夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【7】医療制度改革トータルに
2003.02.20

 今年4月から、サラリーマン本人の医療費自己負担が現行の2割から3割に引き上げられることをめぐって、日本医師会や日本歯科医師会、地方議会などから猛烈な反対の声が挙がっている。
 この三割負担は1年前、小泉純一郎首相と自民党の山崎拓幹事長が、内外の反対・慎重論を政治判断で押し切ったもの。

負担増ではダメ

 高齢化社会が急速に進むなか、医療保険の財政見通しが厳しい状況にあることは私も理解しているが、単に医療費負担を増やして診療報酬を引き下げることが「改革」だとは思えない。「金が足りないから国民から絞り取れ」といった発想ならば子供でもできる。こんなものは責任ある政治とはいえない。
 国民の生命と身体を守るのは国家の重大な責務。財政難のなかでも、国民の多種多様なニーズにどうやったら応えられるのか、医療制度改革は具体的かつトータルで考えなければならない。
 例えば、医療保険には大企業サラリーマンの組合管掌健康保険(組合健保)や中小企業サラリーマンの政府管掌健康保険(政管健保)、自営業者の国民健康保険(国保)、公務員の共済組合などがあるが、「今後もバラバラでやっていくのか、それとも一本化するのか?」といった問題がある。
 財政難のために、毎年数兆円もの補助金が全国の地方自治体から投入されている公立病院のあり方も考えるべき。厳しい経営環境下、地域の人々に良質で効率的な医療を提供するにはどうすべきか、検討課題は山ほどある。
 また、サラリーマンにも新人とベテランがいるように、医師にも新人医師とベテラン医師がおり、医療技術の高い医師もいれば低い医師もいる。これらを「同じ診療報酬で扱っていいのか」といった問題もある。
 「開業医と勤務医の待遇の差をどうすべき」かという問題も重要。高収入で余裕がある開業医(特に地方)に比べて、都会の勤務医の収入はかなり低く、三十五、六歳まではアルバイトをして食いつないでいる現実がある。
 繰り返すが、医療制度改革は場当たり的な負担増などで対応するのではなく、トータルで考えなければならない。

 医師会と協議を

野党第一党の民主党は一年前まで中身も確かめずに「小泉改革」に拍手喝采(かっさい)を送っていたが、最近になって「医療費負担増反対」「小泉改革は口先だけだ」などと吹聴している。こんないい加減な政党を相手にすることはない。
 首相はこれまで二度も厚相を務めている。本気で医療制度改革に取り組むならば、医師会などと問題点を協議して知恵を出してほしい。これだけ激しい反対論が出ている以上、独裁者のように強引に押し切るべきではない。

※無断転載を禁ず

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