夕刊フジ連載

一覧へ戻る

亀井静香のこれから勝負だ!
【20】”銀行国有化”政策に再生願望ゼロ
2003.05.22

まるで社会主義

 大手金融グループ「りそなホールディングス」への2兆円規模の公的資金再注入決定について、竹中平蔵金融・経済財政担当相が「金融改革のプロセス」などと記者団に語っていたのには、正直言って憤りを感じた。
 明らかに、小泉純一郎首相と竹中氏が推し進めてきた経済政策が失敗した結果であり、こういう事態に立ち至った責任をまったく自覚していない。「改革」という名の、日本経済崩壊策では完全に限界だ。下手をすれば、国民の貴重な税金をドブに捨てることになりかねないだろう。
 小泉-竹中路線とは、日本経済を失速させて景気を悪化させながら、税金を使って銀行の自己資本強化を進めるものだが、現在のように産業資金の需要が少ない中では本来の銀行業務は成り立たず、銀行の収益体質は改善されない。
 金融機関の体質脆弱(ぜいじゃく)化は、りそなホールディングスだけの特殊事情ではなく、日本の金融機関すべてが抱えている大問題である。
 このため、19日と20日の東京株式市場は銀行株を中心に売りが先行。日経平均株価は再び8000円を割り込んだ。
 国際通貨基金(IMF)も18日、「日本のデフレは一段と悪化する恐れが高い」と警告し、金融当局に市場への資金供給をさらに増やすとともに、早期にデフレを克服する決意と戦略を示すよう求めた。
 要は、経済全体を活性化させて産業資金の需要を強くしていくしか、金融機関を強化する抜本的方策はない。資本主義国家である日本で銀行をどんどん国有化する社会主義国家のような政策を進めても、再生の展望など見えてこない。

外資に国売るな

 すでに、日本の大手金融グループの多くは外資の傘下に入ってしまった。日本は他国がうらやむ1400兆円もの金融資産を誇り、4800億ドルもの外貨準備高を持っているのに、外資への隷属化という道を取るべきだとは思えない。
 外資の日本参入は私も大歓迎だが、それは日本の主体的枠組みが堅持されている中で行われるべきだ。日本の金融資本を弱体化させて外資に売り飛ばすなど、まさに国を売る行為であり、私は絶対に同意できない。このままでは日本が溶けて無くなってしまう。
 ともかく、抜本的な政策転換が必要だが、基本的な考え方が違っている小泉-竹中路線では不可能。9月には自民党総裁選が行われるが、間違いなく「経済政策」が焦点となる。パフォーマンスゆえか内閣支持率はいまだに高いが、日本丸の乗客も船底に穴が開いて足元が水に浸り出したら目覚めるはず。
 自民党の政権担当能力が問われている。

※無断転載を禁ず

一覧へ戻る

TOPに戻る

バックナンバー