夕刊フジ連載
「不正支出ダメ」だからこそ・・・
福岡県警の地域課巡査が先週末、隣接する佐賀県鳥栖市の小学校低学年の女児を無理やり乗用車に連れ込み、市内を40分ほど 連れ回した未成年者略取の疑いで逮捕された。警察の信頼を失墜させる犯罪であり、警察OBの私としては残念でならない。
また、北海道警では捜査用報償費の不正支出疑惑が取りざたされている。
中でも、方面本部長や署長も務めた元道警幹部が「報償費などから裏金をつくっていた」と実名で告発したことはマスコミでも 大きく取り上げられ、国民の警察に対する不信感を強めることとなった。
大前提として、法を執行する立場にある警察官が職務や費用の執行に関して、不正を働くことは許されない。
国民の信頼を取り戻し、現場の警察官が誇りを持って仕事ができるよう、事実の解明を進めるべきだろう。
ただ、OBとして誤解を恐れずに言わせてもらえれば、「警察にも交際費は必要だ」といえる。
個人的な飲み食いなどは問題外だが、こういったケースもある。
警察幹部や警察学校の教官になると、年間数え切れないほどの結婚式や葬儀に出席しなければならない。当然、手ぶらで 出られるはずはなく、それぞれ数万円の冠婚葬祭費が必要となる。
また、土日だけでなく正月やお盆も返上して事件捜査に当たり、見事に解決に導いた部下たちを、席を設けて慰労することもある。
これらを幹部たちが自腹で払うとなると、それぞれの家計に相当なダメージとなるが、現在、これを正当に支出できる仕組みはない。苦肉の策として、捜査用報償費の不正支出という“現場の知恵”を働かせていたとすれば・・・。
やはり、法を執行する立場にある警察としては、正々堂々と予算の面で解決していくべき問題ではないだろうか。
民間企業にも、税法上の優遇措置が受けられる交際費があるが、仕事のためという本来の目的ではなく、社内の慰労や融和のために 使用されているケースもあるのではないか。
実態と制度の乖離を無視して、きれい事だけで物事を処理しようとするのは間違いだ。そういうまやかしが横行するならば、本来の問題点を覆い隠したまま、社会を液状化させることになるのではないか。
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