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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2006.4.15◎毎日新聞
近聞違見

「魂」を新キーワードに


 以前、政治家は一般人より言葉に敏感、と書いたところ、読者から批判のメールが届いた。小泉純一郎首相の国会答弁にしろ、最近の政治家の言葉は浅く、貧しい、というご趣旨である。  もっともだ。ただ、言葉に敏感というのは、必ずしも質の優劣ではなく、時代・社会が求めているものに、いかに反応するか。つまり感度の問題だ。
 そのことを改めて思ったのは、12日夕、都内のホテルで催された〈国民新党・前進の集い〉で、綿貫民輔代表(前衆院議長)らのスピーチを聞いたときだった。
 立錐(りっすい)の余地もない、の表現そのままに、会場を埋め尽くした参加者(主催者発表5000人)を前に、綿貫は、
 「ジ(自民)……」
 と言いかけて笑わせ、
 「きょうは興奮しています。みなさん、国民新党は魂の政党です。私の長い政治歴のなかで、こんなうれしいことはない」  と声を張り上げた。〈魂〉という古風な言葉が突然飛び出す。だが、違和感はない。むしろ、新鮮に響く。ついで立った亀井静香代表代行(元自民党政調会長)、長い亀井節の出だしは、
 「みなさん、日本は変わっていきますよ。美しい日本人の魂を取り戻す。やりますよ。来年の参院選、われわれは間違いなく王手をかける……」
 またも〈魂〉である。駆けつけた来賓も、綿貫、亀井のスピーチが伝染したかのように、田中康夫新党日本代表(長野県知事)が、
 「いまこそ日本人の魂……」
 と言えば、管直人民主党代表代行は、
 「小沢(一郎)代表の真骨頂も、本当の独立国にしていく魂を持っていることです」
 と続けた。まるで〈魂〉のオンパレードだ。
 最近は、ほとんど使うことがなかった〈大和魂〉とか〈刀は武士の魂〉とか、いずれも古臭い。うっかり大和魂などと口にすると、国粋主義者にみられる。
 しかし、この夜、〈魂〉が市民権を回復したように感じた。
綿貫が、
 「7人相そろい、〈7人のサムライ〉が、すでに銀座、渋谷で訴え、これから全国を歩く」
 と言うと、参加者からウオーと声があがった。自民党を放遂された衆参の7人と女サムライ1人、経済評論家の紺谷典子副代表だ。
 結党からまだ8カ月、〈魂の政党〉は何をアピールしようとしているのか。綿貫は集いの案内状に、
 〈政府は米国を手本に「競争社会」の実現をめざしているが、これまでわが国に安定と繁栄をもたらしたのは、競争と対極の「共生」「助け合い」の思想だ。
 いかなる社会システムも、固有の歴史や風土、文化に根ざしており、伝統を軽視する風潮は、精神基盤を崩壊させ、教育と倫理の荒廃をも招いている。私どもは誤った「改革」に歯止めをかけるべく立ち上がった〉
 と記した。
 小泉改革への反逆である。〈魂〉を失いつつある現状に、ミニ政党が〈魂〉をこめて待ったをかける、という気負いだ。そこに共感が集まる。日本社会に広がる漠然とした欠落感が、背景にある。亀井は、
 「小泉自民党が改革という名のもとで、日本を破壊した。焼け野原のペンペン草だ。もうあとがない」
 と絶叫した。
 これは言い過ぎか。暴論だ、という人もいる。会場に、綿貫と同期生の森喜朗前首相、島村宜伸元農相らの顔が見えたのは、自民党内にも共感があるからだろう。
 〈魂〉を新キーワードに、改革路線をめぐる大論争を展開してほしい。それを仕掛ける小政党の存在は貴重だ。(敬称略)

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