夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【14】もう小泉に任せられぬ景気対策
2003.04.10

 昨年10月、私は「小泉首相はレームダッグだ」と宣言したが、先週初め、それが国民の前に現実となって露呈した。首相は大島理森前農水相の後任として意中の議員に就任要請を行ったが、何と4人にことごとく固辞されたのだ。
 これは憲政史上初の異常事態。首相の求心力が低下している証拠といえる。
 長引く株価低迷や相次ぐ企業倒産など、日本経済の危機的状況は日に日に深刻化しており、イラク戦争や北朝鮮の脅威などで安全保障までが大きく揺らいでいる。わが国はタテ、ヨコの座標軸を失って漂流し始めたともいえる。
 こうした惨状に3日午後、自民党最大派閥の橋本派やわが江藤・亀井派、堀内派、高村派の四派の事務総長や幹部が勢ぞろいして、「このままでは日本は大変なことになる」「政治家として沈黙は許されない」との認識を共有。今後も定期的に会議を開き、四派中心に明確な処方箋を出していくことで一致した。
 最近、統一地方選の応援などで地方を回ると、「このヒドイ景気を何とかしてくれ」「もう待てない。明日にも会社が倒産して、社員や家族を路頭に迷わせることになる」「今年に入って地域の自殺者は10人だ」と悲鳴を上げる経営者の方々と多く会う。こうした声はまったく首相には届いていない。
 3月の企業決算を受け、日本経済は5月の連休明けにも厳しい状況を迎える。首相には思い切った政策転換は期待できないため、自民党内で「九月の自民党総裁選まで待つか? 待たぬか?」という議論が沸き上がる。

 出処進退の時だ

経済危機を乗り切るため、江藤・亀井派ではこのたび、ペイオフや時価会計、減損会計の無期限延期などを盛り込んだ、金融・経済に関する政策提言をまとめた。需要喚起や社会資本整備のために、真水で10兆円、事業規模で30〜50兆円の補正予算も求め、中小企業保証制度に30兆円新規枠も設定する。
 これは小泉政権後に断固実行する。
 私は派閥総会で「われわれは評論家やシンクタンクではない。政治家として国民の生命と財産、生活を守る義務がある。このような政策提言をまとめた以上、実行していく義務がある」と激を飛ばした。
 4月1日、首相は記者団に「抵抗勢力と別れて政界再編に取り組もうと思っているんだ」とエープリルフールに引っ掛けて語ったそうだが、日本の惨状を真剣に受け止めていれば、そんな戯言(ざれごと)はとても言えないはずだ。首相の処方箋が限界に達していることは、誰の目から見ても明らかではないか。
 首相が政権運営に自信を失っている証拠ともいえそうだが、ともかく、一国のリーダーとして、自らの出処進退は潔くすべきである。

※無断転載を禁ず

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