夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【89】義務教育制度の崩壊を許すな
2004.10.14

国家の責務だ!!

 昨12日、臨時国会が召集された。野党側は日本歯科医師連盟(日歯連)による1億円献金隠し事件の真相解明など「政治とカネ」の問題を徹底追及する構えで、政治資金規制法の改正も視野に入れているという。
 私は以前にも指摘したが、あの事件は法律が悪いというより、政治資金の処理を適正に行わなかったことが問題であり、この機会に政治資金の額に枠をはめようとする議論は筋違いだと思う。
 法律に基づき、政治資金の処理を適正に行わなかった関係者を厳正に処罰すればいい。東京地検特捜部が全容解明を進めている段階であり、国会が証人喚問など司法のまね事をしても仕方ない。
 それより、国会が早急に取り組むべき課題は山積している。
 まず、米調査団が今月初め、イラク戦争の大義だった大量破壊兵器が存在しなかったという最終報告書を米連邦議会に提出したことは極めて重大な問題だ。
 小泉純一郎首相はイラク戦争をいち早く支持し、同国の人道復興支援のために自衛隊を派遣した最高責任者である。改めて国民に対して「戦争の大義」について明確に説明する義務がある。
 加えて、連日テロ事件が発生するなど、治安悪化がいっこうに収まらない同国の現状が、自衛隊派遣の根拠であるイラク復興支援特別措置法に合致するのか否かについても見直すべきだろう。
 経済問題も重要だ。
 「景気は回復傾向にある」というが、大企業のリストラは加速する一方で、日本経済を支えてきた中小零細企業は壊滅状態。国民所得は減少し続けており、こうした経済のツケが犯罪の激増や自殺者の増加につながっている。
 果たして、日本経済があるべき方向に進んでいるのかどうか、経済構造そのものについても、国会できっちりした議論をしなければならない。
 このほか、三位一体改革の名の下で、小泉内閣が進めようとしている義務教育負担金の廃止についても論議すべき。
 大都会だけでなく山村や離島に至るまで、子供たちは同一レベルに近い教育を受ける権利があり、国にはそれを受けさせる義務がある。
 国や地方の財政を健全化していくことと、国民の基本的権利を踏みにじっていくのは、まったく別次元の問題。「教育は国家百年の大計」というが、国家の責務である義務教育制度を崩壊させることなど許してはならない。
 いずれも、国家の根幹にかかわる大きな問題。与野党とも国会をパフォーマンスの場にせず、冷静かつ真剣に議論しようではないか。

※無断転載を禁ず

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