夕刊フジ連載

一覧へ戻る

亀井静香のこれから勝負だ!
【50】自衛隊イラク派遣は決して焦るな
2003.12.18

フセイン拘束も

 イラクのサダム・フセイン元大統領が米軍に拘束された。元大統領は生まれ故郷のティクリートに近い農場の暗い穴の中に潜伏していたという。医療チェックを受ける姿をテレビで見たが、8ヵ月余りわたる逃亡のためか、髪はぼうぼうでくしゃくしゃ、ヒゲにも白いものが目立ち、疲労の色は隠せなかった。
 これでイラクの治安情勢が一気に沈静化して、イラク国民による、イラク国民のための戦後復興が進んでいくなら極めて幸いなことだ。
 そういう状況になれば、イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊の派遣も、派遣隊員の安全が確保される中で「円滑に復興支援活動が行える」「十分貢献が可能」という判断に傾くかもしれない。
 ただ、軍事専門家の中には「フセイン政権残党によるテロは減っても、国際テロ組織アル・カイーダなどの活動には影響ない」という見方や、「拘束直後の元大統領の映像を見る限り、計画的なテロ攻撃を指揮する指導者の姿ではない。元大統領は見捨てられた独裁者でしかない」と分析する向きもある。
 日本政府も「大きな一歩であるのは間違いないが、(テロ攻撃が)ただちに無くなるというのは楽観的すぎる」(福田康夫官房長官)と冷静に見ている。
 現に、日本の復興支援に冷水を浴びせる事態が先週9日に発生した。

状況分析冷静に

 米軍のC17大型輸送機がバグダッド国際空港から離陸直後、地上からミサイル攻撃を受けてエンジン一基が爆発。搭乗員16人中で1人が軽傷を負い、緊急着陸したというのだ。
 日本は航空自衛隊のC130輸送機4機を派遣し、イラクとクウェート間の物資輸送を担当する予定といい、来週25日にも、空自の先遣隊を米空軍司令部があるカタールと輸送部隊の拠点であるクウェートに派遣するようだが、米軍輸送機の被弾は決して他人事ではない。
 重要なのは、現在続いている米英占領軍や同盟諸国などへのテロ攻撃がフセイン政権残党によるものか、国際テロ組織などによるものかをきちんと見極め、イラク特措法が想定している復興人道支援が円滑に行える状況が確保できるかどうかだ。当然、フセイン元大統領の供述内容も参考にすべきだろう。
 「まず派遣ありき」とか「早く米国に協力しなければ」と焦る必要はない。冷静に状況を分析すべきだ。

※無断転載を禁ず

一覧へ戻る

TOPに戻る

バックナンバー