夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【43】中曽根ら引退勧告は重大ミス
2003.10.30

冷水あびせた小泉

 第43回総選挙が公示された。私も応援遊説で全国各地を飛び回っている。日本を立て直し、国民に夢と希望を与えるためにも、この短期決戦を「自民党必勝」を掲げて戦い抜く決意だ。
 ところが、小泉純一郎首相を筆頭とする党執行部派は、こうしたわれわれの情熱に冷水をかけるような判断を下した。中曽根康弘、宮沢喜一両元首相に対する引退勧告である。
 特に、中曽根元首相は平成8年の総選挙で、小選挙区から比例区への転出する条件として、当時の橋本龍太郎首相(総裁)と加藤紘一幹事長から「北関東ブロック終身1位」の裁定を得ていた。

定年制なじまず

 国民の一部にある「若ければいい」「高齢者は引っ込め」といった安易なポピュリズムに流され、党執行部が選挙対策として断行したとすれば、これほど浅はかな判断はない。
 そもそも、国会議員には国民の代表として、国政や外交にかかわる経験や知恵、人脈、判断など全人格的なものが要求される。
 いまの政治家の中で、85歳の中曽根元首相に匹敵する人物が果たしているのか。評論家やアナリストの受け売りだけの若手とは天と地ほどの差がある。
 健康面などで問題があれば別だが、私は政治家に杓子定規な定年制適用はなじまないと考えている。
 昨今の日本経済や社会の混迷・荒廃は、わが国が伝統や文化、価値観、倫理観、道徳観を喪失したことに始まっている。

日本の美徳破壊

 米国式の市場原理や競争社会ばかりが強調されたことで、「自分さえ良ければ他人はどうなってもいい」という自己中心的な意識が蔓延し、日本社会が古くから持っていた企業や地域の連帯感や共助の精神、高齢者や先輩たちに敬意を払う意識が失われてしまった。
 最近では、人間にとって最も基本的な「親子の情」「家族の愛」の崩壊すら感じさせる事件も多発している。
 ともかく、中曽根、宮沢両元首相に対する引退勧告は、日本社会が大切にしてきた美徳を破壊して、世の中の混乱を助長するようなもの。国民の審判を受けようというときに、党執行部が重大な判断ミスをしたことを心配している。

※無断転載を禁ず

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