夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【12】”ネット集団自殺”に見る心の闇
2003.03.27

 米英軍によるイラク攻撃が続いてる。報道では、精密誘導爆弾やステルス爆撃機の空爆によってイラクの防空・通信施設はほぼ破壊され、米英地上軍によるバグダッド包囲網も縮まりつつある。私としては可能な限り少ない犠牲者で戦争が終結し、世界中にテロが拡散しないことを祈っている。

政治家に責任が

 ところで、イラク攻撃と同じくらい背筋の寒くなる事件が日本各地で相次いでいる。インターネットで志願者を募った若者たちの集団自殺事件である。
 今年2月には埼玉県入間市のアパートで男女3人が練炭による一酸化炭素中毒で自殺した。今月5日には、三重県津市の山中に止めた乗用車で男女3人が練炭を使って自殺。同月16日には山梨県上九一色村で、乗用車で男女4人が練炭を燃やして集団自殺を図って重体となっている。
 確かに、昔から自殺や心中はあった。私は認めないが、自分一人で辛い人生に決着をつけたり、愛する者と一緒に死を選ぶというならまだ分かる。現在も小泉不況などから年間3万人を超える人々が自ら命を絶っている。
 ただ、今回のように「見ず知らずの男女が、死ぬためだけに出合い、そして命を絶つ」ということは、これまでの日本ではなかった。単に「自殺」という行為を共有するために機械的に集まり、ともに死んでいく。
 未来への夢が描けなかっただけでなく、家族や地域とのきずな、友人や知人との人間同士の触れ合いも希薄だったのだろう。何事も思うようにいかない人生で、確かに、自分の意思で決着できる唯一のことかもしれないが、あまりに虚無的であり、壮絶で孤独な魂の漂流、精神の退廃を感じてしまう。
 こういう若者たちを作ってしまった責任は政治家にある。正直言って、私も大きなショックを受けている。

 大和魂取り戻せ

価値観が複雑化、多様化した現在でも、奈良・平安といった昔から受け継いできた、ソメイヨシノが咲きにおうような日本人のおおらかな心は取り戻せないものだろうか。1度や2度の挫折では打ちのめされない、強靭(きょうじん)な精神は育てられないものか?
 人生を輝かせる、明日への希望、わき上がる感動を持ちながら生きていく精神…。
 これらを守り育てていく日本の教育や文化、芸術などの強さや豊かさ、包容力が問われている気がする。
 真剣に考えなければならない。

※無断転載を禁ず

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