夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【49】自衛隊イラク派遣は新法律成立後にすべき
2003.12.11

 自衛隊をイラクに派遣するための基本計画が9日、閣議決定された。小泉純一郎首相は「しかるべき時期に自衛隊を派遣する」と語っている。先週に続き、このことに関する私の意見を書きたい。
 国会でイラク復興支援特別措置法を成立した時点では、イラクでの戦争は終結し、現地の治安が安定した中で、自衛隊と文民(政府職員や技術者、医師、看護士など)が両輪となって復興支援を行うという話だった。
 ところが、イラク北部で発生した日本人外交官殺害事件でも明らかなように、同国内はとても治安が安定しているとはいえない。アーミテージ米国務副長官も「戦争状態に近い」と語っており、防衛庁が派遣した専門調査団の報告書でも、自衛隊派遣予定地である南東部の治安情勢について、「襲撃等の可能性は存在する」と記している。
 米メディアの報道によると、CIAがホワイトハウスに提出した機密報告書には、「イラク国民は米英占領軍に失望感を強めており、一般の住民が占領軍に対するゲリラ攻撃を支援している」という内容を含んでいるという。
 こういう状況下での自衛隊派遣は慎重にも慎重を期さなければならない。
 それでも、首相が「派遣する」と決断するなら、同国は戦争状態に近いのだから、法的根拠が希薄となったイラク特措法では無理だ。臨時国会か通常国会で新しい法律を成立させ、これまで認めてこなかった集団的自衛権行使に関する政府見解も改め、隊員の武器使用基準も変更してから派遣すべきだろう。
 そして、その前に国家の基本方針を明確にすべきだ。
 米国の世界戦略の中で進められているイラク戦争や占領行政を断固支持し、同盟国として積極的に協力していくのか。または、米国との同盟関係は堅持するが、日本の安全保障に直接関係ないところには踏み込まないとするのか。国民に広く問いかけ、大きな議論をすべきではないか。

 カンボジアの時は

 宮沢内閣時代の平成5年5月、カンボジアで日本人文民警察官が殺害された直後、当時郵政相だった小泉首相は閣議後の記者会見でこう語っている。
 「カンボジアは内戦に近い状態だ。(PKO部隊などの撤収は)これからの進展を見て十分考えなくてはならない。派遣された要員は命まで捨ててとは考えていない。(部隊撤収で)国際的非難を浴びたとしても、日本は原点を忘れてはならない。日本は日本ができる範囲でやればいい。背伸びしてはいけない」
 これだけ自衛隊の運用に慎重だった首相が、今回のイラクについては「まず派遣ありき」という姿勢を貫いている。彼の政治哲学はどうなっているのか。

※無断転載を禁ず

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