夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【64】政府も弱腰外交を反省せよ
2004.04.08

 自民党の山崎拓前副総裁と平沢勝栄衆院議員(前総務政務官)が中国・大連で北朝鮮政府高官と拉致問題について協議したことが永田町内外で批判の対象となっている。
 小泉純一郎首相は「(平沢氏の上司にあたる)麻生太郎総務相も自民党も知らなかったということだから問題がある」といい、福田康夫官房長官も「(日朝交渉は)政府が中心にやらなければならないのは当然。間違ったメッセージを与えると時間がかかり、問題が複雑化する」と不信感を露にした。
 「二間外交は良くない」ということは常識であり、「政府間交渉に一本化すべきだ」というのも当然の話だ。私も これに異論はない。
 ただ、わが国固有の領土である尖閣諸島・魚釣島への中国人活動家の不法上陸を簡単に許したうえ、沖縄県警が彼らを出入国管理法違反(不法入国)で現行犯逮捕しながら、送検もせずに強制送還してしまった政府に、果たして批判する資格があるのか。
 同じように、日本固有の領土である竹島をデザインした切手を韓国と北朝鮮が発行しているのに、外交ルートを通じての抗議だけで具体的な対抗措置はなし。民間人が日本郵政公社に竹島の写真付き切手の発行を申し入れたところ、「外交上の問題を起こす可能性がある」と却下されたという。
 こうした弱腰外交を続けながら、「政府にすべて任せろ」と言えるのか。
 イラクへの自衛隊派遣でもそうだ。
 事実上の国軍である自衛隊が、米国やオランダ軍に護衛されている屈辱的現状をなぜ放置するのか。集団的自衛権に対する政府見解を変えることもなく、法的根拠があいまいなままで自衛隊員を派遣している政府が、どういう顔をして「ケシカラン」と言えるのか。
 これらに共通しているのは、自国の領土領海を断固として守り抜き、国民の生命や財産を守っていこうとする政府の意識や気概の欠如である。
 拉致事件は国家主権の著しい侵害である。拉致被害者家族8人の帰国で一件落着できる話ではない。政府は100人以上とみられる行方不明者の消息について、北朝鮮に対して納得できる説明を要求しなければならない。
 北朝鮮が「拉致事件は個人の犯罪。犯罪者はすべて処刑した」というなら、政府は裁判資料を含めて、すべてを明らかにするよう求めるべき。日本に帰国した拉致被害者5人から、早急に被害者調書を取るべきではないか。
 決して、山崎、平沢両氏を弁護するつもりはないが、政府が毅然とした姿勢を取り、本気で問題解決に取り組まないから、こういう事態が起きるのだ。

※無断転載を禁ず

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