活動実績

新聞・雑誌等での亀井静香の発言

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2007.4.3◎経済界
亀井静香(国民新党代表代行)
「“野党大共闘”で参院選に“オセロゲーム現象”を起こす」

代表代行として国民新党の先頭に立って邁進する亀井静香氏が、精力的な全国遊説を展開している。3野党の共闘で今夏の参院選での与野党逆転を目指している。(聞き手/本誌編集長・佐藤尊徳)


 2005年、郵政民営化に反対し、自由民主党を離党した綿貫民輔元衆議院議長らと国民新党を結成した亀井静香氏は現在、代表代行として綿貫代表を支え、全国遊説を精力的に展開している。同党にはその後、自民党離党者や新党日本離党者も参加し、07年の参議院選挙での勢力拡大を虎視眈々と狙っている。だが所属国会議員は8人という“ミニ新党”だけに、存在感をどう出していくかが今後の課題。亀井氏と言えば、かつては将来の総理大臣候補と目されたこともあった。いわゆる「叩き上げ」で政治生活を築き上げてきただけに、面倒見の良さとカリスマ性のある政治実績には一定の評価がある。
 無所属で当選し自民党へ復党した“転向組”とは対極の立場を取り、自己の信念を貫く亀井氏の熱い思いが形になるためには、今夏の参議院選挙で自民党が過半数割れになることが必要十分条件である。

人間をモノとしか見ない経営の危機


--大企業は今、史上最高益を更新するところが続出しています。しかし、国民は好況を実感できていないようですが。

亀井 いざなぎ景気を超えたといわれていますが、私は今の日本経済は深刻な事態に陥っていると見ています。資本主義社会だから、好不況の波が襲ってくるのは致し方ないが、たまたま米国と中国の好景気に引っ張られた結果の好況です。しかも、ここ数年のリストラで人件費が抑制され、下請け、孫請けによるコスト抑制が功を奏し、莫大な利益を上げている。大企業は、そうやって従業員の“蛸足”を食って儲ける“旨み”を見つけてしまった。反対に、一般サラリーマンの可処分所得は減少し、中小零細企業に至っては、仕事は増えても儲けが減る一方で、国内需要が伸びません。

--著名企業でも偽装請負が多々見受けられます。

亀井 世界の環境は激変しており、その変化に耐えながら日本経済を伸ばすためには、わが国の構造を強靱にしていかなくてはいけないのに、目先の儲けに目がくらみ、逆のことをしています。下請け、孫請けを上手に使って偽装請負をし、いかに儲けるかということが経営者の手腕になってしまった。資源もない日本が世界の国々を追い越して世界第2位の経済大国となったのは、日本民族の優れたDNAだけでなく、そのマンパワーを爆発させて国力をアップさせたからですよ。具体的に言えば、共生ということです。皆と付き合いながら、力を結集させて爆発的なものへと昇華させていった。われわれの祖先は、長い時間をかけてその仕組みを作り上げてきた。ところが最近の日本企業は、人間を安くモノをつくるための道具としてしか見ていません。そのような経営のやり方では、日本民族のエネルギーは爆発しません。米国や中国は、ものすごい格差社会であるが故に、低賃金であっても人が群がり、常に安い労働力が確保できる。そのためにマンパワーが維持できているのです。

--格差拡大も問題です。

亀井 小泉前総理が提唱した、改革という名の下でのグローバル化は、米国型の競争社会でした。市場原理優先で、大都市の大企業のみが優遇され、地方と弱者切り捨ての経済政策が格差を増幅し、社会をいびつなものにした。安倍政権は「美しい日本」を目指すとし、再チャレンジできる社会を標榜していますが、小泉改革を継承するという、到底折り合いが付かない矛盾を推し進めています。このような「下支えしない政策」では、既に日本各地で進んでいる空洞化に歯止めが利かず、将来的に地方財政は破綻します。
 先日、東京の新橋駅前でビラ配りをしましたが、行き交う人たちの表情が能面のようで虚ろなのには背筋が寒くなりました。ビラを手にしながら、にこっとするでもなく、かといって反発するわけでもなく、無機質な表情のまま職場へ急ぐ人の群れ。その裏にあるのは、利益を上げるために正規雇用を減らしてパートやアルバイトに切り替え、残った正社員にも残業代を支払わないといった企業の姿勢が諸悪の根源だと思います。

“オセロゲーム”で一気にパワー爆発へ


--どうすればいいと?

亀井 日本的な競争原理を取り戻すことです。これまでの日本は終身雇用制の下でうまく回ってきた。それには裏表がある。ボストンバッグひとつ持ってアフリカの未開の市場に分け入り、開拓していった企業戦士が日本にはたくさんいました。そうした人たちによってこの国は支えられてきたわけです。そのとき給料をいくらか上げてもらう程度で彼らが奮戦したのはなぜか。企業に対するロイヤリティーであり、仕事に対する誇りがあったからだと思います。
 かつて人材は自社で採用した後は社内で教育し、会社や社会全体で磨いて育てていくものでした。それが日本社会の一体感と安定感につながっていた。仕事は一人ではできないし、上司や部下などサポーターがあってのものです。スカウトした重役や営業部長がいくら仕事ができたとしても、一時的でしかないでしょう。しかも、駄目だったら首を切ってまた別の人を持ってくる、あるいは事業のある部門や会社そのものもM&Aで取り込んでいくような経営のやり方では、いずれ会社の力は弱まっていくと思います。会社というものは何かということを、もう一度考えないといけない。

--中国などの安い労働力に対抗するひとつの方策でもあるのでは。

亀井 中国の10億の民を日本が成長のエネルギーにしようとしている。しかし、それでは“本家”の中国に勝てるはずがない。日本はやはり高賃金による高付加価値で勝負するしかないと思います。日本国内は年収200万円以下の層が150万人いるといわれています。それでも現在の日本は、中国などに比べてはるかに豊かな生活です。人間は、一度享受した生活水準を下げることはできません。

--保守が強い宮崎で、無所属のそのまんま東氏が知事選に勝利しました。政治不信で今の政党には期待できないということの表れではないですか。

亀井 あれは正しく“一揆”だと思います。小泉政治が行われて6年。国民も、今のままではいけないということに気が付き始めた。もう少し日本はまともな国だったのではないかと。日本には良くない部分もある。だが、いいところもたくさんある。良き日本の回復ということをメーンにしていくのです。格差是正は、そもそもわれわれが言い出したことですが、大事なのは、その奥にある国民一人ひとりの魂の回復です。そこがおかしくならないように、日本人としての信念を取り戻すことができるように、経済政策や社会政策を整えていく。
 ここへ来て変わったのは民主党です。以前は小泉前総理以上に市場原理を前面に打ち出していたものです。彼らは、小泉政権は市場原理、市場主義の政策を進めるスピードが遅いと批判していた。われわれは、それをしたらいけないと言い続けてきた。格差是正をして、日本的な生活に目を向けるべきだという国民新党の政策は、今や民主党までもが標榜するものになりました。これはいいことだと思います。小泉劇場の嵐の中で、民主党でさえも、このままではいけないと目を覚ました。そうした状況の中での、宮崎県知事選でした。4月の統一地方選挙を前哨戦に、7月の参議院選挙で自民・公明の過半数割れとなり、われわれが協力しなければ法案成立が不可能な状態に持ち込みます。“オセロゲーム”のような雪崩現象が起きると思います。

小泉政治の弊害が閉塞感の根源に


--とはいえ自民、民主の2大政党の狭間で所属国会議員8人の国民新党は埋没気味です。存在感をどう出しますか。

亀井 民主党はわれわれ国民新党と社民党にも共闘を働き掛けています。自民党は郵政造反組を復党させていますが、今の国民新党には、たとえ土下座されても自民党に戻るつもりはないという者ばかりです。この結束の強さで、まずはわが党の政策をきっちり推し進める。その上で、小泉政治と完全に決別する。具体的には、世界への貢献と平和維持、日本経済の完全復活、そして「美しく力強い日本」復活再生の3つ。地方を大事にし、必要な予算はきちんと付け、郵政民営化の見直しをするといった政策の転換をやることです。

--いずれにせよ7月の参議院選挙で自民、公明を過半数割れに持っていかなければ、それらはできませんね。

亀井 現状を冷静に見たら、ほぼ確実にそうなる。自民党が前回の49議席以上を取るのは奇跡であり、もしそうなら国民は末期状態ということだから、日本はおしまいです。ただし、あまり自民党が負け過ぎても困る(笑)。民主党の状況を見ていると、彼らにもそんなに余裕がないですからね。そんな中で国民新党は、今夏の参院選の14選挙区と4月の参院2補選において民主党と選挙協力することで合意しています。全国で15〜16の公認候補を立てる。これが全員当選というわけにはいかなくても、そこそこはいくという読みをしています。

--今の安倍政権に対して、率直なお気持ちを。

亀井 安倍晋三総理は、父上にお世話になっただけでなく、ご本人の人柄から、いずれはと期待していました。しかしながら、現状を見る限り、がっかりです。今は自分の本心と別のことをやっている。だから迫力がない。自分でも、こんなことをやっていてはいけないと思いつつも、やりたいことを言えないし、やれない。それが今の姿だと思います。もっと分かりやすく言えばいいんです。小泉政治と決別すると。そうすれば、本来の形に戻るのだから、少なくとも元気が出るはずです。

--本来の安倍総理になったら、国民新党も共闘しようということですか。

亀井 そうです。でもそれは7月では遅い。悪いところがあるのなら早く改め、思い切って変えていく。そうすれば、国民は拍手喝さいするでしょう。

--少子高齢化対策についてのお考えを。

亀井 世の中を元気にすることです。結婚適齢期の男性がフリーターやニートでは、結婚しようにも生活の基礎ができない。子供を産み、育てる以前の問題です。社会構造が乱れれば、男女の営みも希薄になります。国民が張りのある生活、未来に希望が持てる社会の実現に全力で取り組んでいきます。

 久しぶりに亀井氏の事務所に入ると、趣味の油絵に筆を入れているところだった。昔話から始まって会話をしていると、亀井氏は以前と全く変わらない。政治家に必要なものは、志と信念だと記者子はいつも言っている。その点で亀井氏は信念を貫いていると言えよう。あとは夏の参議院選挙で国民がどのような判断を下すのか。小政党の浮沈が懸かっている。(佐藤)

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