夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【51】独立国家の意識、希薄な日本
2003.12.25

米とどう折り合いつけるか

 今年最後のコラムとなるので、この一年を振り返ってみたい。
 2003年の最大のニュースといえば、やはりイラク戦争だろう。米国という世界最大の軍事大国が自らの価値基準や判断基準に従い、ブッシュ大統領自身が口を滑らせたように「十字軍的な感覚」で世界の新秩序を作り上げることに踏み出した象徴的な出来事だ。
 米国の世界戦略が、地球上における民族や国家間の相違をさほど考慮せず、一つの価値観で物事を完結していくネオコン的な発想で推し進められたことは、21世紀の世界にとって極めて重要なことといえる。
 小泉純一郎首相は日米の同盟関係を踏まえて、「自衛隊のイラク派遣」を決断したが、今後、米国の世界戦略が大きく転換しない限り、似たような踏み絵はあらゆる問題について突き付けられるだろう。日米関係や日米同盟が重要なのは言うまでもないが、日本人はこうしたことを真剣に考えなければならない。
 これは安全保障や国際政治に限った話ではない。経済分野でも日本が米国に対して、どういうスタンスを維持していくかが問われていく。
 例えば、国益が衝突する世界貿易機関(WTO)協定や自由貿易協定(FTA)などにおいて、米国とどのように折り合いをつけながら、完全に飲み込まれない国家のあり方を模索していくか、冷静かつ幅広い議論が必要だろう。
 私はまず、自分で自分の国を守れる安全保障上の努力をしなければならないと考えている。北朝鮮の弾道ミサイルに対処するためには、防衛庁が計画するミサイル防衛(MD)システムを導入するのは当然のことだ。
 また、近隣諸国などとの友好関係にも心掛けなければならない。友好関係に勝る安全保障はない。米国の圧倒的軍事力の下で、思考停止のまま追従するような選択はすべきでない。
 最近、国民の中に「日本が独立国家」という意識が希薄になっている気がする。強い者に従った方が安全であり、経済的にも幸せなのだという「属国意識」に安住する空気が強く感じられる。
 世界の歴史を振り返って、独立心を失い、属国意識が蔓延した民族や国家が幸福を勝ち得ただろうか?
 日本人は今こそ、未来に向けた誇りある生き方を考え、決断するときに来ている。来年はその道筋が見えてくる重要な年となる。これに合わせて、国内の政治体制にも大きな変化があるかもしれない。

※無断転載を禁ず

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