夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【93】小泉の乱暴政治が招いた”ゆゆしき事態”
2004.11.18

財務省も悪のり

 先週初め、財務省の諮問機関である「財政制度等審議会」が10年後の財政状況に絡み、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指すには、「消費税21%」または「歳出規模を3分の2までカット」が必要という、衝撃的な試算を公表した。
 消費税が21%まで跳ね上がると、国民所得に占める税金や社会保険料、財政赤字の割合である「潜在的国民負担率」は50%を超える。収入の半分以上を負担させられるような国では、国民の労働意欲が高まるわけがない。
 私から言わせれば、これは財務省の「悪のり」としかいいようがない。
 こういう話しは、将来どのような財政状況が予想され、それを賄うには現在の税制のどこに不備があるかを明確に示すことが第一。
 そのうえで景気回復を成し遂げ、日本経済のパイを広げる最大限の努力をしてから、国民に痛みを求める税負担について検討していくべきだろう。
 同省は、お手ごろ価格からサラリーマンが晩酌などで楽しみにしていた「第3のビール」と呼ばれるビール風酒類についても、来年度の税制改正で税率アップを検討する方針だという。
 経済全体のために新しい商品を伸ばし育てる余裕もなく、取れるところから税金を取るような乱暴な姿勢はいただけない。
 「三位一体の改革」にしても、地方ごとに異なる財政状況を洗い直したり、中央と地方のトータルの財政負担をどうするかといった議論もなく、単に「国の財政事情が厳しいから、地方手の補助金をカットしよう」という発想に陥っているのではないか。
 これは、小泉純一郎首相自身が乱暴な政治をしていることが大きい。
 10日の党首討論で、首相はイラク復興特別措置法の非戦闘地域の定義について聞かれ、「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域だ」と発言していたが、政府はイラク南部サマワを非戦闘地域と判断したから自衛隊を派遣したのであって、まさに本末転倒というしかない。
 そして、これだけ論理を無視した首相の乱暴な発言を、世界一の発行部数を誇る某大新聞は見出しにもとらず、ベタ記事でしか扱わなかった。報道機関としての社会的使命を忘れているのではないか。
 政治のトップが論理にもならないことを堂々と行い、それに報道機関が目をつぶっているから、行政は国民生活を危うくするような観測気球をどんどん上げてくる。すべて軌を一にしている。本当にゆゆしき事態というしかない。

※無断転載を禁ず

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