夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【23】北には日本独自の外交姿勢示せ!
2003.06.12

万景峰の措置当然

 北朝鮮の貨客船「万景峰92号」が新潟西港への入港をとりやめた。同船は北朝鮮への不正送金や工作員の移動、ミサイル開発に転用可能な機器類や覚醒(かくせい)剤の密輸に使われていた疑いが強かっただけに、日本としては歓迎すべきことであり、至極当然のことともいえる。
 ただ、今回は北朝鮮の自主的措置だけに、今後は日本の強い国家意思として、北朝鮮との人と物の交流を全面遮断するような措置に出るべきだろう。
 国家主権の侵害といえる許しがたい拉致事件を全面解決し、日本に射程を合わせた百発以上のノドンミサイルを廃棄するなど、北朝鮮が「危険な国家」でないと納得できるまで、日本は毅然とした姿勢を示さなければならない。

経済力は強力なカード

 米国のイラクに対する軍事力行使は有効だったが、朝鮮半島では三十八度線の板門店から数10キロ南に1000万人以上が住むソウル首都圏があるうえ、最前線に約37000人もの在韓米軍が展開するなど、軍事衝突による被害は計り知れない。ただちに軍事力が使える状況ではない。
 このため、不正送金などで北朝鮮経済を裏で支えていた日本の経済力を、北朝鮮に対する強力なカードとして行使すべきである。
 具体的には、万景峰号をはじめ日本各地の港に立ち寄る北朝鮮船舶の入港を拒否し、直接および第三国経由での日本と北朝鮮の人の往来を禁止する措置を取るのだ。「自国防衛のため」という理由で十分だろう。
 当然、米国と北朝鮮、中国が進めてきた三カ国協議に、日本と韓国も加えるよう要求すべきだ。いくら同盟国であっても、自国の安全保障や外交を米国に委ねてしまうのはおかしい。北朝鮮の暴発で最も被害を受ける半面、強力な交渉カードを持っている日韓両国が参加しない交渉など認めるべきではない。
 北朝鮮のような、ならず者国家には「オール・オア・ナッシング」の強い交渉姿勢でなければ対抗できない。わが国の対北外交が、主権国家の外交になっていなかったことを恥じるべきだ。
 最近、小泉純一郎首相は北朝鮮に対して強硬なスタンスを取っているが、昨年九月の日朝首脳会談では、北朝鮮の金正日総書記の「8人死亡、5人生存」という一方的通告を受けて、そのまま日朝平壌宣言にサインして帰ってきた。
 まったく理解に苦しむ対応だった。
 私なら事前交渉の段階で、拉致被害者の現状を公開するよう強く要求し、北朝鮮があのような悲惨な結果しか出さないなら平壌まで行かなかった。「外務省高官が情報を隠した」という指摘もあるが、事実なら、外務省幹部の政治介入を許したことになり、大問題というしかない。
 ともかく、米国の強硬路線と韓国の融和路線の間でフラフラすることなく、日本独自の毅然とした外交姿勢を示すべきだ。

※無断転載を禁ず

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