


亀井 常識的に考えれば総辞職でしょう。ノーマルな人なら当然そうします。しかし、小泉さんの総理になられてからの行動、そしてこのたびの行動を見ると、ノーマルな判断を求めても無理なことがはっきりしましたね。こんなことがまかり通るということは、日本は異常事態であり、非常事態ですよ。


---小泉首相は今度の総選挙は郵政民営化を巡る選挙となる、と言っていますが、実際にはこの4年間の小泉政治そのものを問うものになりそうです。


亀井 郵政がいまのままでは困るからどうにかしてくれ、という国民はほとんどいませんよ。いてもせいぜい1%か2%。それよりももっと大切なことがいっぱいあるわけです。
 景気がよくなったとは言うけれど、これは一部の強者がうるおっているだけのこと。中小企業や地方は大変な苦労をしています。福祉はどうする、テロ対策だってどうするのか。あるいは外交だってまったくうまくいっていない。そういうのをテーマに戦うべきです。
 それなのに郵政解散なんて言っていたら、国民は呆れますよ。そんなことが選挙のメインテーマだなんていったら、自民党は見捨てられてしまう。そんなこともわからず、郵政の問題で解散したからといって、郵政民営化是か非かを問うなんて、ノーマルじゃないね。


---亀井さんから見た、小泉さんの4年間の功罪はなんでしょう。


亀井 「罪」と言って、切って捨てるのはどうかと思いますが、結局小泉さんは、人間の幸せとは何か、ということをまったく考えずに、あらゆる政策をやってきたと思いますね。だから改革、改革とは言いながら、それが国民の幸せにつながっていく保証がまったくない。単なる思いつきで学者や文化人が象牙の塔の中でつくってきたプランを、改革と称してやってきた。その結果、この4年間、何もいいことがなかった。
 この間に、日本人の人心がどれだけ荒廃したか。人間を大事にしない政治をやったんだから当たり前ですね。犯罪は増え、自殺者は3万1000人にもなる。一部の強者は弱者を食って高笑いをしているけれど、日本を支えてきた中間層は下へ下へと引きずられている。日本には本来なかった現象が、ここ4年で急速に起こってきた。
 一方、外交では米国の51番目の州以下の状況と揶揄されるほど、米国追従になってしまっている。何より、平和を守るというのが日本の国是のはずなのに、米国のしかける戦争に巻き込まれて自衛隊が妥協し、平和を守る、二度と戦争はしないという強い決意を放擲してしまっている。それでいながら中国、韓国の歴史問題に対する批判にきちっとした対応もできていない。
 靖国神社に参拝して中国、韓国との関係をむちゃくちゃにしておきながら、A級戦犯は犯罪人だという。日本はサンフランシスコ講和条約で、東京裁判の判決の効力は認めたけれど、A級戦犯を犯罪人として認めたことは一度もない。犯罪人を祀っているとしたら、靖国に参拝してはいけないでしょう。こうなるともうわけがわからない。
 結局、日本人の精神を総理以下がずたずたにしてしまった。それが私は非常に悲しい。これも4年間、(総裁選で)私に力がなかったからこうなってしまったんです。


---敢えて「巧」を挙げるとするとしたら。


亀井 政治に対する国民の関心が上がったことは確かですよ。ただ関心の持ち方が国家にとってマイナスの方向のようだから、巧と言えるのか。あとは改革の気分をつくってくれた。だけどその中身となると、強者が弱者をいじめるものだから、はたして巧と言えるのかどうか・・・。


---最初から小泉首相はそういう人だったのでしょうか。それともこの4年間で変わってしまったのか。


亀井 前はいい純ちゃんだった、ナイスガイだったんだけどね。権力は怖いですな。こういうのは他山の石とするべしです。

キャスティングボード


---ところで、小泉首相は、7月の衆院本会議で民営化法案に反対した37人を公認することはないと言っています。この人たちが無所属で戦うのはむずかしいと思うのですが。


亀井 小泉さんは、我々をつぶすと言っているんですから。イギリスで小選挙区を導入した時、いちばん最初にやったことは反対派の粛清だったそうです。小泉さんはそれを参考にしているかもしれないですね。
 そういう事態に対して我々が自民党を愛していますということを念仏のように唱えていても、いいのかという問題はありますね。我々は自民党を追い出されるようなことをした覚えはありません。堂々と主張すべきことを主張してきただけですから。
 だけど選挙戦の中で、国民に対して明確なメッセージを発するには、無所属では手足を縛られてしまいます。ではどうするか、についてはこれから検討します。


---仮に「造反新党」が出来たとしても、選挙結果によっては、結局、手を握り合っていまと同じ様な形になるかもしれませんね。


亀井 小泉さんがトップにいるままではありえない。それは民主党と結ぶよりむずかしいでしょうね。
 ただ常識的に考えれば、次の選挙で自民党が過半数を取ることはありえない。反対票と投じた37人を公認せず、対立候補を立てるといっても、いきなり立候補して勝てるほど甘いものではない。邪魔することはできても、むしろ民主党を利するだけのこと。公明党にしたところで、今度の解散は痛手でしょうし、恐らく議席を減らすことになる。そうなると、自民と公明を合わせたところで過半数に届かない。
 かといって、民主党が単独で過半数に達することもありえない。結局、皆すくみあがってしまう。その中で、我々はキャスティングボードを握るということは間違いない。それを見据えながら、きちんと理念をうち立ててやっていく。数合わせの政権をつくる気はありません。


---というと政界再編もあり得ますね。


亀井 だってどこも過半数を取れそうにないんですから。いろんなことが考えられます。


---亀井さんが今後、新党を立ち上げるケースが出てきたら、何を理念としてかかげますか。


亀井 日本らしい日本をつくる、美しい日本をつくる、ということです。これは綿貫(民輔)さんも共通理念として持っている。経済の仕組みだけでなく、我々の生活そのもの。そういう政治を目指していくということですね。

あらゆる可能性を排除しない


---その場合、基本政策で、これだけは盛り込みたいというのはなんでしょう。


亀井 地域を大事にする。東京も大事だけれど地方も大事。それと大企業も大事だけれど、中小零細企業も大事。それに農漁村。
 日本の、北は北海道から南は沖縄までの、各地の営みを大事にする。幸せになりたいなら東京に出てこい、なんていう政治をやるつもりはない。地方重視、社会的・経済的弱者が強くなっていく社会。社会保障的にそれをやるんではなく、弱い者が強くなっていく。そういう政策を打ち出していくつもりです。


---新党ができた場合、造反した37人以外にも参加する人はいるのでしょうか。


亀井 衆院本会議で棄権に回った十四人の中にも我々の仲間になる人がいるかもしれないし、賛成した人の中にもいるかもしれない。何しろ、郵政民営化に関しては、信念と違う行動を取った人もたくさんいますよ。それに郵政はもう決着したから課題にしませんし。我々の考えに賛同して、まったくの新人だけれど、一緒に行動をしたい、自民党の公認候補のいるところに出たいという人さえいますからね。


---仮に新党で戦う場合、大事なのは党首をどうするかです。それによって風の吹き方が変わってきます。亀井さんや綿貫さんではなく、あっと驚くような人が出てくることは考えられる。


亀井 あらゆることが考えられるでしょう。我々は自分の名誉欲のために行動しているわけではありません。国民が我々の政策・理念を受け入れやすい形を当然のことでしょうね。ただ現段階ではまだ新党つくることを決めているわけではありません。だけど可能性としては、なんでもある。


---亀井さんは石原都知事と近いと見られていますが、石原さんを担ぐという可能性はどうですか。


亀井 あの人のことはようわからん。国会議員を辞める時も、その前日に初めて打ち明けられたし、都知事選に出馬する時もそうでした。誰にも相談しないで決めてしまう。だから今回もわかりません。だだいまのところあの方と連携して新党というところには入っていません。


---選挙後の連立を巡って絶対こことは一緒にやれない、という組み合わせはありますか。


亀井 もちろん、自民党が小泉総裁のままであれば一緒にやることはありえません。あとは、政策ですよ。かつて、「自・社・さ」政権の時代もありました。あれは、村山(富市)さん、野中(広務)さんが胸襟を開いて話し合い、本気で日の丸・君が代、安保を認めるという点で合意した。その話がついたから成立したわけです。


---いまの民主党と政策協定を結ぶとしたら、どこに問題点がありますか。


亀井 いまの小泉さんは、自民党ではなく民主党の政策をやっているんですよ。我々はあくまで、自民党が大事にしてきた政策、すなわち、繰り返しになりますが、国を大切にし、地方を大切にし、中小零細企業、農村・漁村を大切にする、この原点はいまのような時代だからこそ必要なことだと思います。それに対して協力してくれるパートナーを求めていきます。民主党の中には、小泉さん以上に外資に支配されてもいいという人もいますから、こういう人と手を結ぶわけにはいかない。

歴史が全て評価する


---国民の声は、亀井さんのところにはどう届いていますか。


亀井 今日も地方の県会議員が、新党でやればいいじゃないですか、もうすぐ県連つくりますから、と言ってきましたよ。まあまあ、そう先走りなさんな、となだめましたけれど。まだ決めたわけではないからと。
 いまの自民党はね、メカニズムがしっかりしていて、ボタンを押したら始動して選挙に勝つ、というようにはなっていませんよ。人間的な信頼関係で結ばれて選挙を一緒に戦うわけです。心の通っていない県連なんて、何の意味もありません。


---亀井政権をどう考えています。


亀井 よく聞かれるんですが、私は自分が天下人になろうと思ったことはありません。総裁選に立候補した時だって、1回目(4年前)は、ああいう経済状態のときでしたから、緊急経済政策が必要だった。閣議決定までしたのにつぶされていたから、それを私がやるしかない、とのつもりで立候補しています。
 2度目(2年前)は、堀内(光雄)さんが立候補を取り止めた。といって小泉さんの政治に同調するわけには行かない。それで立候補しただけのことです。


---今、小泉さんにひと言あるとしたらなんですか。


亀井 「いいかげんにしなさい」のひと言です。政権から何から、全て、いいかげんにしなさい。歴史が見ています。
 政治家というのは歴史に堪えることをやらなくてはいけない。歴史に堪えることをやっていれば、その時は国家に貢献できなくても、長い目で見たら、必ず国家に貢献しているんですよ。
 一見、華やかでその時には政治を動かしているように見えても、自分の欲望だとか、思い上がりみたいなことでやったことは、歴史の上で否定されますよ。

※無断転載を禁ず


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