夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【55】イラク派遣 国会採決、良心に従って行動
2004.01.29

正当性が見えず

 イラク復興支援特別措置法に基づき、自衛隊をイラクに派遣する国会承認案は、政府が27日の衆院本会議で趣旨説明して、審議入りした。
 私は政府説明を真剣に聞いていたが、現段階で国民が「イラクが復興状態に入った」と客観的に理解するとは思えなかった。納得できなかった。
 「まず、派遣ありき」という大前提があり、それに説明を合わせるようなやり方では、自衛隊という専守防衛の集団を派遣する正当性は持ち得ないだろう。
 もし、イラク全土を戦火が覆っている中でも、同盟国である米国との関係を重視して自衛隊を派遣するというならば、政府は自衛官の生命や安全を守り、米国との同盟関係を維持・発展させていくためにも、米英軍と同等の権限と装備などを与えなくてはならない。
 つまり、集団的自衛権に対する政府見解を変える方針を真正面から打ち出して、国会で堂々と議論すべきなのだ。  こんなことは、小泉純一郎首相が腹を決めて決断すればすぐできる。
 法的根拠があいまいな中で、復興支援が円滑にできる状況でもなく、同盟国の軍隊として機能もしないという、どっちつかずの状況を放置したまま自衛隊を派遣してはならない。
 先日、陸上自衛隊の先遣隊がイラク南東部のサマワに到着したが、日の丸をつけた自衛隊の装甲車が、米軍やオランダ軍に護衛されている映像を見て、「国辱的な光景だ」と感じた日本人は多いのではないか。これに何も感じないなら、民族の魂が誇りを失ったと言わざるを得ない。
 日本人は最近、現状肯定派や現状追認派が多くなったようだ。
 頭では「これは問題ではないか」「筋が通っていない」と分かっていても、「仕方ない」「しようがない」などと、長い物には巻かれろにも似た、あきらめの判断をするようなケースがみられる。
 これは国会議員にもいえる悲しい傾向だが、私は国会議員は国家のため、国民のため、世界のために、千万人といえども吾往かんの心境で、何者も恐れず判断すべきだと考えている。
 国会承認は30日の本会議で採決される見通しだが、私は政策集団の会長としてより、国会議員の良心に従って行動したい。

※無断転載を禁ず

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