夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【72】少年犯罪の凶悪化は社会の歪み反映
2004.06.10

米の影響なのか

 長崎県佐世保市の小6女児同級生殺害事件には驚いた。
 だが、大人の社会で「やられたら、やり返せ」「自分が良ければ、他人はどうなってもいい」といった風潮が蔓延(まんえん)している以上、そうした社会に丸裸で投げ込まれている子供たちが、同様の事件を起こす可能性は十分あると思った。
 現在の子供たちは、知能形成や人格形成、情緒教育を段階的に系統立てて行っていく前に、テレビや雑誌などの各種メディア、インターネットなどを通じて、人間社会の醜い愛憎などに直接触れてしまっている。
 かつては童話や民話、唱歌などを通じて、幼児のころから夫婦や家庭の深い愛情や絆、友情の大切さや友達同士の思いやり、人間以外の生きとし生けるものへの共感などを教えたものだが、いまでは量的にも質的にも希薄になっている。
 昔はケンカして殴り合っても相手を殺すまではいかず、終わったら握手して仲直りしたものだが、弱肉強食の米国型社会の影響なのか、「他人を思いやり、いたわり合う」という日本人の矜持が失われ、子供の間でも凄惨な復讐劇が見られるようになってきた。
 大人社会の歪み、家庭教育や学校教育の欠陥などが集約されて、悲しむべき少年犯罪として現れているのは間違いなさそうだ。

吉田松陰が理想

  私は以前、このコラムで「心の教育」について、ある提案をした。
 子供たちを目覚めさせるため、全寮制の中学・高等学校を公立に採り入れて、徹底的に教育するというもの。教育熱心な教師が寝食をともにしながら、勉強だけでなく、スポーツや文化・サークル活動などを通じて、子供たちを甘やかさずに厳しく鍛えていくのだ。
 その学校の教師は人物が立派で教育に情熱があれば、教員試験にパスしていなくてもいい。年齢も職歴も関係ない。単に知識をたたき込むだけでなく、人生経験を生かしながら、人間の生き方や社会とのつながりを教えていく。高杉晋作や伊藤博文らを導いた松下村塾の吉田松陰が理想だと。
 あくまで提案だが、検討の余地はあるのではないか。ともかく、少年犯罪の凶悪化は大人の社会が反映したもの。日本人の精神の歪み、心の崩壊は尋常ではない。大人はもっと深刻に自分たちの社会について見つめ直すべきだろう。

全寮制などで人間の生き方を教えないと

※無断転載を禁ず

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