夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【48】自衛隊派遣以外のイラク支援を協議すべき
2003.12.04

外交官殺害に怒り

 イラク北部のティクリート近郊で、同国に長期出張中の奥克彦英国大使館参事官(45)と、在イラク大使館の井ノ上正盛書記官(30)が襲撃され、殺害される残忍極まる事件が発生した。
 日本外交を背負っていた2人の優秀な外交官のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の方々には心からお悔やみを申し上げたい。そして、犯人たちに対する激しい怒りを感じざるを得ない。
 ただ、それとは別にイラクの治安現状については、冷静かつ慎重に判断しなければならない。
 私はこれまで何度も指摘してきたが、イラクの復興支援は、イラク復興支援特別措置法に基づき、
 (1)イラク国民との将来にわたる友好
 (2)同盟国である米国への支援を実効的にできるのか
 (3)自衛隊員が安全に任務を遂行できるか
---という3点を踏まえて判断すべきだと考えている。
 ところが、最近のイラク発の情報や報道を分析すると、イラク国内にはイラク特措法が想定している「非戦闘地域」は存在しないのではないか。とても、円滑に復興支援活動が行えるような状況ではない。
 小泉内閣は今月初めにも自衛隊派遣の基本計画を閣議決定したいようだが、「まず派遣ありき」で物事を進めると、同国の治安現状を無視して、自衛隊員の手足をしばった派遣に追い込まれる危険がある。それで死傷者が出たら一体どうするのか?政治の怠慢を隊員たちに押し付けてはならない。
 「ここで派遣を躊躇したらテロリストの思うツボだ。テロに屈するな」という反論も聞こえてくるが、私には第二次世界大戦中に「弱音を吐くヤツは非国民だ」などといって「一億玉砕」を唱えた、あの狂信的なムードを感じてしまう。
 そもそも、イラク特措法に基づく自衛隊派遣の目的は人道支援や復興支援であり、テロリストとの対決や制圧ではない。わが国は法治国家である。憲法や法律の枠内でしか自衛隊は派遣することはできない。

テロは許し難いが

 テロリストやテロ行為が悪であり、許し難いのは当然。それを大前提としながら、法律にのっとった万全の対策を取らねばならない。ここまでくると、米国と自衛隊派遣以外の支援について協議すべきではないか。
 もし、小泉内閣が「それでも自衛隊を断固派遣する」というなら、法的根拠が希薄になったイラク特措法では無理だ。これまで認めてこなかった集団的自衛権行使に関する政府見解を改め、臨時国会か通常国会で新しい法律を成立させて、正々堂々と自衛隊を派遣すべきだろう。

※無断転載を禁ず

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