夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【31】”金食い虫”増やしただけの介護保険制度
2003.08.07

低所得者を排除

 8月に入り、両親や祖父母の顔を見るために帰省する人も多いと思う。今回は問題が噴出している介護保険制度ついて考えてみたい。
 介護保険は小泉純一郎首相が第二次橋本内閣の厚相時代に成立させたもの。北欧の制度をまねて、子供が親を見るのではなく、社会が親を見るという「介護の社会化」という基本理念で作られた。
 当時は「辛い介護地獄から家族が解放される」と大歓迎され、私が「日本の風土に合わないのでは?」と疑問を呈すると徹底的に批判された。
 その結果、現状はどうなっているかというと、最重度の「要介護5」の認定を受けた人でも、ヘルパーさんが週に2、3回来てくれるだけ。それも身の回りの世話をしてくれる程度で、相変わらず家族が介護を続けている。
 貧富の差もなく全員から徴収するため、小さなアパートに住んでいるお年寄りが支払った掛け金が、隣の大豪邸に住んでいる大金持ちの老人が庭の掃除のために頼んだヘルパーさんの費用にあてられている。
 「使わないと損だ」ということで、本来介護の必要のない人までヘルパーさんを頼んでおり、自治体などの財政を圧迫している。国民負担は増えたが必要なサービスは受けられず、低所得者ほど排除され、切り捨てられることも多い。
 介護企業やヘルパー会社は育成できたが、金食い虫が増えて、家族の疲労が深まることになっている。不況が深刻化して、リストラが本格化するなか、こうした介護保険への不信はますます強まっているのだ。
 介護で最も重要なのは、お年寄りが幸せを感じるかどうか。その基本となるのは、やっぱり「親子の情」や「共助の精神」ではないのか。
 確かに、介護をしている家族は大変だ。その過酷さは、自身の経験からも十分理解しているつもりだ。だからこそ、国や自治体は、家族の辛苦を少しでも軽減するための施設や支援制度を充実させていくべきだろう。

共助の精神で!!

 そして、日本に古くからある「共助の精神」で家族を支える、地域の共同体のあり方を見直さなければならない。親戚や隣近所を含めた、地域の共同体でバックアップしていくことはできないものか。地域の事情を良く知る郵便局員や消防団員、農協職員などにも協力してほしい。
 テクニカルな面では、介護は保険料ではなく税金で処理すべきだと思う。私が政治のリーダーシップを取れば、こうしたことを抜本的に改革していく。
 最近の共同体の崩壊は、介護の問題を深刻にさせているだけでなく、教育崩壊や治安悪化を助長させている面もある。二年間の小泉政治はこれに拍車をかけた。私たちはもう一度、自分たちの家族や地域、社会がこれでいいのか、冷静になって考え直さなければならない。

※無断転載を禁ず

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