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新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2007.1月号◎月刊テーミス
安倍政権の迷走を睨み
亀井静香が繰り出す「自民分断」の秘策

民主・小沢には「人斬り」を迫り、自民・安倍には「踏み絵」を用意する奇手


 小沢一郎、亀井静香両氏には多くの共通点がある。共に地方出身でドブ板選挙も経験し、政治の何たるかを骨の髄まで知り尽くした生粋の政治家であると同時に、豪腕で鳴らす実力者だ。
 政治に対する勘、判断力、実行力、先見性といったものは田中角栄を彷彿とさせ、まさに今の日本を立て直すために求められている人材ではなかろうか。その両氏が政界再編に向ける決意を語った。


98パーセントが虐げられる「階級社会」


 「いまの自民党は大坂の陣で落城前の大坂城そのものだ。復党してくれといって浪人を城内にどんどん引き入れておいて、今度は『お前たち、土下座しろ』というのだからひどい話。とにかく戻るほうも戻るほうだが、いまの自民党はそこまで追い詰められている。(´07年)7月は間違いなく夏の陣になる。私の復党? あるわけない。あんなバッチイ党に戻るものか。男の恥だ」
 国民新党の亀井静香代表代行がこう吠える。自民党は掘内光雄氏や保利耕輔氏、野田聖子氏ら11人の郵政造反議員の復党を決めた。残る平沼赳夫氏の復党は見送られたものの、復党願を出している以上、「自民党に戻るのは時間の問題」(自民党幹部)だと見られている。そんななか、真に筋を通しているのは亀井氏である。
 自民党ファンの経済人が語る。
 「いまの安倍首相のバックボーンとなっている政策や人脈の半分以上は、亀井の力によるもの。安倍首相は無所属議員をこそこそと自民党へ引っ張るよりも、むしろ綿貫民輔や亀井の国民新党と連立を組むくらいの大胆なことをやったほうがいい。亀井のほうもいつまでも意地を張っていることはない。政治家である以上、政権与党にいることは必須条件になってくる」
 もともと新党をつくるつもりなど毛頭なかった。´05年8月--。亀井氏はかりに郵政民営化関連法案が否定されても「小泉首相に解散ができるはずはない」と公言していた。それがまさかの解散→総選挙へ。「刺客と称して同志を刺し殺すやり方を座視するのは忍びない」--この一点で、綿貫氏と亀井氏は、同志に対して比例区で復活当選の道を残すためにも「新党しかない」と決断する。現在、国民新党は綿貫代表、亀井代表代行、亀井久興幹事長のほか、糸川正晃氏(以上衆院議員4人)、田村秀昭氏、後藤博子氏、亀井郁夫氏、長谷川憲正氏(参院議員4人)の8人だ。
 亀井氏が小泉政治を振り返る。
 「小泉改革とは、財政再建のために米百俵の精神で緊縮財政をやってきたはず。ところが、国の借金は530兆円からいまや800兆円を突破している。これでは逆だ。誰が我慢したのかというと、地方であり、お年寄りであり、サラリーマンだ。『骨太方針』などといって、地方から金を引き上げる、お年寄りの医療費を上げる、正社員をクビにしてパートやアルバイトに切り替える。これでは日本の国力は落ちる一方だ」
 大企業は史上最高の利益を誇り、いざなぎ景気以来の長期成長というが、国民の実感は伴わない。亀井氏は全国を回っているが、「地方はいまや干上がっている」と実感を語る。
 「先日も(景気がいいといわれる)名古屋へ行ったが、トヨタにしても儲っているのはほんの一部で、下請け、孫請けにまで金が落ちていない。だから下請け会社がベトナム労働者のピンハネをしているなんて話が出てくる。わずか2パーセントの大企業がべらぼうに儲けて残り98パーセントが虐げられている『階級社会』は明らかにおかしい。ハゲタカ外資と大銀行と一部の大企業がウハウハ儲けている。景気が回復しているなら、消費が落ちることはあり得ないはずだ。こんな状況をマスコミは『いざなぎ超え』と囃すが、大間違いだ」


安倍--池田大作会談を質せ!


 では、こんな政治を変えるために、亀井氏の秘策はあるのか。最大のターニングポイントはやはり、´07年7月の参院選挙になるだろう。亀井氏はいう。「参院選挙で間違いなく政界再編が起こる。だって2年前の参院選で小泉・安倍のゴールデンコンビで49議席しか取ってない。今度は52議席取らなければ過半数に達しないが、これは不可能。国民新党は現有議席と併せて10議席以上(2ケタ)取る。東京には目玉候補を出す。神奈川、千葉、埼玉、大阪も含め、選挙区で4人、比例区で4?5人を狙う。2ケタの現職勢力になれば、うちはキャスティングボートを握る」
 これだけではない。「安倍チルドレン」といわれ、安倍首相の応援を買って出ていた自民党の山本一太参院議員に対抗して、国民新党から福田晃治氏が立候補。福田氏の群馬県前橋市の事務所開きには亀井氏が駆けつけた。
 地元群馬県の自民党関係者がいう。
 「群馬は元来、中曽根、福田、小渕と3人の総理を輩出したように『上州戦争』で鎬(しのぎ)を削ってきた場所。今回は定数1人区となり、より厳しい戦いになる。山本氏はテレビ番組では有名だが、選挙は必ずしも強くない。また、郵政民営化の先導役として知られ、中曽根親子や小渕陣営とも折り合いが悪い。さらに、亀井氏が推す福田晃治氏は福田康夫元官房長官の遠縁にあたるとされ、山本氏にとってはすべての陣営を敵に回す戦いになる」
 つまり、国民新党の福田氏は安倍政権にとって「逆刺客」の存在なのだが、今後も亀井氏が仕掛ける「自民分断」の選択は増えそうだ。この動きを早くも察知したのが、森喜朗元首相だ。
 森氏は´06年12月10日、福井県敦賀市内の講演でこういった。
 「29ある(改選)1人区のうち20は死守しないと公明党と組んでも負ける。国民新党の亀井静香代表代行が自民党との(連携の)交渉をしてくれればいいが、民主党の小沢一郎代表と交渉する可能性がある」
 すでに亀井氏の変幻自在の政治手法を、自民党中枢は警戒しているのだ。
 一方で、亀井氏と民主党の小沢代表との連携はどうか。亀井氏が語る。
 「自公は『選挙区は自民。比例は公明』でやってくるから、はっきりいって自民党はもう伸びない。まあ民主党がだらしないぶん、差っ引かなければいけないが、間違いなく自公は過半数割れする。だから小沢氏にいった。『泣いて馬謖を斬る』ぐらいのことをやれと。そうでないと勝てない。後ろから鉄砲を撃ってくるような党内の連中をまず斬るべきだ。そこらを民主党も変えなきゃだめ。いまの民主党は戦う姿勢がない。管にも鳩山にもそれはいえる。5人や10人斬ってもたいしたことはない。それより参院選が勝負なのだ」
 とくに沖縄県知事選で民主党が負けたことが大きい。亀井氏は「選対本部を共産党にジャックされた」と語る。また、民主党内にはいまだに公明党・創価学会に対する・遠慮・があるという。亀井氏が続ける。
 「与党は教育基本法案を単独採択したが、小沢氏に『安倍首相とのクエスチョンタイムをやれ』といった。つまり、安倍首相は創価学会の池田大作名誉会長と会ったと新聞が書いたのに、首相は否定したから、それを質せといったのだ。教育基本法は人にウソをついてはいけないと教えているんだから、それを党首討論で堂々とやれといったのに民主党内から反対があった。内部で『いやそんなことはちょっといわないほうがいい』ということでお蔵入り。まったく腰が引けている」


安倍首相に踏み絵を踏ませる


 本会議場で面白いことがあった。中川昭一自民党政調会長が亀井氏のところに来て、核武装発言問題でこうぼやいた。「私を子ども扱いして。ひどいですよ」。亀井はこういい返した。「昭一、オレはお前を子ども扱いしたわけじゃない。『子ども以下だ』といったんだぞッ」
 立場は違っても亀井氏のほうが経験、修羅場を重ねている。これは安倍総理についてもいえることだ。
 「安倍首相がいっている『美しい国』ももともと私がいったことだ。だから首相と私は波長が合う。兄弟みたいに。それが小泉に召し取られちゃった。小泉政治を引き継いだが、これを進めたら日本はおかしくなる。だから晋三君がやることはこの際、『われあやまてり。小泉政治と決別する』と宣言することだ。そうすれば助かる道もある。彼とはずっと長い付き合いだから、本心はそうじゃないことはわかっている。正気に戻らなければダメ。小泉との関係における行きがかりを捨てて、冷静に考えるべきだ」(亀井氏)
 亀井氏は「郵政民営化見直し案」を出して逆に安倍首相に・踏み絵・を踏ませるとまでいう。また、地方に必要な金を出し、大企業減税とは違う「共産党も顔負けの税制改革案」(亀井氏)も出すつもりだ。併せて年金、医療、介護を一括で処理し、現在の年寄りいじめをやめさせる政策を出し、安倍首相がこれをオーケーすれば、「反対する理由はない」という。
 亀井氏は「政治家になって28年目に入ったが、いまほどやりがいのある時はない。小が大を呑むことがある。そういう状況が近づいている」と語る。
 自社さ政権をつくった張本人だからこそ説得力がある。

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