夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【92】サマワの自衛隊は安全か今こそ冷静判断を
2004.11.11

米中が制圧作戦

 ブッシュ米大統領が再選を果たした。
 これは米国民が自らの意思で判断したことだが、これまでと同じような世界政策が加速して推し進められるなら、同盟国である日本にとっても、また世界中の人々にとっても大変な状況が生まれてくる可能性がある。
 つまり、世界各国を導いていくという発想は自由だが、それを突出した軍事力を背景にして強引に押し広げることは厳に慎んでほしい。日本としてはこうしたことがないよう真摯(しんし)にアドバイスし、同盟国が間違った方向に行かないようブレーキをかけなければならない。
 こうした中、イラク暫定政府は7日、北部のクルド自治区を除くイラク全土に60日間の非常事態宣言を出した。中部ファルージャでの米軍による大規模制圧作戦を控え、武装勢力によるテロを阻止する狙いのようだが、この中には自衛隊が派遣されている南部サマワも含まれている。
 12月14日の派遣期限を目前にして、本当に現地がイラク復興支援特措法に基づいた任務を安全に遂行しうる状況にあるのか否か、諸般の事情を冷静に分析すべきであろう。
 私は昨9日午前、加藤紘一、古賀誠両元幹事長とともに首相官邸を訪れ、小泉純一郎首相にそのことを申し入れしてきた。  考えてみれば、戦闘地域にも従軍記者がいるのは世界的常識なのに、自衛隊が派遣されている「非戦闘地域」のサマワには、外務省の強い退去勧告を受けて報道各社の記者が1人もいない異常状況が続いている。
 自衛隊のいる場所だけは「非戦闘地域」で「安全」というのか。そんなバカな話はない。こうした素朴な疑問から目を背けてはならない。

特措法に沿うか

 そもそも、自衛隊は外敵から日本国民の生命・財産を守るために存在しているのであり、外国(イラク)で外国の軍隊(オランダ軍)に守られて土木作業をするために存在しているわけではない。
 世論調査では国民の60%前後が派遣延長に反対しているが、依然として、日の丸をつけた自衛隊のイラク派遣を、何か日本選手がオリンピックに参加して活躍しているかのように錯覚している人々もいる。
 また、自衛隊関係者の中にも、これまで日陰にいた自衛隊が表舞台に上がってきた高揚感に浮かれている者もいるように感じる。
 繰り返すが、サマワの現状が本当にイラク特措法に合致するのか否か、冷静かつ総合的に判断すべき時に来ている。

※無断転載を禁ず

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