夕刊フジ連載
イラクで日本人3人が「サラヤ・アル・ムジャヒディン」と名乗る武装勢力に拘束された事件は、この原稿を書いている13日夜の時点でも解決していない。私は一刻も早く、3人が無事解放されることを心から希望するとともに、心労が絶えないご家族の方々にはお見舞いを申し上げたい。
ただ、犯人グループによる「自衛隊の撤退」という要求は絶対に受け入れられず、これを断固拒否した政府の対応は高く評価したい。
1977年(昭和52年)、ダッカで日本赤軍による日航機ハイジャック事件が発生したとき、当時の福田赳夫首相は「人命は地球より重い」といって超法規的措置でテロリストが要求した拘留中の赤軍メンバーの釈放に同意した。
この結果、日本は世界中から「テロリストの恐喝に屈した国」と笑われ、国家としての信用を失った。卑劣なテロリストの要求を受け入れる選択肢はないのだ。これは、ご家族の方々にも理解していただきたい。
そのうえで、政府には人質救出のために万全の策を要望したい。
情報収集や人質救出などで「米国頼み」といった姿勢が目立つが、私はイラクに派遣されている自衛隊の特殊部隊などに救出作戦を指示すべきだと思う。
政府には国民の生命と財産を守る義務があり、目の前で同胞の生命が危険にさらされているのである。
無政府状態であるイラクで、自衛隊が犯罪者に拘束されている日本人の救出作戦を行っても「憲法違反」になるとは考えられない。そうした努力はすべきではないか。
これとは別に、イラクの治安状況については冷静に判断すべきだ。
中部の都市・ファルージャでは5日以降だけで600人以上の死者が出ており、現在は停戦中というが、米駐留軍と武装組織が一触即発の緊張状態が続いている。その影響がイラク全土に広がりつつあるという。
南部サマワに派遣されている自衛隊が本当に安全なのか? 安全に人道復興支援活動ができてイラク国民に貢献できるのか?
テロリストたちの要求とは切り離して、現状がイラク復興支援特別措置法に合致するのか判断したい。
宗教百年戦争に?
同時に、日本国内でもテロ攻撃に備えた最大級の警戒態勢を敷くべきだ。今回の人質事件は終わりの始まりではないか。日本は米国と一緒になって「宗教100年戦争」というパンドラの箱を開けてしまった気がする。
もう、「日本はアラブ諸国に好かれている」などと楽観視はできない。
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