夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【29】教育改革こそ「待ったなし」
2003.07.24

 今日は教育問題について書きたい。わが国にとって経済問題は緊急の課題だが、日本の未来を託す子供たちを鍛える教育問題はさらに重要だと考えている。
 まず、最近の教育現場では「学力低下」が大問題になっている。
 かつての「詰め込み教育」を改め、理解力を高める教育を行うとして、この20年ほど段階的に「ゆとり教育」が進められてきた。その結果、小学校6年間で718時間もの学習時間が削られた。
 昨年4月から導入された新学習指導要領では、小学生で足し算・引き算は3ケタまで、掛け算・割り算は2ケタまでしか教えないという。現に、大学生の基礎学力の低下が指摘されており、小学6年生レベルの少数の計算問題を、地方国立大学の理系学生の何と4割が不正解だった。
 「ゆとり」と称して、基礎的学力すらおろそかにする教育が行われているのではないか。人間の頭脳は、若いうちに大脳皮質を刺激して鍛えなければダメになる。資源に乏しい日本が明治維新を経て大国への道を歩めたのは教育のおかげ。誤解を恐れずにいえば、私はある程度のスパルタ教育には賛成である。
 ここ数年、欧米やアジア諸国が、日本がかつて実施していた基礎的学力を徹底的に鍛える教育制度を取り入れている。日本の国際競争力を維持するためにも、学力低下を食い止める教育制度の見直しが必要だと考えている。
 加えて「心の教育」も重要だ。
 最近、未成年者が加害者となる事件が多発している。また、危険な場所や人物に自ら接近して被害者となるケースもみられる。4歳男児を惨殺した長崎市の中1男子は特異な事件だが、繁華街で夜遊びする小学生や、小遣い稼ぎで援助交際に走る中高学生は多々いる。実に嘆かわしい限りだ。
 こうした未成年者は親や家庭環境がまともでない場合が多い。子供たちだけを目覚めさせようとしても難しい。

時にはスパルタも

 そこで私は、全寮制の中学・高等学校を公立に採り入れて、ダメな親から切り離して徹底的に教育することを提案している。教育熱心な教師が寝食をともにしながら、勉強だけでなく、スポーツや文化・サークル活動などを通して、子供たちを甘やかさずに厳しく鍛えていくものだ。
 その教師は教員試験にパスしていなくてもいい。人物が立派で教育に情熱があれば、年齢も職歴も関係ない。単に知識をたたき込むだけでなく、自分の人生経験を生かしながら、人間の生き方や社会とのつながりを教えていく。高杉晋作や伊藤博文、山県有朋らを導いた、松下村塾の吉田松陰が理想だろう。
 郵政民営化や道路公団改革には熱心な小泉首相も、なぜか教育改革にはイマイチ関心がない。この限られたスペースでは教育問題はとても書ききれないが、ともかく、私は教育改革こそ「待ったなし」だと考えている。

※無断転載を禁ず

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