夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【32】「旧日本軍が抑圧勢力」とは・・・
2003.08.14

危険な風潮増す

 まもなく58回目の終戦記念日を迎える。  私は毎年、8月15日は靖国神社にお参りしている。日本のために生命をささげられた方々に感謝の気持ちを伝えるとともに、もう戦争は起こさないという「不戦の誓い」をするためで、近隣諸国を刺激しないよう一人で出かけている。
 小学3年生で広島に原爆が落ちたのを目撃して、終戦を迎えた私は本気で「これで日本は滅びる」と思った。エンピツ削り用のナイフを持って、「一緒に死のう」と兄を追い回したことを覚えている。子供心に大変なショックを受けた。
 大人になり、政治家という道を選んで確信していることは、「とにかく戦争はしてはならない。あらゆる手段を講じて戦争を回避すべきであり、政治家の最も重い責任だ」ということである。
 第二次世界大戦で、日本では646万人が亡くなった。世界中では数千万人が死亡したといわれている。この裏には、統計上の数字には決して現れない、幾多の悲劇が隠れている。
 多大な議性を払って、日本人はそのことを骨身に染みるまで分かっていると思ってきたが、小泉純一郎首相を初めとする、近ごろの日本政府の言動を見ていると疑問を感じざるを得ない。
 先のイラク戦争でも、戦争を回避することよりも、「まず、米国の戦争を支持すべき」との声が聞かれた。そして、最近でも「自衛隊の海外派兵=国際貢献」「攻められる前に先制攻撃すべき」といった短絡的な考えが広まりつつある。
 もちろん、日米安保条約はわが国の安全保障上極めて重要だが、条約がきちんと機能する力学の構築が大切。先制攻撃をうんぬんより、軍事衝突を防ぐための外交交渉や、相手に攻めこまれない防衛力の整備に目を向けるべきだろう。
 どうしても、危険な風潮を感じてしまう。

基本姿勢からおかしい首相

 最近、古い新聞を読み返していて驚いたことがある。
 小泉首相は二年前の就任直後に訪米して、ブッシュ大統領と会談したさい、こう語りかけたという。
 「私たちは米国のことを『鬼畜米英』と教えられて育った。敗戦でどんなヒドイことをされるかと思っていたが、米国は極めて優しかった。日本人を旧日本軍から解放した解放軍だと思った」
 首相は「終戦記念日の靖国参拝」を公約していたが、まるで「旧日本軍=抑圧勢力」というような気持ちで、どうして靖国神社に参拝できるのか。
 私はこれまで首相の経済政策を厳しく批判してきたが、こうした基本的な政治姿勢を含めて、「首相を支持するのは間違いだ」と確信した。

※無断転載を禁ず

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