夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【53】夢も希望もない「平成の大合併」
2004.01.15

政府が丸投げ・・・

 年明け以降、地元・広島の各地域で新年互礼会に出席してきたが、話題の中心は「平成の大合併」ともいわれる市町村合併だった。ある新聞社の調査では、合併特例法の期限切れである来年3月の時点で、現在の約3100ある市町村数が1800程度に再編される見通しだという。
 だが、これらの合併劇の多くからは、「新しい故郷を一緒に作っていこう」といった希望の息吹はあまり感じられない。「合併しなければ地方交付税が減らされる。生きていけない」という恐怖感をベースにして、「仕方ない。肩寄せ合っていこう」というあきらめがヒシヒシと伝わってくるのだ。
 これは一体なぜか?
 市町村合併は、政府が推進する地方分権の受け皿作りの意味が大きい。その大看板は結構だ。ただ、現実に国から地方に権限を移譲するには、その権限を実行するための財源が不可欠なのだが、この部分が極めて不明確なのである。
 確かに、一部税源を国から地方に移譲する話はあるが、具体的にどう分与するかはハッキリしていない。もし機械的に単純分与すると、人と物が集中している都市部に税源が偏在しかねない。地方の行政担当者などは、税財源の基盤が本当に確立できるのか不安でいっぱいなのだ。
 現在、全国に3100ある市町村はそれぞれ地域の状況が違い、財政規模も異なる。市町村の事情に応じた処方箋を書かなければならないが、「平成の大合併」を後押しする政府がそこまで考えているのとは思えない。
 これでは、当面の生活費もないのに結婚を進められているようなもので、地方としても「新しい故郷づくりの青写真」など描けない。「政府は面倒な仕事を地方に丸投げているだけでないか」とうたぐってしまう。地方の行政担当者たちの顔色が悪いのもよく分かる。
 こうした看板優先は、市町村合併だけに限ったことではない。

看板だけの政策

 現在、「改革」と称されるものの中には、「どういう将来像を描いているのか?」「プロセスをどうするのか?」といった部分が欠落したままで、ただ、形式的な改革に突き進んでいるものが多い。
 果たして、これでいいのか?読者の方々には真剣に考えてほしい。

※無断転載を禁ず

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