夕刊フジ連載

一覧へ戻る

亀井静香のこれから勝負だ!
【6】イラク問題 戦争以外の解決を訴える
2003.02.13

 イラクの大量破壊兵器開発問題について、パウエル米国務長官は先週五日の国連安全保障理事会で、イラクのフセイン政権による国連査察団への妨害工作や、テロ組織アル・カイーダとの関連を示す証拠を公開した。
 これには昨年12月に査察団が入る直前、バグダッド近郊の化学兵器貯蔵施設から貯蔵物が移動されるもようを映した衛星写真や、イラク軍将軍が査察妨害を指示した会話の盗聴テープまで含まれていた。
 状況証拠として、イラクが大量破壊兵器を持とうとする「危険な国家」になりつつあることは理解できたが、あれだけ高度な調査追跡能力があるなら、移動された貯蔵物がどこに運ばれ、どのように隠蔽(いんぺい)されているのかを直接証拠として具体的に示すべきではないのか。
 また、世界中の多くの人々も感じていると思うが、イラクの危険性を除去するために、武力行使以外の選択肢についても十分検討すべきだと思う。
 フセイン大統領がいくら信頼できない独裁者だとしても、現代の戦争で犠牲となるのは軍人以外の一般市民が大半。当然、女性も子供もいる。圧倒的戦力を持つ米国だけに、ギリギリまで平和的解決のための努力をすべきだ。
 国連査察団を常駐させ、監視体制を強化して、イラクが大量破壊兵器を絶対に開発できないよう封じ込めることはできないのか。同国がノーマルな国家に変えるよう、みんなで知恵を出し合えばいいのではないか。

 犠牲は一般市民

与野党を問わず、日本の大多数の国会議員はこれに近い意見だが、どうも小泉政権の動きは鈍い。ブッシュ米大統領と個人的な信頼関係を築き、ホットラインを持っている小泉首相だからこそ、友情あるアドバイスをすべきだろう。それでこそ、真の同盟国として将来評価されるはずだ。
 こうした私の思いは、先月、米ワシントンを訪問したときに、アーミテージ国務副長官にも直接伝えてきた。
 副長官は私の意見に耳を傾けながらも、「一昨年の米中枢同時テロの直前、不確定だがテロを察知する情報があったが、あれだけ多くの犠牲者を出してしまった反省がある。イラクの危険の芽を摘まなければならない」と語った。
 その気持ちは十分理解できるが、米中枢同時テロで犠牲となった人々も、これから米国の攻撃で犠牲となるであろうイラク市民も同じ人間。私は最後の最後まで、戦争以外の解決を訴えていきたい。

※無断転載を禁ず

一覧へ戻る

TOPに戻る

バックナンバー