夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【10】教育立て直しに役人たちは口をはさむな
2003.03.13

 中央教育審議会(中教審)は近く、教育基本法の改正案を遠山敦子文部科学相に答申する。本来、教育基本法は「心の憲法」のような存在であるべきだが、終戦直後のGHQ(連合国軍総司令部)の占領政策の中で、日本人の魂(精神)を骨抜きにする目的で制定されてしまった。
 神戸児童殺傷事件など、少年少女による凶悪事件が続発したことを受け、やっと戦後教育を見直そうという機運が盛り上がり、中教審による改正案の策定作業が続けられてきた。ところが、小ざかしい役人たちが「これでは○○党が反発する」「これでは世論が持たない」などと口出しをしているという。
 特に標的とされているのが「愛国心」と「宗教」だという。
 私のいう愛国心とは、夫婦愛や家族愛、地域愛の延長線上にあるもので、偏狭なナショナリズムとは明確に区別したい。人間は自分一人で生まれて育つわけではなく、それぞれの家族や地域、国などに守られ導かれて、長年受け継いできた伝統や文化の中で自分自身のアイデンティティーを確立していく。
 そうした中で、ごく自然に家族や故郷を愛する心が育っていくように、国を愛する気持ちも芽生えてくるはず。国際社会で生きていくにはアイデンティティーの確立が不可欠のように、自らの家族、故郷、国を愛せない人間には、世界の人々と心を開いて付き合うことはできないのではないか。
 宗教についても誤解がある。当然だが、学校で布教活動をするものでは絶対にない。
 地球上には数多くの民族、宗教が存在して、異なる価値観を持った人々が混在して暮らしている。冷戦構造の終結によって世界大戦の可能性は低くなったとされるが、民族対立や宗教対立は深刻化している。
 子供たちに世界の国々を教えるように、「人間の力を超えた存在に対する信仰(=宗教)がある」ことも教え、日本古来の宗教とともに世界の宗教に関する基礎的知識を伝える。これは日本や日本人に対する自己理解とともに、他の人間や民族、国を理解するためにも重要。国際政治や国家間対立を理解することにもなり、国際協調にもつながっていくはずだ。
 ともかく、戦後教育の荒廃は否定しがたい。日本人の魂を骨抜きにし、子供たちから道徳心や宗教心を奪い、米国の「一人でも正義を貫き、たくましく生きていく」という個人主義を間違ってとらえ、日本に「自分さえ良ければ、他人はどうなってもいい」という利己主義を蔓延(まんえん)させてしまった。
 教育は「国家百年の大計」。未来の日本を背負っていく子供たちの教育を立て直すための改正案を審議しているメンバーに対し、役人たちが「あれはダメ」「これもダメ」と圧力をかけることは許されない。

※無断転載を禁ず

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