夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【4】米国は「世界の安定や平和」の言動を
2003.01.23

ワシントン訪問

 27日までの1週間、私は米国ワシントンを訪問してきた。多くの米政府高官やスタッフらと会談し、戦略国際問題研究所(CSIS)やアメリカン・エンタープライズ研究所といったシンクタンクで講演をしてきた。
 まず、アーミテージ国務副長官とは世界経済の懸念材料となっている日本経済について意見交換した。
 副長官は「日本経済はひどい。早急に不良債権処理を進めるべきだ」と言うので、私は「どうも間違った情報が上がっているようだ。日本は大不況の中で不良債権処理を進めたため、惨憺たる経済状況になった。不良債権処理は経済成長の中でやるべきもの。小泉首相をあまりおだてないでくれ」と伝えてきた。

 日本経済の現状も理解して

 米政府高官や有識者と話して分かったのは、彼らが日本経済の現状を理解していないこと。これは大部分が日本側の責任といえる。彼らはきちんと数字を挙げて説明すると納得してくれる。日本が世界経済の中で責任を果たしていくためには、正しい情報を発信していくべきだと実感した。
 世界中が注目しているイラク問題についても協議してきた。
 結論から言うと、米国が2月下旬から3月上旬にかけてイラク攻撃に踏み切るのは避けられないだろう。
米政府高官は私との会談で、イラク攻撃に踏み切った場合、同盟国である日本に対しては「武力行使への支持表明」「作戦への後方支援」「戦後の復興支援」という三項目の支援を望むことになると伝えてきた。
 これに対し、私は米国が攻撃に踏み切る場合でも、(1)イラクが大量破壊兵器を持つ「危険国家」だという具体的証拠を世界に開示してほしい(2)戦争の影響を受けるアラブ諸国の支持を得てほしい--という二つの条件を付けてきた。

広がる嫌米感情

 日本が行う支援は憲法の範囲内となるが、この二つの条件は国民世論を説得するためにクリアしてほしい最低ラインだろう。米政府高官はこれを了承して、「大統領教書などで明らかにしたい」と答えてくれた。
 最近、世界各国で嫌米感情が急速に広まっているが、これはあまり良くないニュースといえる。私はワシントンで「米国の言動が自国利益のためではなく、世界の安定や平和のためだと理解される努力をしてほしい。環境問題などで米国が先頭に立ち、世界各国に配慮する姿勢を見せるべきだ」と語りかけてきた。
 軍事力だけではテロは決して解決できない。一時的に収まっても、拡散して水面下に潜ってしまう。世界中には価値観の異なるさまざまな民族や宗教が存在している。米国は多民族国家として成功してきた経験を生かして、パレスチナ問題などで異質な民族や宗教が共存できる知恵を出してほしい。
 さまざまな民族や宗教が歴史的背景を乗り越えて共存できる仕組みができるなら、日本は全面的にバックアップしていくべきだと思う。

※無断転載を禁ず

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