夕刊フジ連載

一覧へ戻る

亀井静香のこれから勝負だ!
【75】「自民は弱肉強食党」と判断されたら
2004.07.01

参院選を前に気になる調査

 7月11日投開票の参院選は、国民の方々が小泉純一郎内閣の3年間の実績について審判を下すわけだが、ここに来て報道機関の世論調査で、内閣支持率を不支持率が上回る事態となっている。
 選対関係者などによると、年金問題に関して、首相が国会審議で「人生いろいろ、会社もいろいろ…」と答弁したことなどが、厳しい経済状況に置かれている国民を刺激した面があるのではないか、ということだ。
 新聞でも報道されたが、年収100万円以下の所得層は400万人にまで膨らんでいる。47都道府県のすべてで労働者の所得は下がった。日本も所得格差が激しい米国型の社会になりつつある。
 小泉内閣の掲げた「経済構造改革」という名の下で、大企業は激しいリストラを断行し、下請けや孫請けの中小零細企業を利益がほとんど出ない安価で使い、従業員を簡単に解雇できる雰囲気を作り上げた。某大企業などは黒字転換した後も、さらに数千人単位のリストラを進めている。
 こうなると中小零細企業などに勤める人々の所得は下降線をたどる一方で、大企業とその周辺にいるほんの一部の人々だけがメリットを享受する、いわゆる上下分離の「階層社会」ができあがりつつあるのだ。
 小泉内閣は国と地方の税財政改革として「三位一体改革」も掲げているが、これも結局、国から地方への税源移譲が進められないまま、国庫補助負担金の廃止・縮減、地方交付税制度の見直しなどが先行されており、地方の所得低下につながっている。
 これまでの日本は「他人を思いやり、いたわり合う」という矜持(きょうじ)の下で、できるだけ所得格差を減らして、どんな家庭に生まれても努力次第で認められるよう、努力する人々を切り捨てないような社会を築き上げてきた。
 ところが、最近出現しつつある階層社会には「自分さえ良ければ、他人はどうなってもいい」「他人の不幸など関係ない」といった、極めて自分本位の風潮が広がっているように思える。
 こうした中で切り捨てられた人々にとっては、首相の「人生いろいろ、会社もいろいろ…」という発言は、日本社会や自身の人生にまったく希望を持つことのできない、救いすら奪い取るような言葉だったのではないか。
 もし、「自民党は弱肉強食を推進する党だ」と判断されれば、今回の参院選は厳しい審判を受けなければならないだろう。投開票日まで残された時間は少ないが、有権者の方々の動向が気にかかって仕方ない。

※無断転載を禁ず

一覧へ戻る

TOPに戻る

バックナンバー