夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【66】我が国も対テロリストの組織作るべきだ
2004.04.22

 イラクで武装勢力に拘束されていた日本人5人が先週末、無事に解放され、本当に良かったと思う。救出に尽力した政府関係者や関係諸国、イスラム教関係者の方々に感謝したい。
 ただ、この件と、宗教100年戦争に変貌しつつあるイラクの情勢は切り離して考えるべきだ。3人が救出された15日、私は小泉純一郎首相に電話でこう諌言した。
 「客観的にイラクに大量破壊兵器が存在しなかったことは明らかだ。こうなった以上、世界平和のためにも『民族自決の原則』に立ち返って、イラクのことはイラク人に任せるべきではないか」
 「首相はブッシュ米大統領を一貫して支えてきた。信頼関係もある。米国の中東政策、イラク政策を転換するよう協議すべきだ。このままでは、世界の『終わりの始まり』になってしまう」
 私の話を「うんうん」と聞いていた首相は、最後に「アドバイスありがとう」と言っていた。
 米国と歩調を合わせている日本は、スペイン・マドリードでの列車爆破事件のような、卑劣な無差別テロに見舞われる可能性が十分ある。
 やっとテロへの警戒態勢も絞られてきたが、警察庁警備局時代、テロやゲリラ事件の統括責任者を務めた私としては、まだまだ甘いと感じる部分もある。
 地域の自治会やマンション、アパート経営者、爆弾製造のための材料を取り扱う業者の通報態勢も足りない気がするし、交通機関内での乗客への呼びかけも少ない。確信犯のテロリストを警察だけで封じ込めるなど不可能。国民全員を巻き込んだ警戒態勢を取るべきだ。
 世界をまたにかけて活動するテロリストに対応するために、わが国でも米国のFBIのように全国で捜査権限を持つ組織をつくることを考えるべき。
 相手の同意なしに身体検査さえできない現在の警察官職務執行法なども改正すべきだろう。これらは今国会でやる気になれば1週間でできる。
 国民の生命と財産を守るために、早急に万全の策を取らねばならない。
 さて、イラクで救出された5人について、国民の間から「多くの人々に迷惑をかけて。そもそもイラクに行くべきでなかった」といった批判が噴出しているが、私はこれに一言言いたい。
 確かに、彼らの計画には甘さがあっただろうし、結果として多くの人々に迷惑をかけた。
 ただ、彼らは「イラクの子供たちを助けたい」「戦争の悲惨な実態を伝えよう」と思い、危険な場所に命懸けで乗り込んでいった面もある。
 自らは安全地帯にいて、「自分が幸せであればよい」と、相手を徹底的に批判する。
 最近増えているそんな日本人を見ていると、私はとても彼らを全否定する気にはなれない。

※無断転載を禁ず

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