夕刊フジ連載
北ミサイル試射か
先月末、「北朝鮮が弾道ミサイルを発射する準備を進めているのではないか?」との情報が駆け巡り、首相官邸が一時、緊迫した空気に包まれた。
偵察衛星や電波情報などで、北朝鮮のミサイル基地周辺で車両やミサイル技術者らが集結するなどの動きが活発化しているのが確認されたというのだ。日本全土をほぼ射程圏内とする弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ)の試射か、燃焼実験の可能性が指摘された。
現時点で試射や燃焼実験は確認されていないが、防衛庁は海上自衛隊のイージス艦と護衛艦を日本海に派遣。航空自衛隊も北朝鮮の電子・通信情報を収集するため、早期警戒管制機(AWACS)などを日本海上空に出動させた。
小泉純一郎首相と金正日総書記が2年前に合意した「日朝平壌宣言」には、ミサイル発射の中止継続が明記されているが、北朝鮮がこれを無視して発射に踏み切ろうとした場合、わが国にはこれを防ぐための現実的な手立てはない。
以前にもこのコラムに書いたが、北朝鮮の不条理な恫喝(どうかつ)に屈しないためにも、北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とせるミサイル防衛(MD)システムを、全国規模で早急に配置しなければならない。
ただ、政府は今年度予算で「首都圏防衛のため」として1400億円程度しか計上していない。首都圏以外の国民はどうでもいいのか。
自国の領土と国民の生命と財産を守ることは国家の基本的責務。そのための万全な防衛体制を取らないから、「経済制裁」という強力なカードを持っていても、北朝鮮に足元を見透かされて、弱腰に近い交渉をせざるを得なくなっている。
防衛庁によると、ミサイル防衛システムは7000億円あれば全国規模で配置できるというのだから、北朝鮮の脅威を現実的に防ぐためにも、補正予算などで早急に対応すべきだ。
3原則の緩和を
最近、首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」が提出した報告書をきっかけに、武器輸出三原則の緩和に関する議論がよく聞かれる。
私もわが国周辺の脅威を真正面から見据え、自国の領土と国民を守るためのミサイル防衛システムを共同開発していくためにも、少なくとも同盟国である米国との間では三原則を緩和すべきだと考えている。
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