夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【39】イラクへの自衛隊派遣に傾きつつある小泉首相は危険だ
2003.10.02

ブッシュ来日で

 今回はイラクへの自衛隊派遣問題について考えてみたい。
 「大量破壊兵器を除去する」との大義名分のもと、米英軍が国際的合意を得ずに、イラクに対する軍事行動を開始して半年たつが、肝心の大量破壊兵器は発見されていない。
 フセイン政権は打倒したが、イラク全土が事実上の無政府状態に陥っている。米英軍に対する襲撃攻撃は日常的に発生しており、ブッシュ大統領が5月に出した「大規模戦闘終結宣言」以降に死亡した米軍の兵士は、それ以前の戦闘で死亡した138人をはるかに上回っている。
 イラクの主権回復への道筋をつけようと尽力していた、国連のデメロ・イラク担当特別代表が爆弾テロで死亡する悲劇的事件も起きている。
 わが国は先の通常国会でイラク復興支援特別措置法を成立させたが、イラクの厳しい治安情勢下では、法律の対象となる非戦闘地域が存在しないことは世界の常識。また、派遣される自衛隊員には相変わらず個人の正当防衛と緊急避難しか許されておらず、使えない欠陥法律ともいわれている。
 そうした中、ブッシュ大統領が今月17日に訪日する。自衛隊のイラク派遣と、1兆円規模の復興資金の分担を要求してくるといわれている。
 確かに、米国は日本の最重要といえる同盟国ゆえ、何らかの実効的支援をしなければならないが、現時点で取り得る選択肢は極めて限られている。日本は法治国家であり、憲法やイラク復興支援特別措置法の枠組みを超えての、自衛隊派遣はできないからだ。
 ところが、朝日新聞は先日、「日本政府が自衛隊を年内に派遣する方針を固め、米国などとの具体的な調整に入った」と報じた。

復興資金しか

 もし、日本政府が米国への支援を形式的に示すために、イラクの治安現状に目をつぶって自衛隊を派遣するならば、派遣隊員は法律上許された個人の正当防衛と緊急避難を超える事態に部隊として対処しなければならなくなり、惨憺たる状況に立たされる可能性が高い。
 といって、医療チームなど文民による丸裸での支援も、それに携わる人々の生命や身体的危険を考えると不可能に近い。私は、現状ではイラク復興資金をわが国の国力に応じて、国連を通じて負担するしかないだろうと考えている。
 ところが、小泉純一郎首相は新聞報道のように、現状での自衛隊派遣に傾きつつあるという。まさに、「10月10日解散、11月9日総選挙」という国民の審判を仰いでいる最中に、わが国は重大な岐路に立たされることになる。

※無断転載を禁ず

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