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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2006.5.19◎週刊朝日
綿貫民輔、平沼赳夫、亀井静香
鼎談「政変の予感」

「小沢一郎と手を組む? いや、まだわからんよ」


衆院千葉7区補選を「小沢民主党」が制し、永田町が揺れ動いている。それまでの単なる「ポスト小泉選び」から、民主党やその他の勢力を巻き込んだ「政界再編」につながる可能性も出てきた中で日々、存在感を増しているのが、自民党を離党した3人の実力者ー綿貫、亀井、平沼の各氏だ。


構成 上田耕司

聞き手 大下英治
おおした・えいじ=1944年生まれ。「週間文春」特派記者を経て作家に。政治、経済等ジャンルを問わず精力的に執筆。著書多数。

--先日の衆院千葉7区補選では、国民新党は民主党候補を応援しました。


亀井 「国民新党が応援しなかったら、間違いなく民主党の候補は負けてたよ」
綿貫 「わずか955票差で、もし、民主党票から500票、自民党に流れていたら、ひっくり返っていたわけですから」

--具体的には、どんな応援をしたんですか。


亀井 「わが党の長谷川憲正参院議員と糸川正晃衆院議員の2人を選挙区入りさせて、票をかき集めさせました。2人は『綿貫党首、亀井代行の名代で来ました』と街頭演説してたんですよ。『大樹』(特定郵便局長OBらでつくる政治団体)のメンバーも、動いてくれたしね」
綿貫 「民主党との選挙協力の先鞭みたいな形ができましたので、来夏の参議院選挙で生かせるようになればと思っています」
亀井 「私はさっき、公明党の最高幹部の人に電話したんだ。『千葉7区では、国民新党と公明党が戦争して、国民新党が勝っただろう』とね」

--それにしても、4月12日の「国民新党・前進の集い」には大勢の人が集まりましたね。民主党の官直人代表代行、新党大地の鈴木宗男衆院議員らもやってきて、反小泉勢力の結集みたいでした。


亀井 「翌日集計したら、8038人もの方が来てくれていました。でも、小沢一郎は来なかったんだよ。自分で変わった、変わったと言っても、口先ダメじゃダメだな」

--ですが、小沢さんからすると、絶対、みなさんと組みたいわけでしょ。


綿貫 「小沢さんというよりも、われわれは独立独歩のひとつの政党ですから。われわれの言うことをきかなきゃ政治は動かないよ、というくらいになりたい」
亀井 「村山自社さ連立政権の時のように、比較少数党が政権を持つ場合だってありうるわけですね」

--小沢さんは、来年夏の参院選では国民新党や社民党と手を組みたいと、しきりに発言していますね。


亀井 「うちにも弱みがあるよ。平沼さんのようなのがこちらに見向きもしてくれないから」
平沼 「きょう、一緒にこうやって並んでるじゃないですか (笑い)」

--平沼さんはどうして国民新党に入らないんですか。


平沼 「この前の衆院選挙で、40人の自民党の県議会議員が一致結束し、党本部からどう言われようと、私を応援してくれたんです。彼らは今も引き続き、頑張ってくれと言ってくれてますから」

--自民党は苦しくなった時以外は復党してくれとは言ってこないんじゃないですか。


平沼 「私は自分から哀願したり、懇願したりして戻ろうなんてさらさら思ってません。かつて、自民党が誕生した時に、吉田茂、佐藤栄作、橋本登美三郎という先輩は保守合同に参加しなかった。しかし、自民党が両院議員総会を開いて、3名の方に入っていただこうと決定して、拍手喝采で迎えられました。私はいろんなところへ講演へ行ったりする時に、枕言葉で『私は誇り高き無所属の平沼だ』と言っています」

--小泉政権がちょうど5年続きましたが、どう評価していますか。


綿貫 「小泉さんは自民党をぶっ壊し、議会制民主主義をぶっ壊し、ガセメール問題で民主党までぶっ壊したんです」
亀井 「私に言わせれば、狂気だ。綿貫代表がおっしゃったなかで、特に議会制民主主義をぶっ壊したというところが一番よくない。昨年の郵政民営化法案の時、衆議院で可決され参議院で否決されたからって、衆議院を解散するとは何事だ」

サムライを切る小泉首相の卑怯


平沼 「あの時は憲法7条を使って解散したんですが、憲法7条解散というのは天皇の国事行為で、内閣の助言と承認により国会を解散する。これはめったに使っちゃいけない手なんですよ。天皇陛下をおわずらわせし、ご署名いただいて、判を押していただくんですから」
綿貫 「小泉政権になって、諮問政治になってしまったんです。有識者会議などで全部決めて、議会は家来だからついて来いと言う。これは絶対許せない。小泉さんは自分の意志の下に議会を置いてしまったんだから」

--郵政民営化の時には、もう1回衆議院に戻して、両院協議会を開くという方法もありましたね。


平沼 「当時、閣議の途中、島村宜伸農林水産大臣は、小泉さんに1時間近く説得をした。あなたの考えについていけないからと言って、彼は辞表を提出した。彼はサムライですよ。そのサムライを、辞表を受理するならともかく、罷免をするというのは本当におかしな話ですよ」

--郵政民営化では、造反して無所属で国会に帰ってきた議院13人のうち、唯一反対を貫いたのは平沼さんだけ。選挙後の特別国会では棄権が1、あとの11人は賛成に転じました。サムライは平沼さんだけでしたね。


平沼 「私は少なくとも4、5名は反対を貫くと思ったのに、見事に賛成に回ってしまった。ちょっとびっくりしましたね」
綿貫 「代議士に武士道の精神がなくなってますね」
亀井 「小泉さんの御殿女中に成り下がっている」

米国に譲る国益何のための改革


--小泉改革とは何だったんでしょうか


亀井 「アメリカの言いなりになっていた改革と言っていいですね。いつも言いなりになっているから、沖縄海兵隊のグアム移転費で約7千億円も出せと言ってくる。海兵隊がいなくなれば助かるんだから引っ越し代だという。冗談じゃない。家賃をこれまで払ってもらってないのに、なにも引っ越し代まで出すことないじゃないか。イラクとやっちゃいかん戦争の時には、アメリカから自衛隊出せと言われれば、はいと出しましたでしょう。これでは中国からもバカにされるのは当たり前です」

--さらには、アメリカは在日米軍の再編にかかわる軽費を3兆円、日本側に負担しろと言ってます。平沼さんは3年間、経産大臣をやってましたが。


平沼 「毎年、アメリカから年次改革要望書がきていて、司法制度や建築基準法もアメリカの要望に基づいて進められていました。私は経済閣僚をしていましたから、アメリカの生の文書を目にしていました。郵政民営化の時には、アメリカの通商代表部(USTR)がアメリカ議会に提出する文書に『18回日本と談合した。その結果、われわれの主張を日本の法案に盛り込むことに成功した』と書いてあるんですよ。そのうち5回はアメリカの民間の保険会社の社長まで入っているんですよ。小泉さんと竹中平蔵さんは口を開けば談合しちゃいかん、建設業界の談合はもってのほかであると言っているのにです」

--小泉改革とは、実はアメリカの改革だったということですね。


平沼 「格好の例が日本長期信用銀行の顛末ですよ。政府は8兆円つぎこんで、アメリカの金融資本に10億円で売ったんですよ、あげくの果ては、新生銀行にして、長銀は消えてなくなり、東証に上場したら2200億円で売れたんです。これは日本に金が落ちないような法人の登記をしているから、全部山分けですよ」

--建築業界については?


平沼 「耐震偽装問題もそうです。阪神淡路大震災の後、建築基準法を50年ぶりに改正したんです。さぞ強化されているだろうと思ったら、あにはからんや強度の部分は必要最小限でいいというものでしかなかった。それまでは、建築確認申請の後の検査を公的な機関が厳重にやっていた。鉄筋とか鉄骨の量も。それを民にできることだからといって、早く、安く、たやすくやってくれるところという、変な経済原則が働いて、震度5強がくれば倒れるマンションやホテルが林立しちゃったわけです。これだって、アメリカの考えを盛り込んだ建築基準法にしたからです」

--日本はアメリカにものを言えなくなった?


平沼 「アメリカは最大の同盟国で大切にしなきゃならない。一番、アメリカは大切に思ってる国だけれども、だからと言って、国家国民の国益を損なうところまで付き合っていいわけがない」
亀井 「小泉改革で、日本民族の力がぐんぐん萎えて、美しい日本人の魂みたいなものがどんどん捨てられてきたんですよ。これまでも、橋本内閣、小渕内閣とズルズル進行していたんです。それを小泉さんがドラスチックに明らかにしてくれたんです。だめな自民党を支持している人のほとんどはアホですよ。でも、自分たちの生活がこれ以上さいなまれては困る、このままではいけないと、小泉さんの悪政のおかげで目覚めた人もいたわけです。これで日本は立ち直れるきっかけを得た。だから、逆説的な意味で小泉さんは功労者なんです」
綿貫 「私なんか長年、自民党を育て、しかも愛してきてね。自民党県連の会長を18年やったんですよ。そして、離党したでしょ。それを離党届は受け取ってなかったと、除名だと後ろから斬られたんですよ。わざわざ赤恥をかかせようなんて、武士道じゃない。こんな卑劣なやり方は絶対に許せない」

--このままですと、来年の参院選は自民党が過半数割れする可能性があります。


平沼 「参議院というのは30議席差しか与野党でないわけでしょ。だから、野党が16議席増えればひっくり返るんです。で、前回、小泉ー安部の最強コンビだって49議席しか取れなかったんだから、今度、ポスト小泉に誰がなろうとも絶対に参議院は過半数を割ると思いますよ。その時にいろいろな動きが出てくると私は思いますよ」

--綿貫党首は、民主党の鳩山由紀夫幹事長から国民新党との野党共闘を要請された時、慎重な発言でした。


綿貫 「今後をよく見ないとね。自民党がどう変わっていくのか、民主党がどう流れていくのか、政治の流れをよく見ながら慎重に考えていくということです」

--自民党の代表が誰になるかで、今後の対応が決まるということですか。


綿貫 「代表というと、その代表を出した母体がどういうふうになっていくかということでしょうね」

亀井 「やっぱり、政党というのは政策と政治手法ですよ。自民党の総理が代わったからと言ったって、国民新党がそれについていくわけにはいかない」

--総裁選レース。麻垣康三の誰がなりそうですか。


亀井 「だってやることが、小泉さんがやったことと一緒なら、人が代わったからいいちゅうもんじゃない」
平沼 「私は自分の持っている思想信条からいけば、4人の中でいいと思っているのは、個人的には、安部(晋三)さんと麻生(太郎)さんですね。あとの方は、小泉政治のくびきから脱せずに、そのままの惰性でやって済ますことになりそうな気がします。大きな変化というのは望めないし、しかも来夏の参議院選挙で政権がおしゃかになっちゃう可能性だってあるわけでね」

--綿貫さんは自民党内で、小泉さんとは一緒に遊んだり飲んだりもし、最も仲が良かった。慶應大でも先輩後輩ですね。


綿貫 「私は公私の別を分けてますから。郵政国会の時にも、あえて私情を交えるような接触はしなかった」

それでもマユツバ小沢一郎の「変化」

平沼 「小泉さんに対して、偉大なるイエスマンだとか言って、お先棒をかついでいる奴がいますけれど、私に言わせれば自民党は「自堕落党」ですよ、こんなのは。ほんとうに。私は今の自民党というのは保守を名乗るのは恥ずかしいと思ってますね。直さなきゃいけないと思っている」
亀井 「小泉チルドレンは別だが、小泉さんを尊敬し、政策面で評価している連中はどれだけいるんですか」
平沼「いない」
亀井 「逆に政策でも批判し、人間的なレベルにおいても、批判している連中が、抵抗しないでよいしょしているんですよ。そんな人たちが小泉がいなくなった時、ちゃんとやれるんかという危惧はありますね。二本差しのサムライだったはずのものが、いつの間にか御殿女中に成り下がって、殿に長く仕えていて、これがどうやって主君の後を継げるの」

--じゃあ、小沢民主党と組んで、新しいいい形の日本はできますか?


亀井 「小沢さんは変わったと言うんだけど、そんなに変わったの? 小沢さんは、郵政解散に触れ、『公約だったので、法案、通らなかったら解散に踏み切るのは当然だ』と言っている。変わったと言えないじゃないか」
平沼 「亀井さんがヘッドで、私が次席くらいで自自連立というのをやったんですよ。その時、要求を8項目出してきて、それでほとんど7項目までかなえた。で、最後の最後でね、勝手に自自連立解消しちゃった。ああいうところを体験しているから、もっと態度を変えたところを本当に見せてくれないと。ほんとうに」
亀井 「私なんか一度、手を握ってやけどしているから。敵の敵は味方だみたいに短絡的な考え方で、足し算引き算の数合わせの材料に小沢さんが使おうとしても、そうはいかない。で、いいですか、党首?」
綿貫 「来年まで1年待たなきゃならん。当面、至近的な問題としては自民党の総裁選。誰がなるのか、どうするのか、非常に大きなヤマだと思うんですよ。その時に諮問会議政治をするのか、学者とか財界のトップだけ入れて、そこでものを決めていくという、小泉流のやり方なのか。それから誰が総理になっても、どういう人材を登用していくか、非常に大きなヤマ場だと思う。小泉さんの継承でまた同じようなことをしていたら、この1年の間に日本はムチャクチャになってしまう」

--こういう小泉政権を支えているのは、公明党ですよね。


亀井 「麻薬を打ち過ぎて、麻薬中毒で自民党は死んだ。以前は、『小選挙区は私、比例は公明』なんてことを自民党の立候補者は言わなかった。自民党本部はそういうことを言わさなかったんですよ。いかに公明党の選挙協力が欲しくても。ところが、この前の総選挙から小泉総理と武部幹事長は、そういうことを認めちゃったんです。あちこちで、自民党の候補者が『比例は公明党』ということを言っている。そうしたらどういうことが起こるかというと、来年の参議院選挙は地方区の自民党候補者の個人演説会場や街頭演説会場に公明党の黄色い旗が林立しますよ。自民党の選挙区の候補者は、『選挙区は私、比例は公明党』と必ず言いますよ。言わないと、そばで創価学会員が聞いていて、『言ってない、じゃあ、民主党を応援する』となる。しょうがないから、比例は公明と言わざるを得ない。そういう状態が全国に起こります。麻薬を打ち過ぎたんです」
平沼 「前々回の選挙では、私は『小選挙区は平沼、比例は自民党にお願いします』と言ってました。公明党の議員が会場に来ていても、そういうふうに演説していた。すると、どういう現象が起こったかというと、白票がものすごく多かったのです。おそらく、比例区の公明党候補者を書きに行くから投票所へ行くけれども、小選挙区のほうに私の名前を書きたくないわけですよ。だから白票の比率がものすごく高かったんだろうと思います。異常というくらい」

自民と一緒なら公明も地獄行き

亀井 「公明党も、自民党と地獄まで一緒に付き合うことはやめたほうがいいですよ。それでは極楽へ行けない (笑い)。ああいう薄汚い自民党とくっついていても地獄に行くだけの話だから、極楽に行きたいなら、これ以上、深い付き合いを自民党としないことです。こんな日本を毒しているような自民党の助太刀ばっかりやっている公明党には未来がない、と忠告したいですね。これが友情ある私の公明党に対する気持ちです」

--国民新党は来年の参院選をどう戦う?


亀井 「比例で最低3名くらい当選させるし、地方区も東京、千葉、大阪を始め、全国に出していきます」

--平沼さんの勉強会「正しい日本を創る会」には自民党員も入っていますよね。


平沼 「衆参議員も入ってます。だいぶ、『偉大なるイエスマン』が神経質になって、行くな行くなと言っているようですがね (笑い)」

--参院選は波乱ぶくみになりそうですね。


亀井 「派閥の親分なんかやっとるよりも、面白いですよ。来年はオセロですよ。世の中をころっとひっくり返すことをやっていたほうがよっぽど楽しいですよ」

※無断転載を禁ず


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