夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【63】政府に国家主権守る気概ゼロ
2004.04.01

魚釣島不法上陸

 わが国固有の領土である尖閣諸島・魚釣島(沖縄県)に3月24日、中国人活動家が不法上陸した事件について書きたい。

中国人を送検せず

まず、意表をつく小型船による接近であったにせよ、活動家7人の上陸を許してしまった海上保安庁の責任は免れない。正確な事前情報の入手など、今後は絶対に上陸させない万全の態勢を敷くべきである。
 続いて、出入国管理法違反(不法入国)で彼らを現行犯逮捕しておきながら、送検もせずに強制送還した沖縄県警の対応はまったく理解できない。
 実況見分の結果、中国人活動家が上陸した魚釣島では、日本人開拓者たちの業績が掘り込まれた開拓彰石碑にも、中国領を主張する中国語が刻み込まれていたというではないか。器物破壊の容疑が存在する。
 また、逮捕された7人のうちリーダー格の男は、平成13年8月に東京・九段の靖国神社に侵入し、こま犬に「死ね」と落書きしたとして、器物破壊の現行犯で逮捕され、有罪判決を受けた人物との情報もある。
 こうした容疑についての捜査を放棄したのか?
 彼らは不法就労のために密入国してくる連中ではなく、日本の国家主権を侵そうとする悪質極まりない確信犯である。今後、同様の不法上陸を防ぐためにも、日本の法律に従って毅然とした対処をすべきだ。
 一部メディアは、県警の判断の背景として「日本政府がギリギリの政治判断に踏み切った」などと報じているが、これが事実なら大問題である。
 現在の警察法は、戦前に警察が政治利用された苦い反省から、警察は政治的中立を守り、政治の介入を排除するよう定めている。
 首相以下、閣僚は表向き「法律に従って適切に処置する」と語っていたが、もし、政府の政治判断によって、沖縄県警が中国人活動家を送検せずに強制送還したとすれば、まさに警察法違反が行われたことになる。
 一昨年5月、中国・瀋陽市の日本総領事館に中国の武装警察官が無断で侵入して、北朝鮮亡命者を連行する事件があったが、これも国家主権の著しい侵害だといえる。
 このとき、日本の駐中国公使は「ウィーン条約に違反する」と中国外務省に抗議したようだが、侵入を阻止できなかった日本の外交官を処分したり、侵入した中国の武装警察官の処分を求めたとは聞いていない。
 一連の対応には国家主権を守る意識や気概はとても感じられない。他国から「弱腰」「事なかれ主義」とバカにされても仕方ない。北朝鮮による日本人拉致も同じ国家主権にかかわる事件だが、こんな姿勢で本当に全面解決できるのか。
 私は憂う。日本人の魂が萎えてきている、と。

※無断転載を禁ず

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