夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【2】親も経営者も小泉も無責任
2003.01.16

 成人の日が終わった。真新しいスーツや華やかな振り袖を着ている若者たちを見て、私も遠い昔を思いだした。
 昨年のサッカーW杯では、日本の若者たちの応援風景が話題となった。国や民族などに関係なく、W杯を必死に戦っている各国選手たちを、彼らは温かくかつ整然と応援していたのだ。私もニュースで見て感動した。
 また、阪神大震災といった災害や日本沿岸で重油流出事故などが発生すると、全国からボランティアの若者たちが集まってきて、泥まみれ油まみれになりながら地域の人々を助けている。素晴らしいことだと思う。
 こうした立派な若者たちがいる一方、自己中心的で他人の迷惑や痛みをまったく考えない若者たちも増えている。親の背を見て子は育つ。これは世の中の見本となるべき大人たちがダメになっているからだ。
 戦後、米国の占領政策の下、日本人は民族としての誇りや人間としての尊厳を失い、「金がすべて」「物さえあれば」といった金銭・物質至上主義に陥り、そのために他人を押しのける競争に明け暮れてきた。
 そんな親世代の背中を見て育った若者たちが、自己中心的で他人の痛みを考えなくても当然。本当に責められるべきは親たちなのだ。
 こういうとPTAに怒られそうだが、昔は子供が悪いことをすると父親がブン殴って、母親が優しく諭してい子供を育てたもの。
 私など父親だけでなく、学校の先生や近所のオジさんにまで殴られた。小学校までは山を越えて2時間かかったが、毎日殴られるために通っていた。このため、生まれたときにかわいい顔をしていて「静香」と名付けられた私だが、ついに顔が曲がってしまった。
 あの時、父親たちが殴ったのは「立派な大人になってほしい」といった愛情から。憎くて殴るのではなく、心を鬼にして私のために怒ってくれたことは、子供心にもよく分かった。
 ところが、最近は子供の溺愛競争をしている両親がいる。これは愛情ではない。親としての責任も果たしていない。親の権威は失墜した。
 これらは家庭だけの話ではない。企業では経営者、国家では首相がおかしくなっている。
 業績が悪くなると「リストラ」と称して社員の解雇に走る経営者が多いが、こんな愛情のない無責任な経営ならバカでもできる。従業員やその家族、下請け、取引先を必死に守りながら、中長期的に株主に対する責任も持つような気骨のある経営者は少なくなった。
 小泉首相もそうだ。「構造改革」「不良債権処理」といいながら、日本企業をハゲタカファンドに売り渡し、失業者を362万人もあふれさせ、毎日100人以上の自殺者を出して「改革は順調」と平気な顔をしている。どこに国民に対する愛情や責任があるのか。
 ある意味、小泉政権下で発生している悲惨な現象の数々は、戦後、日本が間違った方向に進んでしまった結果だ。本来の日本の良さを見直して、国家の基本から変えていかなければならない。

※無断転載を禁ず

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