夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【61】テロ脅威に本も例外であり得ぬ
2004.03.18

最悪への備えを

 スペイン・マドリードで十一日朝、複数の通勤列車が同時に爆破され、約二百人もの死者が出るというテロ事件が発生した。犠牲になった方々のご冥福をお祈りするとともに、卑劣な無差別大量殺人には強い憤りを感じざるを得ない。
 犯行グループはまだ特定されていないが、国際テロ組織「アル・カイーダ」系の組織が出した犯行声明には、イラク攻撃でのスペインの対米協力を非難するとともに、日本や英国、イタリアなども標的すると警告していた。
 警察庁時代、テロやゲリラ事件を統括する警備局警備調査官室の責任者として、土田警視庁警務部長宅小包爆弾事件や三菱重工ビル爆破事件、連合赤軍あさま山荘事件、日本赤軍テルアビブ空港乱射事件などを陣頭指揮した経験からいうと、まさに現状は「非常事態」というしかない。
 日本国内には「アラブ諸国はかつて日本に好意を持っていた。大丈夫だろう」などと楽観視する向きもあるが、スペインでの爆破テロがアル・カイーダ系組織であった場合、日本もスペインと同じような対米協力をしている以上、例外的に安全であると考える合理的根拠はない。
  相手が確信犯としてテロ攻撃を仕掛けてくる場合、これを未然に防ぐことは簡単なことではない。最悪の事態を想定して対処するしかない。
 警察や公安調査庁が事前の情報収集に当たるのに加え、世界をまたに掛けるテロリストに対応するために、FBIのように全国で捜査権限を持つ組織をつくることも考えるべき。相手の同意なしに身体検査さえできない現在の警察官職務執行法なども改正すべきだろう。
 民間の交通機関などとも連携すべきだ。
 航空機や列車に警察官が同乗する警乗は即刻始めるべき。航空各社のリストラが進むなか、手荷物検査に手抜かりが出ないかもチェックすべきだろう。列車やバスでは手荷物検査が無理なら、一般市民に不審物発見の協力を求めるべきだ。これはテレビや新聞などを通じて大々的に呼びかければいい。
  爆弾は中学生レベルの理科の知識があれば簡単に作れる。材料の入手も難しくない。テルアビブ空港乱射事件でも分かるように、イスラム教徒でもない日本の若者がアラブの大義を掲げてテロ行為に走ることもある。アル・カイーダ系といっても、実行犯が何者かは分からないのだ。

政府は脳天気だ

 また、テロリストの立場になって考えれば、武装しているイラクの自衛隊や機動隊が警備強化している政府機関や各国大使館より、無防備な一般国民を狙う方が簡単なのは言うまでもない。
 一番の抑止力は国民が緊張感を持つこと。そのためには、もっと政府が真剣に対応すべきだ。現状を見る限り、少々能天気ではないかと心配している。

※無断転載を禁ず

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