夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【41】米国式弱肉強食社会は幸せか?
2003.10.16

等伯の精神を

 総選挙の準備で慌ただしい中、時間を見つけて東京・上野の東京国立博物館に出かけてきた。特別展示されている桃山画壇の巨匠、長谷川等伯(1539-1610)の筆による国宝「松林図屏風」を見るためだ。
 近世水墨画の最高傑作といわれるこの作品は、もやに包まれた静寂な松林を大胆な筆遣いで描いている。きれいに描こうとか、格好よく描こうなどという妙な作意は一切感じられない。ただ、等伯の郷里である能登・七尾の地に立ちすくむ松林を見事なまでに描き切っていた。
 武将や宮家のお抱え絵師が多かった当時、等伯は決して権力におもねることなく、自分が描きたい絵を描き続けた。俗世の利害や損得などと隔絶した、一人の人間の生き様、精神のたくましさや清浄さが伝わってきた。とても感動した。
 400年後の現在、日本列島には名誉欲や地位欲、物欲などに飢えた餓鬼が徘徊している。政界でも官界でも財界でも醜い利害関係ばかりが先行しており、一般社会でも些細な金銭をめぐる凶悪事件が多発している。

答えは投票で

 私自身も日々の政治活動の中で、等伯のような精神を失いつつあった。松林図屏風を見て、自分自身を改めて見つめ直せたような気がする。
 総選挙では、経済や社会保障、外交安保、教育などの具体的政策が戦わされるが、その背景にある、日本人の心の問題こそ真剣に考えなければならない。
 過去最悪に近い企業倒産や失業者、3万人の自殺者といった現実を前にして、「自分だけ良ければ、他人はどうなってもいい」といった風潮でいいのか?希望を失いつつある若者をこのまま放置していいのか?日本人にとって本当にアメリカ式の弱肉強食社会が幸せなのか?
 11月9日の投票では、国民の方々はそういった問題を考えて1票を投じていただきたい。

※無断転載を禁ず

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